表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移勇者と愛しき人と  作者: 炊飯器と電気ポット
27/42

守るとは

純佳はある意味現代人だから、勇の危険性を良く知っている。

元勇者である純佳・轟の下す決断とは。

勇を家族を"守る"こととは?

----純佳さんは王からの書状を静かに畳み、長く息を吐いた。


「……勇さん」

「うん」

「私はね、もう一度“勇者”に戻る覚悟はある。でも――」


純佳さんは寝室の方へ視線を向けた。そこでは勇次郎と純が、侍女メーデルに見守られながら安らかに眠っている。


「この子たちを置いて、何も考えずに戦場へ行くことはできない」

「それでいいよ」


僕は即答した。


「純佳さんはもう一人じゃない。領主で、母親で、僕の妻だ。勇者より先に、その全部でいてほしい」

純佳さんは少し驚いた顔をしてから、フフっと微笑んだ。


「……変わったよね、勇さん」

「そうかな?」

「前はね、“守る”って言葉に必死だった。でも今は“選ぶ”って顔をしてる」


その言葉に、僕自身も気づかされた。 


半年前の僕なら、命令が下った時点で剣を取っていただろう。


でも今は違う。守りたいものが、具体的な重さを持ってここにある。


「ねえ勇さん」

「なに?」

「今回はね、私が“行かない”という選択もできる」

「……王命でも?」

「ええ。元勇者である私には拒否権があるわ。代わりに、情報と支援を出す責任が生じるけど」

「それって……」

「戦場には行かず、戦争を動かす側に立つ、ということ」


純佳さんの目は、母の優しさと勇者の鋭さを同時に宿していた。


「勇さん、あなたはどうしたい?」

問い返されるとは思っていなかった。

「僕は――」


頭に浮かんだのは、夕暮れの食卓と、二人で試作した失敗だらけのラーメン。

夜泣きで眠れなかった日々と、それでも笑ってくれた純佳さんの顔。


「戦場に行かないで、戦場を終わらせる方法を考えたい」


純佳さんは、ゆっくりと頷いた。


「じゃあ決まりね。私は王に返書を書くわ。“勇者復帰は拒否する。代わりに、四カ国の勇者たちの調整役を引き受ける”って」

「そんなことできるの?」

「できるわ。だって――」


純佳さんは小さく笑った。


「この世界で、勇者を“やめたまま生き残ってる存在”は、私だけだから」



----数日後、王都から再び早馬が走った。



返書を読んだ国王は激怒した――と伝え聞いたが、同時に動揺もしたらしい。

四カ国の勇者召喚は、確かに異常事態だった。

だが、勇者が多すぎる時ほど、世界は混乱する。

そしてその混乱を、一度経験している者がいる。

元勇者、現領主、二児の母――純佳・轟。


----やがて、各国から使者が訪れるようになった。 


「あなたが元勇者だと?」


「勇者が家庭を持つなど前代未聞だ」


「世界の危機に、私情を挟むつもりか」


そんな言葉を、純佳さんはすべて静かに受け止め、ただ一言で返した。


「だからこそ、私が適任なのです」


僕はその背中を、少し離れた場所から見ていた。

剣を振るうよりもずっと過酷な戦いが、今、始まっている。


----夜。


「勇さん」

「うん?」

「怖い?」

「……正直、少しだけ」

「私もよ」


純佳さんは僕の手を握った。


「でもね、今回は逃げない。戦う場所を選んだだけ」

「一緒に?」

「ええ。一緒に」


----こうして僕たちは、剣を抜かない勇者として、

戦場に立たない戦争へと足を踏み入れた。



そしてまだ、この時は知らなかった。


四カ国同時召喚の“本当の意味”と、

その裏で静かに目覚めつつある、


――“勇者殺し”と呼ばれる存在のことを。

勇者殺しが気になります。

そして四人の勇者。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ