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転移勇者と愛しき人と  作者: 炊飯器と電気ポット
21/42

王国の存亡をかけた戦い

これは勇の戦いではない!

ジルの戦いだ!

俺は首都ランヴェールの高い外壁を見つめていた。

ジェルビー将軍と俺とで、部隊の中に奴隷文を刻まれた兵士がどれほどいるか、それぞれの信頼できる直属の部隊に調べさせた。

直属の部隊の兵士に奴隷文が刻まれていないことに安堵するのも束の間、次々と奴隷文を刻まれた兵士が発見されたのだ。

ジェルビー将軍はランヴェール王国の八将軍にも事態の深刻さを通達し、各将軍の元で奴隷文探しが行われた。

結果的に、全軍で一万人以上の兵士に奴隷文が刻まれていることが判明した。

各部隊の一部を魔王軍の周辺に待機させ、総勢八十五万の兵力で首都ランヴェールを取り囲んでいる。

「まさか、こんな景色をみる羽目になるとはなあ」

設置された櫓の上から見る首都ランヴェールの地は、遥か果てまで兵で埋め尽くされてる。

俺は重要な軍事会議が開かれるために、一際大きなテントに向かった。

そこにはメルベス将軍、バーキナル将軍、ゼルテイ将軍、グルゼスタ将軍、ジェルビー将軍、ドントナス将軍、ガイナス将軍、ブルース将軍の全八将軍が勢揃いしていた。

「全員よく集まってくれた! 俺は今は剣聖じゃねえ、第一王子としてここにいる。今回の件でわかったことだけどよお、知らねえ間にこの国は、腐臭の漂う国になっちまったようだ」

「ジル坊、このような人数にジャスパー神官長一人で奴隷文が刻めるものなのでしょうか?」

最古参の老将軍であるメルベス将軍が言うこともわかる。

「メルベスのじいちゃん、どういう手段を取ったかはわからねえが、ジャスパーの野郎が刻んだことには間違いねえだろうよ」

「ジル王子よ、私の配下に居た有能な部下たちも、暗殺された可能性がございます」

ドントナスは苦渋の表情を浮かべてる。まあ、そうなるだろうなあ。

「全員聞いてくれ。俺はこの国の国民も含めた全員を調べてえくらいなんだ。まずは手始めに、どうしても調べなくちゃならねえのが一人いる……」

「決して首都ランヴェールを火の海にしてはなりませんな」

ブルースが小さな声でささやいてる。

「もう一度全員聞いてくれ。メルベスのじいちゃんとジェルビーは俺と正門から入る。ガイナス、ブルース、ドントナスは他の門を固めてくれ。残りは王族が使う避難通路から城内に潜入してくれ。以上だ」

「守備隊が暴発しなければ良いが」

バーキナルが言う。

城内にはズール准将率いる守備隊がいやがるが、間違えても向こうから口火を切ることはねえな。

「なあ、俺たちは奴隷文探しで一か月の時間を費やしたんだぜ。その結果がこれだ! ちまちま考えてても、らちが明かねえだろ?」

-----首都ランヴェール城門前

「おい、聞こえるか? 橋を降ろせ」

「ジル王子! 国王からは、決して入れるなという通達が来ております!」

城壁の上から兵士が叫んでやがる。

「おい! 兄ちゃんよ、これだけの軍と一戦交える覚悟はあるのか?」

あの野郎、どこへ行きやがった。

ん? 誰か来るな?

「ジル王子、私は国を憂う者であります」

「ズール! そう言うなら橋を降ろせ」

「大至急降ろします!」

俺たちは降ろされた橋を渡って首都に足を踏み入れた。メルベスのじいちゃんとジェルビーの精鋭八千が、整然と行進してついてくる。

流石は精鋭部隊だな。

「誰もいねえな」

街中は閑古鳥が鳴いてるじゃねえか。

まったく抵抗しないってことは、ズールは白か?

-----ランヴェール王宮前

「てめえら! 王宮のすべてを制圧しろ!」

さて……おやじとジャスパーの野郎は逃げ出してるのか?

「ジル王子! 城内の制圧完了しました! 国王は謁見の間でお待ちです!」

-----謁見の間

「よお、おやじ。元気にしてたかい?」

「ジルよ! これはどういうつもりなのだ!」

「どういうつもりかは後で説明するからよ、ジャスパーの野郎を出せ!」

「ジル王子! ジャスパー神官長を捕縛しました!」

ん? いつもの神官の服じゃねえな?

「どこで捕縛した?」

「地下の回廊で発見しました!」

「おい! ジャスパー! 王族が使う回廊になんで、てめえが歩いてるんだ!?」

「―――――」

「そこの兵士二人、おやじの両腕をつかめ」

「は!」

俺は玉座に座るおやじの上着を引き千切った!

おやじの胸には……。

あった、奴隷文だ。

「おい! ジャスパー! これはどういうことだ!」

「―――――」

「シカトこいてんじゃねえぞ!」

俺はジャスパーの腹に蹴りを一発食らわせてやった。

「ぐおおおおおお」

「しゃべれんじゃねえかよ」

「うおえええええ」

吐きやがった。

「おい! そこの兵士! あいつらを連れてこい!」

「は!」

さて……。

お嬢ちゃん達で試させてもらうか?

「ジャスパーの前に四人を並べろ」

「は!」

「おい、ジャスパー。こいつらの奴隷文を解除しろ」

「―――――」

「だからシカトこいてんじゃねえって言ってんだろうが!!」

俺はジャスパーの右足首を、アダマンタイト製の剣で切った。

「うわああああ! 私の! 私の足があああ」

「もう一本いっとく?」

「ジル王子! わかりました! わかりました! すぐに解除します!」

「おい、誰かこいつの足を縛って血を止めろ」

「一人ずつ順番にやりますから、暴力だけはやめてください!」

ジャスパーの野郎は、リン、アンナ、キャシー、ベルの順に呪文を唱えてやがる。

「ちょっと見せろ」

俺は四人の服を広げ、胸元を確認した。

「どうだい? 嬢ちゃんたち? 具合は悪くねえか?」

「ジルさま! 大丈夫です! ありがとうございます!」

「よし! ジャスパー神官長さんよ、おやじにも頼むわ」

「ジル王子! 歩いて玉座まで行けません!!」

俺はアダマンタイト製の剣を振り抜いた。

「ぎゃああああああああ!」

ジャスパーの左足首が宙を舞ってやがる。

「おい! 誰か縛って玉座まで運べ!」

「は!」

ジャスパーは、おやじの胸に手をかざして呪文を唱えている。このクソ野郎が!?

「おやじ? 気分はどうだ?」

「ジルよ……。わしは十年も前に、ジャスパーからこの紋章を刻まれたのだ。もう疲れた」

「おやじ、あとのことは上手くやるからよ。今すぐ退位して休んだらどうだい?」

「ジルよ……。迷惑をかけるな……。すまぬ……」

俺は兵士四人に、親父を居室に運ぶように命じた。

「おっと、おやじ! これはもらっておくぜ!」

俺はおやじの頭から王冠を取り、頭に載せて玉座に座った。

「全員聞け! この王冠は譲られたものではない! 俺が自ら進み出て、手に取った王冠である!」

メルベス将軍とジェルビー将軍が床に膝をつき、頭を下げた。そこに見える全員が、同じように頭を下げていた。

----クッソ! 残務処理多すぎねえか??

いよいよジル国王の誕生です。 

おやじさんには静養が必要ですね…。

南無。

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