軍事会議
魔王軍の攻撃により各戦線は危うい状況が続いていた。
この軍事会議は勇にとってのターニングポイントになるかも知れない。
王宮の大会議室では緊急軍事会議が開かれようとしていた。
円卓にはメルベス将軍、バーキナル将軍、ゼルテイ将軍、グルゼスタ将軍、ジェルビー将軍はじめ、ジルとバッシュの顔もあった。
そこへエドワード・ギルフィス・ランヴェール国王も臨席しての緊急軍事会議である。
発議は勇者である勇の教官長であるバッシュから上げられた。
「さて、ジルたちよ勇者殿の様子はどうなのだ?」
「…、流石勇者召喚の儀式にて召喚されただけあって、武の才は常人の域を越えているなあ」
ジルは簡潔に答えた。
「あの弓の才には驚くばかりです」
バッシュはうつむいて答えた。
「環境の激しい変化に少し疲れているところが見受けられますが」
「たとえ勇者といえ人の子。癒しが必要であろう。わしがメイドたちに夜伽をするように命じよう」
「王よ勇殿の心の様相はさておき、すでに実戦へと投入しても充分に戦果を上げられると思います」
「そうかジルよ、バッシュも良く働いてくれた」
「王よ戦線は非常に困難を極めております。グレイルは前線に復帰しましたが、ジルもバッシュも前線に戻して頂きたく存じます」
メルベス将軍の発言に他の将軍もうなづいている。
「そうであるな、初陣は親しんでいるジルとバッシュも共に戦うのが良いだろう。はて、どこの戦線に送るのが良いものか」
「魔王城への道があるドナテスト平原が初陣には相応しいかと存じます」
バーキナル将軍が言う。
「確かに」
ゼルテイ将軍も納得した様子だ。
グルゼスタ将軍は少し落ち着かないように見える。
「王よ戦は単騎の戦力がいくら強力でも勝てるほどたやすいものではありませぬ、一度部隊の中に勇者殿を入れ調練を施したほうが良いのではありませんか?」
「グルゼスタ将軍よそなたの意見ももっともだが、ジルやバッシュを含め八将軍のうちの五将軍をこの席に呼ぶだけでも戦線の維持は厳しいものであろう」
「俺とバッシュが勇と共にドナテスト平原にいくぜ、あそこはジェルビー将軍が任されている場所だったよな?」
「ジェルビー将軍、勇者殿の出陣は何日後が良いであろうか?」
「即座にと申し上げたいところですが戦支度が整い次第ドナテスト平原に向かって頂ければと」
ジェルビー将軍は王命により軍事会議に招集されたが、苛立ちを隠せない様子だった。
「そういやあ言われて気が付いたのですが、このひと月の間、勇殿に休日を与えてなかったな…。いやうっかりしてたぜ」
ジルは頭をかきながら困り顔をしている。
「良い!急ぎメイド長を呼び夜伽を命じる。二日休養を与え陣容を整えて、勇者殿は三日後に出陣とする!」
「はは!」
「今日の会議は以上でよいか?」
「御意!」
そう言うとエドワード・ギルフィス・ランヴェール国王は退室した。
ジルは席に残った全員に話をする。
「勇には今のところ隙や弱点はない、グルゼスタ将軍の言うように集団戦の経験値がまったくないことだけだが、正直なところ勇は集団戦には向いてないだろう、いや周りがついて行けねえはずだ」
「そんなことがあるのか?」
グルゼスタ将軍は疑問符を投げかける。
「ジェルビー将軍のおったまげた顔が目に浮かびますよ、あー。盾持ちが勇の周りにはしばらく必要かも知れないでしょう」
ジルとバッシュは戦場で勇が無双するであることを容易に想像していた。
将軍たちは勇者の事をまったく信用していなかったが、それも時間の問題であろう。
その頃、勇は部屋で夕食を食べていた。
そろそろジルが処刑場へ連れて行くために部屋にやってくる時間であった。
王城の地下深くの死刑囚の収容されている牢屋。
「おい!お前聞いたか?」
「何のことだ?」
「最近気持ちよくスパッとやってくれるらしいぞ」
「ほんとかよ?」
「噂が間違いなければ俺たちもスパッと行けるぜ」
その頃、処刑場ではギーコギーコという不気味な音とうめき声が響いていた。
そう、ランヴェール王国の死刑はノコギリによる斬首刑だったのであった。
いよいよ轟勇の初陣です!
しかし…。
処刑の仕方が実に残酷でしたね。
恐ろしや。




