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転移勇者と愛しき人と  作者: 炊飯器と電気ポット
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事故物件

皆様ご覧いただきありがとうございます。

5年ぶりくらいに小説家になろうを開いたらログインに手こずり心が折れそうになりました。

以前の作品の手直しをしながら今作品の執筆をする予定なので不定期になるでしょうが完結になるまで頑張ろうと思います。

東京の花小金井から金沢の大学へ進学するため、轟 とどろき・いさむ十八歳は金沢を訪れ、不動産屋で物件を探していた。


大学近くの物件も魅力的ではあったが、キャンパスは山間部にあり、金沢の街からは少し遠いのが難点だった。


一方、街中の物件は総じて家賃が高い。


「すみません、街中でもう少し安い物件はありませんか? 築年数にはこだわらないので」


勇は不動産屋の受付の女性に問いかけた。


「お客様、あんまりおすすめできないのですが……一つだけ激安物件はあることにはあるんです」

「何か問題があるんですか?」

「実は……そちらに入居された方が、必ず突然いなくなってしまうんです」

「そんなことがあるんですか?」

「どういうわけか、あるんですよね」

「どの辺にあるんですか?」


勇は不動産屋の女性から地図を見せてもらった。

犀川沿いで街中にもとても近く、アルバイトをするにも便利そうな場所だった。


「間取りを見せてもらえますか?」

「少々お待ちください」


不動産屋の女性はノートパソコンに何かを入力し、その画面を勇に見せた。


「こちらの犀川ハイツは3LDKでして、この部屋だけは駐車場込みで家賃が二万円になります。共益費なども必要ありません」

「内覧させていただくことはできますか?」

「もちろん大丈夫ですよ!」


勇は不動産屋の女性の車に乗り、犀川ハイツへと向かった。

地下駐車場に車を停めると、二人はエレベーターで四階へ上がる。

エレベーターホールを抜けると、広々とした金沢の街並みが目に飛び込み、開放感にあふれていた。


「すごい、景色の良いところですね!」

「そうなんですけど、十年くらい前から、この部屋に入居された方たちが突然いなくなるんですよねー」


女性が部屋の鍵を開ける。


玄関はそこそこの広さで、入って左手にダイニングキッチンがある。その奥にはユニットバスが備えられていた。

ダイニングキッチンの隣に八畳の部屋、玄関から右手には六畳の部屋が二つ並んでいる。

ベランダに出てみると、想像以上に広く、勇は驚いた。


「お姉さん、すみません。ここ、築年数はどれくらいですか?」

「ちょうど五十年ほどになりますね」

「その当時にしては、すごい物件ですね!」

「そうなんですが、そういうこともあって、入居者は減るばかりなんです」

「この部屋に決めたら、入居費用はどれくらいになりますか?」

「そうですね。根深い事故物件なので、即入居可で敷金・礼金なし。前家賃二万円と火災保険が一万六千円で、合計三万六千円になります」

「駐車場込みですか?」

「はい、そうなります」


勇は大学入学前の部屋探しで東京から来ていたため、感覚はまだ東京のままだった。


――こんなの、タダ同然やん。


勇の家庭は経済的に豊かとは言えず、給付型奨学金とアルバイトで大学生活を送るつもりだった。


「僕、ここに決めたいと思います。いつから入居できますか?」

「即入居可能なので、店舗に戻って火災保険の手続きをしていただければ、来週には入居できますよ」


勇は新居になるこの部屋での生活を思い浮かべながら、必要な物を考えた。


「あの、近所にリサイクルショップはありますか?」

「近くに『デブ猫』というリサイクルショップがありますね。生活に必要なものはだいたい揃いますよ。寝具などはイトリがありますし」

「わかりました! 契約します!」

「ありがとうございます」



そのとき、その部屋の天井に幾何学模様がうっすらと浮かび上がっていたことを、二人とも知る由もなかった。

轟勇が入居した部屋に現れた「幾何学模様」とはなにか?

勇の運命が変わろうとしていた。

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