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遡る時と現在と

ラストです。


 時計の針は12時を指す。

「さて、成人したわ。それに準備はできたわ。何処に行こうかしら遠い隣国でも良さそうね」



 夜中に屋敷を抜け出すフローリア。門を出た所で声を掛けられる。

「フローリア……こんな時間に何処に行くのだ?」

「……先生」



「こんな事だろうと思って見張って良かったよ」

「私は自由になるのよ。隣国を目指そうかとね」

「……君の容姿なら、直ぐに人攫いにでもあうのだろうな」

「そう?」


「ねぇ、提案なんだが私と一緒に私の領地に行かないかい?」

「先生の?」

「そこで、市井の暮らしに慣れてから好きな所に行けばいい」


 しばし考えるフローリア。先生の所なら安心だわね。

「……そうね。それなら先生よろしくお願いします」



 フローリアは先生ことカイル王弟殿下の馬車に乗るのであった。しかし、この時のフローリアは先生の正体が王弟だとは気付いてなかった。学園に通い、図書室で勉強をする時に話しかけてくる、優しい先生としか認識がなかった。

 しかし、王弟は昔、フローリアが3歳の時に祖父母に連れられくる彼女の可愛らしさに心奪われた7歳の男の子であった。そして、そんな可愛い思い出の彼女が婚約者に蔑ろにされていると知り、気になり学園に教師として働く事にしたのだ。しかし、実際に見たフローリアは昔の思い出と同じく可愛らしい顔をしているが、その表情は暗かった。少しずつ交流を深めては色々と家での事を聞き出したのだ。母親が亡くなり、直ぐに義母と妹ができた事、祖父母に相談したかったが何処に住んでいるのかわからずにいた事を知った。

 そして、何よりフローリアは成人を迎えたら家を出る事を考えていたようだった。本当は卒業まで耐える予定だったが、婚約解消の際に後妻として、かなり年上の男との縁談が待っていると知り、直ぐに家を出る決意をしたのだった。


 図書室で過ごす静か何時間と時折可愛いらしく笑うフローリアに惹かれていた王弟は婚約解消がチャンスと捉えていた。1つ誤算があったとすれば誕生日を迎えた瞬間に家を出るとは思わなかったのだった。横になり、明日お祝いの言葉を伝えようと横になる王弟は、ふと思うのだった。


 「フローリア……まさか日付けが変わり直ぐに家を出ないだろうな」


 一度、気になりだした王弟は直ぐに馬車を用意し、フローリアの家へと向かう。そして、偶然出てきたフローリアを捕まえたのだった。

 「一緒に領地に行こう。そこで市井の暮らしを体験し好きな場所へと行くがいいと」







 3年後、王都では王弟の結婚の話題で歓喜に満ちていた。そして、本日は王弟と妻となった女性がお披露目を兼ねてのパレードが行われる。



「パパ、早く行こう。お姫様が行っちゃうよ」

「大丈夫だよ。メロディ」

「ママも早く」

「こらこらママのお腹には赤ちゃんがいるから急がすのはダメだよ」

「アンディ、大丈夫よ」

「メアリー大丈夫ではない。転んだらどうするんだ」


「パパ、ママ来たよ」


「あぁ、どんな人だろうね」

「そうね、あの難攻不落の王弟でしたか?」


「そうだね。来たよ」

「パパ抱っこして見えない。あっ……とっても、きれいなお姫様」


「あれ、先生じゃない?」

「あぁ、先生はね。王弟殿下だったんだよ」

「ねぇ、隣にいるのって……お、お姉様?」

「そうだね……フローリアだね」

「うっ、うっ……お姉様……幸せそうね」

「そうだね」


(フローリア、メアリーローズは頑張ったんだよ。苦手な刺繍も母に教えてもらいながら今では楽しそうに刺している。母親としても頑張っているよ)


「あっ、お姫様さまがこっちを見たよ」


フローリアは笑顔でこちらを見た。そして……夫であるカイル王弟から抱き寄せたのは1歳を過ぎた男の子だった。そして僕達にお披露目するかのように子供の手を取り手を振るのだった。フローリアと男の子の頭にキスを落とすのは王弟殿下であった。



「お姫さま、きれいね。ママ?ママ……だいじょうぶ?」

「えぇ、とても綺麗なお姫様と可愛い子供ね」

 涙ぐむメアリーローズ。

(お姉様、ごめんなさい。ごめんなさい)


 3人の微笑ましい姿に沿道にいた人達の歓声は大きくなる。そして、ゆっくりと馬車は王城に向かうのだった。



 王城に向かうの馬車でフローリアはカイルに言う。



「カイル。あの時、私を連れて行ってくれてありがとう。カイルは私の『真実の愛』の相手なのね。ふふっ、婚約解消された日に妹に言われて羨ましかったのよ」


「私もだよ。ずっと大切にする。君もこの子も、これから産まれてくる子供達もね」

 

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