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アンディと両親


「あの。父上、母上……少し話があります」


 リビングで寛ぐ両親に話しかけるアンディ。


「どうしたの、浮かない顔ね」

「メアリーローズの母と会った事はありますか?」

「ここ数年は時々家族皆で参加してるからその時に挨拶する程度よ。フローリアちゃんはいつも欠席だったけど」


「あの……フローリアとの婚約は祖母からの要望だと」

「そうよ、フローリアちゃんも最初は可愛らしい女の子でね……いつからか……姿をみないわね」

「フローリアの容姿を覚えてますか?」

「ん〜確か綺麗なライラック色に菫色のひ……瞳……ん?」

「……フローリアは誰に似てるのですか?」


「あなた……確か……フローリアちゃんの母は身体が弱いとあまり夜会にも参加していない……結婚式では……17年も前だからね」


「それと、殿下から言われたのですが……例えば母上の妹が父上と2人で会っていたらどう思いますか?」

「え?妹と2人?嫌に決まってるじゃない、どんな理由があっても2人で会うなんて浮気を疑われても仕方ないわ」


「僕は……僕達はその行為を疑問に思わない家だと殿下から言われました」

「アンディ……貴方はフローリアちゃんと会わずにメアリーちゃんとだけ会ってたの?ドア越しに断られていたのでしょう?2人きりじゃなく……使用人が付いていたのでしょう?私室ではないわよね」


「いや、メアリーローズがフローリアが断っていると言っていて。母上だってメアリーローズの刺繍のハンカチを喜んでいだじゃないですか」


 徐々に顔色が悪くなる両親。


「プレゼントは直接渡していたの?」

「いや……メアリーローズが渡すと言い……そして気に入らないとメアリーローズに渡していたと」

「アンディ、お前……フローリアと会ったのは?いや声を聞いたのは」


「婚約解消の時が……久しぶりで。学園にもあまり来ないから会う事はなくて……」


 震えながら話すアンディ。


「まさか……学園でも会っていない……手紙やカードは?」

「メアリーローズが渡すと言うので渡してました……返事はいつもなかったのです」

「私にはメアリーちゃんはフローリアちゃんとはあまり話す事がないと……」


「あれ……メアリーローズはフローリアに虐められていると言っていたのに手紙やプレゼントを渡す?私は……私達は彼女を……虐げていたのですか?フローリアの母はライラック色の髪と菫色の瞳だと殿下が……。その上、私は側近候補からも外されました。婚約者を蔑ろにする男はいらないと」


「おい、アンディ……私達は何か大変な間違いをしていたのかもしれない。調べるぞ」


「そうね。私達もフローリアちゃんを知らな過ぎたわ」


「父上、母上すいませんでした」


 その日アンディの家族は眠れぬ夜を過ごしたのだった。



 翌日、学園に登校したアンディ。

「アンディ、おはよう」

「あぁ、メアリーローズ」


「あのさ……フローリアは今日学園に来ているのか?」

「さあ、わかりませんわ。あまり話す事はないので……どうしたのですか?」

「私がフローリアにと託した手紙はプレゼントは本当にフローリアが拒否したのだよな」

「……えぇ。そうよ……だから私がもらったのですが」


「君はフローリアに虐められていたのに手紙やプレゼントを渡しに行っていたのかい?」

「えぇ……お姉様はいつも怒っていて怖かったですわ」

「そうか……」


「それより、今日の放課後にカフェに行きませんか」

「……いや。ちょっと用事があり無理なんだよ。すまないな」

「せっかく婚約者になれたのに寂しいですわ」

「すまない……な」



 放課後

「殿下……少しいいですか?」

「ん?アンディか……随分と顔色が悪いな。幸せなのにその顔か?」

「その……家族とフローリアについて話し合っていたんです」

「ん?今頃か……まあ、君にとってのフローリアはその程度の存在なのだな。それで?」


 その時、勢いよくドアが開き入ってきたのは、

「フレデリック、聞いてくれ。フローリアが家を出る決意をした。ん?お前はフローリアの元婚約者殿のアンディだな」

「先生?」

「あぁ、この学園の先生でもある彼だが」

「私はフレデリックの叔父でな、今年度のみ身分を隠しているから内密に」

「つまり、王弟殿下ですか」

 

「それで叔父上はどうしたの?随分と嬉しそうだね」

「フローリアは明日、誕生日でな。18歳……つまり成人となる訳だ」

「先生……いや王弟殿下、フローリアの誕生日は来月だったと」

「それは、妹の方だろ。そんな事も知らないで婚約者をしていたのか?」

「私の誕生日と一緒だから忘れるはずがない。あのな、あの妻子は後妻だろ知らないのか?」

「え?メアリーローズは双子だと……それに彼女達の両親も言っていたし」

「そうか、家族が揃い揃ってフローリアをな。フローリアだけ全然色が違うだろ。君はフローリアの置かれている状況も知らないのだな。君の両親もか」


「フローリアと私は幼い頃に何度か会った事があったんだよ。しかし、フローリアが五歳の時に母が亡くなり、すぐに父親は昔からの恋人と2人の子供を連れてきた。フローリアからは、成人するまでは我慢すると言っていてな。一度祖父母の養子にと言う話もあったのだがフローリアの父親は断った。理由は金銭的援助だ。フローリアの祖父母はずっと海外に住んでいて、先日帰国した際に孫に会わせてもらえないと溢してしたのだよ」

「そんな……じゃあフローリアは今まで」


 王弟はゆっくりと話し出す。

「……家ではいない者として……使用人として生活していた。君に話せなかったのは家を追い出される可能性と自分には興味がないから話しても無駄と言っていた。私も隣国などでずっと仕事をしていてな12年振りに王都に戻ってな。そこで、甥から聞いたんだよ。フローリアが婚約者から蔑ろにされているとな。すぐに私は臨時でここの教師になり見ていたが、お前……酷すぎるぞ。ついにフローリアは、何処かの後妻に売り飛ばされると危機感を抱いたらしく、先程、相談してきた。君はもう少し婚約者の家族関係に興味を持つべきだった」

 

「そんな……フローリアが家族に蔑に……。メアリーローズの言っていた事は一体」


「君は今の婚約者の事が好きなら守るべきだよ。例え君への言動や行動に嘘があったとしてもね。しかし、婚約を解消して、すぐに婚約するなんで君も君の両親もフローリアをバカにしすぎだ。フローリアは自分の刺した刺繍のハンカチすら、直ぐに捨てたのでしょうねと言っていたし、君が妹と何度も2人きりで会っていた事も知らない。学園でも静かに過ごし放課後は図書館で勉強していた」


「フローリアが勉強?」

「あぁ、彼女は賢い。しかし……テスト当日は休むのは何故かな?まあ、顔立ちは妹と同じ父だから似ているね。本人にも言わないでと頼まれていたからね。他の教師にも王族の力を使わせてもらったよ。まだ未成年の子を路頭に迷わす事訳には行かないからね。でも、君が妹と浮気をしてくれたおかげで最低限の生活ができたと思う。君がフローリアを大切にしていらフローリアの扱いはもっと酷かっただろうから、浮気をしてくれて、ありがとう」


「浮気……そんなつもりでは」

「婚約者の妹とこっそり会って、実家にも招待し歓迎するのは家族で浮気を容認していたんだろ。違うのか?フレデリック、君はこの男を側近に?」

「しないよ、先日伝えた」


 何も言えないアンディであった。

「あの……殿下、私はこれからどうすれば」


「君は、今までと何も変わらない。姉から虐められていた妹を励ますうちに恋に落ちた……ただ、それだけ」

 殿下は呑気に話す。


「そうだ、お前は下手に動くな……ここでの話も何も忘れろ」

 王弟も同様に関わるなと言う。


「殿下……王弟殿下、本当にすいませんでした」


「いいのだ。これからはフローリアは幸せになれる。フローリアと言う名を捨て新しい名で生きて行くからな。君は何も知らない。いいね。君の家が無くならない為には知らないで通せ」

「はい、それでは失礼します」


「帰りに図書室に寄って行け、最後だぞ。この先は会う事はあっても話す事はできない可能性があるからな」




 図書室に向かうアンディ。ゆっくりと中を探す。中庭が見える席にいる1人の女性。

 近くの本棚に近くアンディ。


「今まで……すまなかった。何も知らなくて」


 一冊の本を取り出し、本を見つめながら話すアンディ。


「…………この窓から、いつも仲睦まじく寄り添う2人が羨ましいと思ったわ。私の居場所は何処にもない」

 

 参考書を見ながら答えるフローリア。


「……君も私に相談してくれたら良かったのに」

 


「知らなかった?知ろうとしなかったのではなくて?でも良かったのです。幸せそうな貴方の顔を見れたので」


「本当にすまなかった」


「私は色々と準備と家での仕事があるので……それではさようなら。お幸せに」


「君は僕の事をどう思っていたの?」

「そうね……初恋だったわ。そして、あの家から救い出してくれる人かと……でも、貴方は妹を取ったわ。学園でも妹と一緒にいるから話す事も……手紙すら出せなかった。一度話しかけたけど……貴方は言ったわね。『どうして、妹を虐めるのか?姉だろう』と、その時には貴方の中には私はいなかった」


 女性は静かに荷物をまとめ静かに席を立つ。

「フローリア……本当にすまなかった」



 本で顔を隠して話していたが顔を上げるとフローリアは悲しそうに笑った。今迄、見た事も見ようとしなかったフローリアに対して僕はどんな顔をしていたのだろうか。



 その翌日、フローリアは夜中に家を出た。

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