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ルーペルト・クリスタ外伝32


「敵女王型! 攻撃態勢に入りました!!」

「オリヒメ」

「任せるがよい!」


 敵の大群に対して中央突破をかける近衛騎士団。

 その両翼を守るアロイスとルーペルトが率いる守備隊。

 近衛騎士団の快進撃は止まらず、今、止めなければ女王型に迫る勢いだ。

 だから女王型は俺たちを攻撃した時のような大規模攻撃を近衛騎士団へと放とうとしていた。

 しかし、それに備えるためにオリヒメを待機させている。

 五層の結界のうち、三層が壊されながらも女王型の放った奔流を受け止めきる。

 だが。


「第二射! 来ます!」

「連射とは聞いておらん!」


 オリヒメはそう言いつつ、二層の結界で受け止めようとするが、減衰させるだけで精一杯だった。

 とはいえ、そのおかげで近衛騎士団は結界を準備して、オリヒメの結界を抜けてきた奔流を受け止めることには成功した。

 成功はした。

 けれど、足が止まってしまった。

 その間に蜘蛛の大群が近衛騎士団の突き進む中央へ殺到し、女王との間に分厚い防衛線を作り上げる。

 後方に厚みを作られたため、近衛騎士団が敵防衛線を突破する確率はかなり低くなった。


「まずいわね、私が出るわ」

「出なくていい」

「あんな敵の大群の中で孤立したらレオも危ないわ!」

「一撃で倒せないほうが問題だ。俺たちは力を温存する」


 作戦の根幹は俺たち四人が一撃でドライエックを破壊することにある。

 レオたちは潰れ役。

 助けに入って、威力不足でしたでは話にならない。

 わかっているから、イングリットやクロエも両翼の戦闘に軽く加わるだけで留めている。

 二人が本気を出せば、両翼も近衛騎士団のように敵陣深くまで斬りこめるだろうが、それをしたところでドライエックを破壊できるわけじゃない。


「でも、このままじゃ隙は生まれないわよ?」


 エルナの意見も正しい。

 近衛騎士団が動きを止めた以上、誰かが隙を作る必要がある。

 敵に隙が無い状態では攻撃を防がれる可能性がある。

 女王型ごとドライエックを破壊するにしても、最大威力の攻撃をするためには隙が必要となる。

 さて、どうするか。

 そう思った時。

 空に異変を感じた。

 エルナと同時に空を見上げる。

 流星のようなものが戦場に向かって降下してきていた。

 それは。


「矢……?」

「王国からの援護射撃だな」


 飛んできた方向は王国方面。

 超遠距離からの狙撃。

 できそうな奴は一人しか知らない。


「さすがに気が利くな」


 俺がつぶやくと同時に矢は女王型に命中し、女王型は大きく吹き飛ばされた。

 さきほどの連射は女王型としても渾身の一撃だったんだろう。

 意表をついた狙撃に対して防御が間に合わなかった。

 敵の陣形が乱れた。


「まずはあの女王型にダメージを与える。行くぞ」

「任せて!」


 連射で消耗しているとはいえ、まだまだ女王型は元気なはずだ。

 削って、なるべく反撃能力を奪っておきたい。

 そんなことを考えながら、俺はエルナと共に女王型の前に転移する。


『調子に……乗るな!!』


 隙ありとばかりに転移してきた俺たちに怒りをあらわにしながら、女王型は巨大な足を振ってくる。

 当たれば無事ではすまない。

 単純だが効果的な質量攻撃。

 それを回避して、エルナが女王型の頭部を狙う。

 だが、剣が当たる直前に羽根つきの蜘蛛たちが盾となって、女王型を守る。


「鬱陶しいわね!」

「想定内だ」


 群体で行動している以上、トップを守るのは当たり前だ。

 自分の命より、群体の存続のほうが上なんだろう。

 ならばこそ。


「一緒に倒せば手間が省ける」


 エルナが女王型を相手にしている間、俺はゆっくりと準備をしていた。

 一気に決める準備を。


≪我は銀の理を知る者・我は真なる銀に選ばれし者≫


≪銀光は天を焼き・銀星は闇を穿つ≫


≪墜ちるは冥黒・照らすは天銀≫


≪其の銀に金光は翳り・其の銀に虹光は呑まれた≫


≪いと輝け一条の銀光・闇よひれ伏せ屈服せよ≫


≪銀光よ我が身に君臨せよ・我が敵を滅さんがために≫


≪――シルヴァリー・フォース≫


 ここで決める。

 そう決めたなら手加減は不要。

 切れる手札はすべて切る。


「はぁぁぁぁぁっっっ!!!!」


 気合と共に上空からエルナが降下していく。

 それに対して女王型は羽根つきたちを盾として防ぎにかかる。

 エルナが全力を出していないと見抜いているから、その程度の防御で留めているんだろう。

 こちらの狙いはわかっているはず。

 ドライエックを破壊しなければ、この騒動は終わらない。

 けれど。


「少し甘かったな」


 読みは間違っていないが、こちらは二人。

 エルナに集中したのが失敗だ。

 転移門を開き、俺とエルナの位置を入れ替える。

 女王型の前に現れた俺は銀属性の魔力弾を容赦なく女王型に叩きこむ。

 多数の魔力弾が女王型を包み込むようにして爆発し、女王型を後退させていく。


『ぐぅぅ!!』


 羽根つきの蜘蛛たちだけじゃ防げない攻撃。

 それによって女王型はドライエックの傍まで追い詰められた。


「ちょっと! 力を温存するんじゃないの!?」

「決めにいくから手加減なしだ」

「それならそうと言ってよ!」

「悪かったな」


 苦笑しながらエルナに答えつつ、俺は両脇に転移門を開く。

 そこからイングリットとクロエが現れる。

 こちらの総攻撃の意思を感じ取り、女王型は動こうとするが。

 その動きはオリヒメの結界に阻止される。


「先ほどの屈辱! 返させてもらうぞ!!」


 結界を破られたのがよほど悔しかったのか、オリヒメは気合の入った十層の結界を女王とドライエックの周辺に展開する。

 強固の結界は当然、外からの攻撃も通さないが、中から出ることもできない。

 つまり。


「四方に分かれて攻撃だ。一撃で仕留めるぞ」

「わかりました」

「了解だよ!」

「オリヒメの結界ごと消滅させてやるわ!」


 一名、何か違った方向でやる気を出している奴がいるが、それでも指示に従い、三人は四方に分かれてドライエックを囲む。

 ドライエックは一方向からの攻撃に対しては、強力な結界で対応する。

 それ対策のために四人で分かれるわけだ。

 誰かが結界で止められても誰かの攻撃は通る。

 ただ、そんな甘い考えでは破壊できるものも破壊できない。


「エルナじゃないが……結界ごと消滅してもらうぞ?」


 ここにいる四人は結界を張られても、それを破壊できる四人だ。

 万が一すらない。

 確実に消滅してもらう。


「蒼い銀を見たことあるか?」





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