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七章 匂いの調べ⑪

「イヴ? シンシャ?」

 会場を見回し、目立つイヴの黒髪の姿がないと気付くと、グランツは思わず名前を呟いた。だが、当然返事はない。

「…………」

 たまたま席を離れているだけか、それとも何かに巻き込まれたか。内心眉根を寄せながらグランツは歯噛みした。

(シンシャが着いていながら何か毒を盛るのは不可能だ。となると、魔法か何かか?)

 状況を冷静に分析しつつ、言葉巧みに貴族達から闇オークションの情報を仕入れていく。“物”も“人”も美しいものだけが売り買いされるというその情報に、なんともハインツ子爵らしいなと薄く笑みを浮かべた。

 舞踏会もそこそこに盛り上がっている。だがそれは表向きで裏では闇オークションが繰り広げられているのだろう。参加条件をなんとか一人の貴族から聞き出すと、グランツは直ぐ様特定の使用人のもとへ向かった。

「お客様、こちらは――……」

「知っている。“グラスいっぱいの黒真珠を貢ごう”」

「……! どうぞ、お通りください」

 合言葉に反応した使用人は会釈をすると、懐から一枚の仮面を取り出し渡してきた。これを付けて参加しろということだろうか。

「…………」

 すぐさま仮面を付けると、開かれた扉の奥へと向かう。奥に進むにつれ、ザワザワと別の喧騒が聞こえてきた。

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