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七章 匂いの調べ⑩

「警戒するに越したことはない、わよね」

 小さく呟いていたが、不意に扉がノックがされると緊張が走った。入ってきたのはハインツ子爵の使用人。どうやら紅茶を運んできたらしくテーブルにそれぞれ置かれるとお礼を言った。使用人は会釈をすると言葉を発することなくすぐに部屋から退室し、再びシンシャと二人きりになり部屋は静寂に包まれた。

「私のほうで毒味を致しますので」

「……ええ、お願い」

 どうしても頼まざるおえない行為に心が痛む。けれどシンシャの魔法のことを考えると適任は彼女しかいない。

「ん……?」

 その時、フワリと柔らかい香りがどこからともなく漂って来た。甘ったるい花のような香りが鼻腔を突く。香水とは違う、ゆったりと漂うその匂いはお香か何かのようだった――。

「ん……っ」

「イヴリース様……?」

 クラリと感じる目眩のような感覚に頭を押さえる。

 それに加えてシンシャも微かに表情を歪めた。クラクラする匂いに意識が混濁していく。

「シン、シャ……」

「イヴリース、さま……」

 気付くとソファーに深く沈み込む形で二人して意識を手放していた。


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