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六章 月の宴⑫

「……どうしても気になるなら、今度イヴリース様に訊いてみたらどう?」

「そうねぇ。そうしてみようかしら」

 ぽややんと答えるフローライトに対し、シンシャは密かに溜め息を吐きながら今は一緒にいるであろう主達のことを思った。

「私はイヴリース様に幸せになって欲しいと思っています」

「それは勿論私もよぉ。あんなに素敵な方だもの、是非幸せになって欲しいと思うわ。リセッシュ家から来るって聞いた時はちょっと警戒しちゃったけどぉ、まさかあんなにたおやかな方が来るなんてねぇ」

「悪名高いのは義姉のほうでしょう。なんでも我儘し放題だとか使用人への態度も酷いとか」

「あらぁ、嫌ね〜。イヴリース様と大違い」

 掃除の手を止めないまま話をしつつ、シンシャはある考えを巡らせていた。もしリセッシュ家の義姉が魔法を扱え、イヴリース様の今の状況を知ったらどんな行動を取るだろうか……と。

 他人の幸せを妬む者は、男女問わず多いものだ。

 妬みは怨みに変わり、そして異常で過激な行動を引き起こす可能性を秘めている。

 そう考えると屋敷に結界を張ってあるとはいえ、用心すべきだなと考えていた。

「結界師のタンザナイトに、結界を多重に掛けられないか訊いてみようかしら。勿論、グランツ様から許可を頂いてから」

「シンシャは心配性ねぇ」

「慎重になるに越したことはないでしょう」

「それはそうだけれどぉ」

 ガチャリ……。

 その時、部屋の扉が開いた音がした。

 扉が開いたほうへと視線を向けると、そこにはイヴリース嬢が立っていた。

「イヴリース様、お帰りなさいませ〜。ちょうど掃除を終えたところですので、お茶を淹れますねぇ」

「ありがとう、フローライト」

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