六章 月の宴③
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「アイン……ツヴァイ……ドライ……」
「その調子です。イヴリース様」
翌朝からイヴはダンスの練習を始めていた。相手は四人の侍女達ではなく、グランツのお付きであるオブシディアン。
グランツからイヴのダンスの技量を聞いたらしく、朝早くから『ダンスの練習をしましょう』と部屋にやって来たのだった。
「あの、オブシディアンはお忙しい方だと伺っていました」
「ええ。ですがグランツのためにもイヴリース様にはダンスを覚える義務があります」
「ぎ、義務……」
義務と言われると思わず気持ちがシャンとしてしまう。
「いいですか。グランツの傍に立つという意味をお考えください。身につけるものはすべてイヴリース様の糧にはなります。ですがその意味はグランツに恥をかかせない、その一点に尽きるのです。伯爵夫人ともなろう御方が、ろくにマナーを身に着けていない……それはグランツにとって恥なのです。たとえグランツが許したとしても私が許しません」
「はい……!」
オブシディアンはなによりグランツのためを思っている。その思いの強さに圧倒されながらも、イヴは曲に合わせてステップを踏む。
「少し早いです。相手のリードに合わせてステップを踏みましょう」
「はい」
「ワルツ……もしくはフォックススロットが演目として選ばれることが多いです。それを徹底的に身体に覚え込ませます」
オブシディアンはグランツの家庭教師でもあると聞いたことはあったが、スパルタだった。




