五章 閃風のフローライト⑩
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「お帰りなさいませ、グランツ」
「ただいま」
イヴとは異なり遅れて戻ってきた主を、オブシディアンは恭しく出迎えた。
「仕事のほうは如何でしたか」
「全員まとめて警察官に突き出したよ」
「それはそれは。良い結果が得られましたね」
「だがイヴとあまり一緒にいられなかったのが悔しいな」
自室に戻り着替えをしながら、イヴの舞踏会姿を思い出す。清楚で可憐な姿をもっと見ていたかった。
だが、
「そういえば、イヴリース様が狙われたそうですよ。シンシャとフローライトからの報告なので確かかと」
「なんだと……? イヴには常に目を向けていたが……話しかけていたあの男か? 許せないな」
会場内での出来事を思い出しては、微かに苛立ちが募る。
「イヴを他の男なんぞに取られてたまるか」
「心中お察しします」
「……やはりシンシャを付けるか」
「それはシンシャ自身も進言しておりました。イヴリース様を不届者からお守りしたい、と」
「……はあ。イヴを仕事の関わらない晩餐会や舞踏会に連れ出してやりたいものだな」
「それならご提案なのですが……我が屋敷で舞踏会を行うのは如何でしょうか。勿論、グランツのスケジュール次第ではありますが」
グランツのスケジュール手帳は既に分厚くギチギチに予定が詰まっている。そんな中、舞踏会を開く余裕はないものの一応進言した。すると、
「やるか。舞踏会……イヴが危険なく過ごせて喜ぶ姿が見られるならどんな形でも構わない。なによりダンスもままならなかったからな」
だがそれが愛おしかったと呟くグランツに苦笑しながら、
「承知致しました」
許可を出した主人が、内心倒れないかと危惧しながらもオブシディアンは頭を下げた。




