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五章 閃風のフローライト⑦

「もし怖かったらもっとくっついていなさい」

 まるで私の心情を読んだかのように囁かれる言葉。

「……はい」

 時々グランツはこちらの心が読めているんじゃないかと思う時がある。こちらを見ている蒼い瞳は、心の内側まで見透かされるようで、視線が合うだけでドキドキしてしまう。

 夢のような世界の仮面舞踏会。

 早く終わって欲しい気持ちとまだまだこのままくっついていたいという気持ちが相反する。

 屋敷に来てからというもの、グランツとこうして触れ合える機会は限られていた。そのせいもあって、こうして一度距離が縮まるとどうしてしまえばいいか分からなくなる。

 グランツは愛してくれているのだと、イヴは痛いくらいにその愛情を感じている。けれどその愛情に見合うものを返せているのかどうか、イヴは密かに悩んでいた。

「グランツ……」

「なんだい?」

「私は貴方に返せるものがありません。どうしたら……貴方に返すことができるでしょう」

「…………」

 唐突な問いかけだと理解している。

 きっと困惑させてしまっているだろう。不安から俯くイヴの顎をグランツはそっと指で救うと正面から視線を合わせて来た。

「キミはいてくれるだけで私にとっては幸せなことなんだ。愛情は返すとか返さないとかじゃない。与えたいから与えるモノなんだよ。無償の愛というやつさ」

「無償の愛……」

「イヴは今までろくに愛情を得て来られなかったんだろう? その分を補えるかは分からないが、私や屋敷のみんなはキミのことを愛しているよ」

 優しいグランツの言葉に、心を結び上げる鎖が緩んでいく。言葉に、行動に安心感が増していく。

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