五章 閃風のフローライト④
✿ ✿ ✿
豪華絢爛な調度品の数々。
奥にはいくつもの食事が並べられていて、人集りもできている。
(何故……)
イヴは自分自身に問いかける。
(どうして……私は此処にいるのでしょう)
それはシーズン中の特訓だから、という名目も立ちますがそれとこれとは話しが別。
ただグランツの役に立ちたいと思った、ただそれだけだ。だが、だからといって今まで長年引きこもりをしていたイヴにとっては、舞踏会という舞台はハードルがだいぶ高かった。
まずはイブニングドレスの選定から、侍女達と頭を悩ませた。黒髪に似合い、かつイヴの優しげな雰囲気を壊さないような物がいい、髪飾りにも合う物がいいという提案から薄い桜色のドレスが選ばれた。
メインのドレスが決まれば後は自然と靴もアクセサリーも決まっていった。
イヴがこうしてとある舞踏会に参加しているのには理由があった。それは遡ること二日前――。
「ユングフラウ家の舞踏会、ですか?」
「ああ。二日後、舞踏会が開かれる。シーズン中の練習にもなるだろう。良かったら一緒に参加しないか」
「でも……私なんかが参加しても宜しいのでしょうか」
「むしろ参加してくれたほうが、イヴの存在を主張できるからな。私としても好都合だ。それに――」
グランツは先程イヴが指し示した招待状に視線を落とすと微かに妖しげに微笑んだ。
「ユングフラウ家で例の夜会が行われているのだとしたら、暴かないとな」
そんな形でユングフラウ家へとおもむいたイヴとグランツだったが、イヴはグランツの仕事の邪魔をしないよう会場の隅で静かに周囲を眺めていた。
初めての舞踏会――グランツと踊れたらどんなに幸せだろうかと思いを馳せるも、そこは邪魔をするわけにはいかない。
スンと鼻を鳴らして匂いを嗅ぐと、様々な情報がイヴの脳裏に雪崩込んできた。嘘をついている者、嫉妬、軽蔑、騙そうと策略する者――色々な感情の情報が溢れてくる。




