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四章 令嬢のイヴ⑨

 やがてアプフェルシュトゥルーデルが焼き上がる時間になる頃、屋敷が慌ただしくなってきた。

 どうやらグランツ率いる討伐隊が戻ったらしいと、屋敷のあちこちから声が聞こえてきた。

「迎えに出ないでいいのか?」

「出たいですけど……窯の前を離れるわけにはいかないですから」 

「そんなん俺が見ておいてやる。行って来い」

「ありがとうございます、オニキスおじ様!」

 優しいその言葉にハグをしてから、私は足早に厨房を後にする。そんな様子にオニキスはカリカリと頭を掻きながら『変わりモンの嬢ちゃんだ』と一人呟いた。

 

「お帰りなさい、グランツ」

「ただいま、イヴ」

 広間に行くとそこには既に着替えを終えたグランツがオブシディアンと何事かを話していた。帰ってきたばかりのグランツに抱き着きたい欲が湧き出たが、無理やりそれを我慢する。令嬢らしく、淑女らしくを頭の中に思い描きながらも、グランツに問いかける。

「怪我などはありませんか? 魔物の討伐は無事終わったんですか?」

「怪我は何もないよ。魔物の群れも掃討した。これで街のみんなも安心できるだろう」

「良かったです。グランツが無事で」

 思わず安心感からフニャリとした笑みを浮かべてしまう。けれどアプフェルシュトゥルーデルとお茶会のことを思い出すと慌てて表情を引き締めた。

「グランツ……。その、実はアプフェルシュトゥルーデルがちょうど焼き上がったんです。ですので、お茶会を催したいのですが宜しいでしょうか? あと、一緒に同席して頂きたい方がいるんです」

「同席? 誰かな」

「オニキスおじ様……です」

「オニキス……ふふっ」

「グランツ……?」

 オニキスの名前を出した途端、何故か笑うグランツに小首を傾げたが、思わず視線を落とす。

「急、ですよね。すみません……」

「いいや。そんなことはないよ。……オニキスも誘ってお茶会をしようか。ちょうど甘い物が食べたいと思っていたところなんだ。焼きたてを食べられるなんて最高だよ」

「……! ありがとうございます、グランツ!」

 グランツの言葉にパァと表情が明るくなると嬉しさのあまり私はグランツに抱き着いた。

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