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四章 令嬢のイヴ

 次の日の朝、私は自然と目を覚ました。

 普段なら煩く義姉や義母が騒いでいる中で起床していたが、今はそんなことはない。

 妙に静かな朝だ、と思ってから身を起こすと見慣れぬ部屋にいたことで、ようやく自分がリセッシュ家ではなくファブリーゼ家にいることに遅れて気が付いた。

「あ……そうか。此処はファブリーゼ家なんだった……」

 苦手な両親も義姉もいない。

 その安堵感にホッと胸を撫でおろす。

 だが、それとは別でどこかソワソワとした空気が漂っているのを感じ取った。

「何かしら……」

 ベッドから降りてて室内用の靴に履き替えると、そろそろと部屋から出ようとする。だがその前に――、

「何処に行かれるおつもりですか? イヴリース様?」

「寝間着姿のまま、グランツ様に会うつもりかい?」

「そんなことぉ、させられませんわぁ」

「そうだね。ボクらが叱られちゃう」

 次々と小鳥のように(さえず)る四人の侍女たちに捕まってしまった。

 寝間着からドレスへ。

 髪は風とオイルを使って、寝癖一つなくしっとりと。

 あれよあれよと言う間に、朝の身支度をして貰いながら私はただただ椅子の上にちょこんと座っているしかなかった。

「あの、気のせいでなければ……屋敷の中が少し騒がしいような気がするのですが……」

「嗚呼、グランツ様のお仕事の件だね」

 アンデシンは言う。

「魔物――(ヴォルフ)の群れが出たんだよ。だから狩猟に出なきゃいけないそうだ」 

「えっ、えぇ……! 狼?!」

「ああ。しかも、(シュヴァルツ)(ヴォルフ)が率いているとの目撃情報があったものだから、急ぎの討伐依頼さ」

「黒狼って、知能が高くて残忍な性格だと本で読んだことがあります。グランツ……大丈夫かしら」

「そう心配するならぁ、グランツ様が出られる前にお見送りしましょう?」

 そうすればグランツ様の活力にもなるかも、とフローライトは言う。

「そ、そうですね。是非お見送りしたいです」

「――はい、できた。これならもう部屋の外に出ても大丈夫だよ。イヴリース様」

 そう言ってアンデシンから解放されると、私は早足に部屋の外へと出た。狩猟討伐ということもあり、必要な道具類を馬へと積んでいる。

 数人の男性が外の広場に集まっているのが窓の外から窺えた。屋敷の階段を降りていくと、喧騒が大きくなる。私にとって屋敷の人間以外と会う機会なんてほとんどなかった。そのせいで若干ながら人見知りであることも自覚はしているし、加えて大勢の異性と会うことなど心臓が破裂してもおかしくない。けれど、外にはグランツがいる――そう思うと居ても立ってもいられなかった。

(せめて、見送るだけでもしたい……! 危険な場所に赴くのだから……)

 緊張しながらも広間へと通ずる扉を開けようとしたその時、

「イヴ……?」

 グランツの声が、後ろから聞こえた。

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