二章 イヴとグランツ⑫
ディナーは、自分ができる限り想像していたものと比べると、ずっとずっと豪華で贅沢な物だった。肉料理を主体に構成された料理は前菜から味付けは優しく、メインにいくと肉料理のボリュームもさることながらその柔らかさに思わず口元を覆った。
(こんな美味しい料理がこの世にあるなんて……!)
密かにカルチャーショックを受けながらも、私はなるべく“令嬢”らしく、出された料理をゆっくりと丁寧に食べていった。
お腹も心も満たされて、デザートが振る舞われる頃になって徐ろにグランツが口を開いた。
「食事はだいぶ気に入ってくれたようだね」
「はい! どの料理も美味しくて、食べていてとても幸せでした」
「それは良かった。……イヴが喜んでくれてとても嬉しいよ」
グランツは優しい。会ったばかりだというのに、こんなにも親切にしてくれる。魔法の才覚がないのに、そんなことすら気に留めることなく――私自身を見てくれている。
スンと少しだけ空気を吸うと、料理の香りに紛れてグランツの感情が読み取れた。それは心の底から、偽ることなく私を歓待してくれているということ。
それがとても嬉しかった。嬉しくて、どうしようもないくらい浮かれた感情。浮ついたと言い換えてもいいかもしれない。グランツのためなら、なんでも応えたいと思えるほど、グランツのことを信頼していた。
だから――グランツには打ち明けておきたいことがあった。
「グランツ。あの、あのね……貴方に言っておきたいことがあるの」
「なにかな? 改まって」
「信じて貰えないかもしれないけど……私、小さい頃に病気を“臭い”で見つけたことがあるの。たまたまかも知れないのだけど――“匂い”で、人の感情や病、毒なんかを嗅ぎ分けることができるの」
『…………!』
毒という言葉に、二人の顔色が、反応が変化したのを瞬時に察した。
「だから、ね――」
言いにくそうにチラリと傍にいるシンシャを見上げる。
「シンシャからずっと、毒の匂いがするのはどうして……?」




