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二章 イヴとグランツ

テーブルの上には、既にひと通りアフタヌーンティーの道具が並べられていた。ティースタンドには軽食やスコーンの他に色とりどりのデザードが設えられている。

 そしてグランツ様の後ろには、侍女達とは異なり燕尾服に身を包んだ執事らしき人物も控えていた。

(まだ名前を知らない方だわ……)

 シンシャ達同様に、鉱石に関わる名前かしらと勝手に推測しながらも、私はグランツ様と正面になる形で座った。

「このような機会を設けて頂き、ありがとうございます。グランツ様」

 まずは礼を言った。

 初めて逢った時は、あまりにも口が回らなかったから、せめて御礼の気持ちだけでも真っ先に伝えておきたかった。

「そんなに畏まらなくとも良い。……イヴリース嬢、私のことはグランツでいい」

「……! で、ですが……グランツ様……」

「そう敬称をつけて呼ばれては落ち着かない。――私の最初の頼みだと思って受け入れてくれないか?」

 静かな声で、叱るようなこともなく、次々とグランツ様は『お願い』をしてきた。予想外過ぎる言葉に慌てて困惑し、助けを求めるようにシンシャをチラリと見たが、シンシャは何故か助けてくれることもなく穏やかに微笑んでいるだけだった。

「――ッ、……ぁの、……グラン、ツ……」

「なんだい、イヴリース」

「……!」

 異性の名前を呼んでは呼ばれ、そんな関係が気恥ずかしくて仕方ない。恥ずかしさから顔を俯きそうになるも、失礼にあたると堪えては顔を赤らめながらも言葉を紡ぐ。

「あ、あの……! 私も、お願いが……あります」

 声が震えながらも、私は思い切って『お願い』をした。

「グ……、グランツにも、呼んで欲しいです……イヴ、って……」

「……。わかったよ、イヴ」

 柔和に微笑むグランツの姿に、今度こそ私は顔が見られなくなり俯いてしまった。

 そんな私に対して助け舟を出すかのように、傍に控えていたシンシャはティーカップにミルクティー。そして小皿にはサンドイッチを取ってくれた。

(食べて気持ちを落ち着かせろってこと……? でも、喉を通らない……)

 辛うじて気持ちを落ち着けようとミルクティーに口づけると、ふぅと小さく息を吐いた。ミルクティー色の水面を見つめながら、私はは緩んでいた表情を改めて引き締める。

(グランツには……言わなければならないことがある)

 それは自分のこと。

 リセッシュ家のこと。

 失望させるかもしれないと思っていても、ソレを隠し通してまでこの屋敷にいたいとは思わなかった。

 そんな卑劣で卑怯なことを、自分自身が許容できない。グッと両手を握ると、私は顔を上げ真正面からグランツを見据えた。 

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