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時間を貯める池

作者: 夏樹れいじ

 何ら変哲もない溜め池がそこにはあった。

 湧き水を利用していることもあり、底が見えるくらいには綺麗な水が蓄えられている池だ。ボクらは頻繁にその池を遊び場にしていた。


 隣接した田んぼのために存在している池であることは何となく分かっていたし、その田んぼの持ち主と知り合いというわけでもなかった。それでもボクらは、まるでその池がプールであるかのように浮き輪を浮かべたりして遊んでいた。


 勝手に他人の池を遊び場にしていたのだから、怒られて然るべきなのだがそうはならなかった。それはきっとボクらがまだまだ小さく、無知で無謀で無力だったからなのだろう。




「あのときからもう十年以上も経っているのか」


 足元の水面に浮かび上がる緑の群生を見つめ、いつかの光景を幻視する。

 底まで見えていたはずの溜め池は藻に埋め尽くされ、人の管理が行き届いていないことが見て取れる。ただ、隣接した田んぼは今も緑が広がっていることから、溜め池の管理の必要性がなくなったか管理している人が変わったかのいずれかなのだろう。


 いつの日だったか、まだ綺麗だったこの池に魚を入れて、天然の水槽を作ろうと企てていたが、その翌日が大雨で泣く泣く断念した。それ以降も俺たちの計画は水に流されたままだったが。


「なるほど、それをこの池は叶えてくれたらしい」


 じっと目を凝らして見ると、緑色の溜め池には極小の水生生物が水の中をたゆたっており、さらにはどこから流れ着いたのか分からない数匹の魚が住み着いていた。


 数年来、俺たちが忘れていた時間をこの池は覚えていたのかもしれない。

 気分転換のついでにこの懐かしい場所に散歩しに来たが、思いの外いいものが持ち帰れそうだ。

二作目。前回の作品から随分と間が空いた気がしますが、気のせいでしょう、きっと。

今回の作品はどちらかというと日記です。いつかの日に見て感じたものを書きました。

人が忘れても、場所が思い出させてくれるものは結構多いんじゃないかと思ってます。


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