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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

うわさが独り歩きして、その後、返ってくる話

作者: 稲葉小僧

うわさ?

うわさって、あの噂?


「そうそう、その噂よ。ちょっと小耳に挟んだんだけど、とある公園でね、ちょっとした噂を二人に広めると、巡り巡って、その噂が話した本人に返ってくるんだってサ」


え?

噂が返ってくる?


「どういうことなんだ?噂を広めると、その噂が当人に因縁返しでもするってのか?」


「さぁ?詳しいことは何も分からないんだって。ねぇ、やってみなぃぃ?」


こいつ、この小魔女クセがなきゃ可愛いのになぁ……

だけど、それも含めて、俺はこの女に惚れてるから。

ということで、俺達は、遊び友達を一人引っ張り込み、その噂の元となる公園へ、夜の夜中へ行ってみることにした。


現地に到着したのは、午前二時すぎ……

俺達は、彼女の言うとおり、ここで一つの噂を流すことにする。


「場所は、公園内の何処でも良かったんだよな?」


「ええ、そう聞いてるわよ。短くても長くても良いので、噂を2人以上に聞かせること。そして、時間は深夜。それだけみたい」


「じゃあ、始めるか。噂の発信地は誰にする?」


俺がやっても良かったんだが、遊び仲間の、やけにはしゃいだ気分のやつが手を上げる。


「はいはーい!俺がやりたいです!どんなふうに返ってくるんだろうね、ワクワクするよ」


ということで、遊び友達が言うことにゃ……


「これ、聞いた話なんだけどな……ある廃病院(あえて、その場所やビル名は秘す。その理由は後で)に深夜に探検に行ったやつが、本物に出会って逃げ帰ってきたそうなんだ。ただし、一緒に行った彼女を残して。怒り心頭に達した彼女に、やつは後で半殺しにされたとさ……彼女言うには、一人残されてどうしようかと思ったらしいが、すぐ後に入ってきたナイスミドルの男性に助けられたんだとさ。幽霊なんて、何処にもいなかったわよと迫る彼女の顔が、夜叉の顔になってたと、奴は今でも怖がってるらしい」


ということで、これで条件は整ったわけだ。


「これで良いのかな?後は、噂が返ってくるということなんだけどさ。どういう形で返ってくるの?」


俺が聞くと、彼女、あっけらかんと、


「わっかんなーい!ともかく、なにかの形で返ってくるんだってさ」


なにかの形?

なんだそれ?


わけが分からず、俺達3名は帰ったが、その数日後……


「おい、知ってるか?廃病院跡で、彼女置いて逃げ帰って、その彼女が怨霊に取り憑かれて自○してしまい、それから一生、相手の親から責められる生涯を送った奴がいるってよ」


同僚が話しかけてくる昼下がり……

あれ?


「それ、俺も聞いたことあるけど、後半違うぞ。彼女さんは生きててナイスミドルの男性に助けられた。ただし、怒りのあまり置いてった彼氏を半殺しにしたという話だったはずだが……」


話が盛られてる、それも、より悲惨な方に……

それから10日後のこと。

特別報道番組に、この噂話が、後半、盛り盛りになって特集されている。


おいおい、どこまで盛っちゃう気だ?

特別番組じゃ、本人も彼女も、ご親戚まで祟られてしまい、ナイスミドルの格好した殺人鬼に惨殺されるという話になってる。

どういう形で、この噂が本人に返ってくると言うんだ?


突然、俺の携帯電話が鳴る。

発信は、例の噂話をした遊び仲間から。


「もしもし、おい、大変なことになってるぞ、あの噂話が!連続殺人鬼まで出てくる話になってる。どうする?今から、あれは単なる噂ですと発表するか?」


遊び仲間は気落ちしたような声で、


「もう無駄だよ。噂話ですって言ったって、もう誰も信用しない。ああ、これが噂が返ってくるって話かぁ……」


「おい、違うって!本人に返ってくるって話だろ?まだまだ大きくなるぞ、この話。どういう形で返ってくるのやら……」


慰めてるのか、それとも脅しているのか分からないが、ともかく俺は、遊び仲間を励ましていた。


数ヶ月後。

少し前に、一家全員バラバラ殺人事件が報道されてたが、あれが「返ってくる」だったんだろうか?

被害者は、遊び仲間の一家6人。

加害者を捕らえてみれば、何の関係もないナイスミドルの中年。

町中で、遊び仲間が行列に割り込んだとかなんとかで諍いになり、そのときには警官が近くをパトロールしていて刃傷沙汰にはならなかったが、犯人いわく、


「無性に腹が立った。怒りが無限に湧いてきて、これは相手を殺すだけでは足りないと思った……」


ということで、湧き上がる怒りに我を忘れた犯人は、某ホームセンターで長刃と長柄の刺し身包丁を買い、そのまま、近くにいた遊び仲間(まだ帰る前だったそうで)を追跡し、家に押し入って、家族全員を刺殺したのだそうだ……


俺と彼女は、もう金輪際、あの公園にいくものかと誓いあったよ。


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