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勇者と神剣、来国長  作者: 明広
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マリア、ゴールド20歳

 ユリアの願い②


 俺は攻撃手段を考えていた。


 現代地球人である俺はやはり銃をイメージしていた。


 それも対戦車銃だ。


 それでだめなら戦艦の艦載砲を作ろうと思う。


 火薬は無いが代わりに炎魔法がある。


 対戦車銃にはフレアの魔法で艦載砲にはドラゴンファイアを使うつもりだ。



 レオン司令官に鍛冶師を紹介してもらうようにお願いした。


 レオン司令官は鍛冶師ギルドに話を通した。


 おれはギルド長に紙にイメージ図を書いて説明した。


 ギルドでは最優先事項として作業に取り掛かり対戦車銃の完成に2日。


 艦載砲を5日で完成させると張り切って作業を開始していった。




 俺は午後から城壁に登りゴブリン、オーク、オーガをホーリーライトにて討伐することにした。


 数を減らしておけば、後々被害が少なくなるとおもったからだ。


 城壁に登り魔物に向かってホーリーライトを唱えた。


 その瞬間、風の谷の○ウシカの巨神兵の砲撃のような光線が俺の前から放たれた。


 光線が通った後には魔物の死骸も草や木々も何もかもが無くなっていた。


 何回かの攻撃の後、ふとアースドラゴンも狙ってみた。


 光線はドラゴンの前で弾かれ2つに別れて通り過ぎていった。


 他の魔物を巻き込んでだ。


 さすがドラゴンというべきか。


 魔法耐性がやたら高い。



 後は2日後の対戦車銃を待つことにして城へ帰ることにした。




 城への帰り道、負傷兵が建物に収容されていくのに出会った。


 ユリア姫を見たら、ついていきたそうに見えた。


 建物の中に入っていくと治療院だとわかった。


 傷ついた兵士が部屋のベッドに寝ていた。


 部屋に入りきれないものもいて、廊下に横になっていた。



 俺はエリアヒールを唱えた。


 魔力感知が出来るものは見えただろう。


 俺からキラキラ光る魔力が拡散していく光景をだ。


 魔力が通り過ぎた後には傷が治っている兵士が不思議そうに自分の体をみまわしていた。


「なおってる」と誰かが言った。


「おっ、俺も治っているぞ」と声が広がっていった。




 誰かが俺の手を握ったのを感じた。


 振り向くとユリア姫が俺の手を引いて奥の部屋へ視線を移し「こちらへお願いします」といった。


 部屋へ入るとそこにはベッドに寝ている女性と包帯を取り替えている中年の女性がいた。


 中年の女性が「あっ、姫様」といった。


 それを聞いたベッドの女性の視線が姫様へと動いた。


 ユリア姫が「マリア」と呼びかけた。




 マリア、ゴールド。


 ゴールド伯爵家の長女である。


 ユリア姫5歳の時、若干10歳にしてユリア姫の侍女に選ばれた天才である。


 勉学はもちろん剣術にも才を示した。


 特に魔術に関しては宮廷魔術士長スネイプ、ダンブルドアが100年に一人の天才だと認めた時、一時、都市中で話題になったほどである。


 マリアはこの時、スネイプの弟子となった。


 5年の修行をスネイプの元で行い、風魔法を使い、的の前に人形をおいて矢を曲げて的を射抜いて見せた。


 その実力を買われてパラソ城塞都市防衛戦に参加した。


 若干20歳にしてレベル50に到達した。




 ドラゴンがブレスを吐いたとき、マリアは城門の近くの城壁の上にいた。


 煙が収まると門の壊れた隙間から魔物が場内に進入していた。


 マリアは直ぐに城門前に降り魔物達と戦った。


 それと共に部下に指示を出し、バリケードとなるものを集めさせ、城門を封鎖しようとした。


 あるていど封鎖が完了しかけたとき、2発目のドラゴンブレスが放たれた。


 マリアの左半身を高熱の熱風が通り過ぎた。


 バリケードがなければこの時たおれていただろう。


 左手の先は溶けてなくなり顔面から左胸にかけ大火傷をおった。




 かけつけたポール、レイモンドにより一命を取り留めたが戦線を離脱。


 ポールも3発目のブレスが右足に直撃。


 一瞬にして右足は溶けて無くなり、熱風の余波で上半身に火傷をおい重症に陥った。




 代わったオルゲン、シルバーも4発目のブレスで右腕と右足を失った。



 この時、ハインツ、バノンとロレン、コバルトはバリケードを完成させるべく動いていた。


 ハインツは全身を焼かれ、ロレンは顔面を焼かれ失明した。




 しかし、彼らの努力によってバリケードが完成。


 鉄や岩、その他金属が混じったものがブレスにより溶かされ、より硬いバリケードがそこに出来上がっていた。




 マリアはユリア姫の後ろに居る俺に気づいて顔を伏せた。


 ちらっと見えた顔はケロイド状で目が白く濁っていた。




 マリアの意識が戻ったのは戦いから5日後。


 倒れてから10日がたっていた。


 その間マリアはこの都市があと10日ぐらいで陥落すると聞いても心が動くことはなかった。


 自分の体を見て絶望しか感じず、何故あの時死ななかったのか?と思って過ごしていた。


 死ねるものなら死にたいと思っていたのだ。




 そんな時ユリア姫があらわれた。


 会いたくなかった。


 誰にでも。


 こんな惨めな自分を見せたくなかった。


 しかし、ユリア姫の一言がマリアの心を動かした。


 姫は言った。


「使徒さまがマリアの体を治してくださいます」



 マリアは言われたことが分からなかった。


 この体が治る?


 伝説の聖女フェアールは欠損した体を治し、死にかけたものを生き返らせたという。


 しかしあれから300年。


 それは御伽噺だと思われている。


 なぜならこの300年そんな聖女は現れていないからである。


 それに使徒さま。


 言ってる意味が分からなかった。


 しかし姫が自分のそばにきて、抱きしめてきた。


 その目に涙を溜めて。


 えっ、泣きたいのは自分のほうなのにと思った。




 姫は俺を呼んだ。


 俺はマリアの前に来て自己紹介をした。


「明広、村上です」


 姫とマリアは二人そろって「えっ」といった。


 ユリア姫は俺の名前を聞いて「あきひろさま」とつぶやいている。


 マリアは「使徒さま?」と俺をみつめている。


 俺はまた神に祈ることにした。


「マリア、神は貴方を見捨てては居ません」


 そう、マリアに告げて膝をつき手を合わせて神に祈った。


「おう神よ、マリアにどうか癒しを与え給え」


 言葉にした瞬間に天からまた光の矢が俺に降ってきた。


 俺の右手が光りだした。


 その光は聖魔法Lv10聖光ホーリーライトの輝きだとわかった。


 俺はその手でやさしくマリアの顔に触れた。


 マリアは触れられた瞬間から、いままでつっぱっていた感覚と痛みが消えていくのを感じていた。


 このままずっとこうしていたい気持ちでいっぱいになった。


 俺はホーリーライトの手で体の包帯を取り左手でパーフェクトサーチをCTスキャンのように発動させ異物が無いかを確認していった。


 確認が終わり最後に右手でホーリーライト、左手でパーフェクトヒールを唱えた。


 マリアの体が光の渦に包まれ、1分ぐらいして消えた。


 そこには美人の女性がうまれたままの姿でベッドにいた。


 いままでマリアのお世話をしていた女性が「マリアーっ」と叫んでマリアを抱きしめた。


「おかあさん」とマリアがいった。


 俺はえっおかあさん、めっちゃ若いんですけど?と思った。


 今流れているマリアの涙が絶望の涙でないのはわかる。


 マリアとおかあさん、ユリア姫3人で抱き合い涙を流していた。


 俺はそっと部屋をでて1人で城へと帰ってきた。




 城へ帰ると王様が会いたいと言ってきた。


 そのまま、メイドの案内で王様の部屋へとやってきた。


 部屋には王様と知らない女性が待っていた。


 女性が俺の前で跪き「ありがとうございます」といった。


 俺は何のことかわからず、みつめ返すだけだった。


 女性は続けていった。


「姉を助けていただきありがとうございます」。


 姉、誰?


 王様が紹介してくれた。


「王妃、シルビアの妹、聖女オリビア、フェアール様です」


 王様も「ありがとう」と頭をさげた。


 治療したのは今朝のことで、もう知れ渡っているのが不思議だった。


 俺はなんていったら言いか分からず、とっさに思いついた「ユリア姫の願いですので」と答えた。


 守護の聖なるサークルの結界魔法の事にもお礼を言われた。

 こちらも「姫の願いです」と答えておいた。


 聖女オリビアは神との契約について俺とお話したいといった。


「明日なら時間がある」といったら、「明日の都合のいいときフェアール邸へきていただけないでしょうか」とお願いしてきた。


 承諾の返事をしたら「では明日お待ちしております」といって帰っていった。




 王様からは明日、四将軍の治療をお願いされた。


 それに俺がマリア、ゴールドを完治させたことも知っていた。


 俺は明日の午前中に四将軍の治療を午後からフェアール邸を訪問するとこを王様に伝えた。


 四将軍の訪問はレオン司令官が案内することになった。


 その後、夕食をいただいて自分の部屋へいってベッドに入った。


 ユリア姫は尋ねてこなかった。


 ちょっとさみしいと思いながら眠りについた。




 朝日とともに二日目の朝を迎えた。


 メイドさんが朝食の準備が出来ていると伝えにきた。


 部屋に入ると王様とユリア姫が席についていた。


 今日もパンとスープとベーコンのような肉だった。


 夜は肉を煮込んだシチユーと野菜とパンだった。


 質素である。


 でも美味しい味だ。


 朝食が終わりレオン司令官の執務室へいく途中でシルビア王妃の寝室へ寄った。


 1日が過ぎ治療の経過を見ることにした。


 ユリア姫を先頭に部屋へ入った。




 入った瞬間にびっくりした。


 シルビア様が若くなっていた。


 昨日は60歳のおばあちゃんに見えたのが今40歳ぐらいに見える。


 それもとっても綺麗で。


 原因はホーリーライトの生命力だと思うが謎だ。


 ユリアは直ぐにシルビア様に抱きついた。


 涙を流しながら。


 シルビア様は口を開いた。


 素敵な声で「使徒さま、ありがとうございます」


 後から聞くとシルビアさまは聖なる光が見えるらしい。


 この時の俺はうす青色の光の粒を全身から発していたらしい。


 さすが、フェアール家の長女だ。


 今日のシルビアさまの寝巻きは、ぼたんがない薄手のネグリジェだ。


 目のやり場に困るがパーフェクトサーチによるCTスキャン解析を行った。


 どこも異常なしだ。


 あれだけ痛んでいた肺も綺麗に治っている。


 さすが異世界。


 神の力は偉大だ。


 シルビア様に異常ないことを告げて、今日も聖光ホーリーライトをかけて明日また診察にくることを告げた。


 侍女二人も診察。


 異常ないことを確認して部屋を後にした。




 レオン司令官と出会い、司令官の案内でまずレイモンド伯爵邸へ行った。


 ポール、レイモンド伯爵40歳。


 15年前ルナ砦攻防戦にシリウスの近衛兵として従軍。

 歴戦の英雄である。


 ポールはレイモンド伯爵家の長男だったが連戦につぐ連戦で結婚する機会がなく伯爵家はポールの希望と差配により次男のサイモンが継いだ。


 レオンを先頭にユリアと俺が後に続きユリアの侍女が最後の四人で寝室に案内された。


 そこには60歳ぐらいの婦人と重態のポール将軍が眠っていた。


 レオンは陛下の言葉を婦人に伝えた。


「使徒さまの言葉に従うように」


 また、王様から事前に連絡がいっていたようだ。


 マリア将軍が治癒した件も含めてだ。


 俺は婦人に挨拶をした。


「明広 村上です」


 早速治療にかかった。


 まず、服を全て脱がした。


 生きているのが不思議なくらいの重態だ。


 それを見て姫と侍女は目をそらした。


 まず、パーフェクトサーチにてCTスキャン。


 体に異物が無い事を確認した。


 そして聖光ホーリーライトを唱えた。


 ポールの生命力と体力が回復したのが分かった。


 俺が次にパーフェクトヒールを唱えるとポールの体が発行しだした。


 3分ぐらい続いた光が消えた時、そこには右足があるイケメンの美男子が眠っていた。


 男の俺から見てもいい男だなーと思うほどの美男子だ。


 隣のご夫人が「ポール」といった。


 涙を流しながら。


「明日には目が覚めるでしょう」


「今日は安静にして下さい」


 そしてレイモンド邸を辞した。






 次にオルゲン、シルバー公爵家を訪れた。


 オルゲンはシルバー家の当主。


 20歳で後をついで結婚。


 30歳の時ルナ攻防戦に指揮官として従軍。


 子供は2男、1女。


 シリウスの従兄弟にあたる。


 部屋を訪れた時オルゲンはベッドで横になっていた。


 右足と右腕をなくし瀕死の重態が続いていた。


 妻のカトレイアが必死の看病を続けていた。


 俺がオルゲンに近づくとカトレイアは跪きお祈りを捧げだした。


 俺はオルゲンの服を脱がしパーフェクトサーチ。


 異物が無い事を確認。


 パーフェクトヒールを唱えた。


 いままでより、多くの魔力が抜けていくように感じた。


 5分ぐらい光に包まれていた。


 光が無くなると完治したオルゲンが寝ていた。


 体力がないのか意識は戻っていなかった。


 俺は聖光ホーリーライトを唱えた。


 キラキラ光の粒がオルゲンを包み込んだ。


「明日には意識が戻るでしょう」と告げた。


 カトレイアの泣く声が聞こえた。






 次にハインツ、バンノ伯爵邸を訪れた。


 ハインツはバノン伯爵家の3男。


 若干20歳でルナ砦の司令官になった剣の達人である。


 剣術とは不思議なもので、ある一定の強さに達すると頭もよくなっていく。


 宮本武蔵しかり、古の剣豪しかりである。


 魔物との戦闘が主なユグドラシルにおいて剣のみで闘うビクトリア流剣術を5歳から学んだ。


 時の師範、先代王ローム、ビクトリアが認めた逸材である。


 ビクトリア剣術は剣に魔力を纏わせ切る剣術である。


 達人になると剣先から魔力の刃を飛ばして切ることが出来る。


 シリウス王と年齢がいっしょで同期入門であった。


 司令官として兵の運用、住民に対しての政治を学んだ。


 ハインツは20歳の時結婚。


 妻と一緒にルナに赴任した。


 この時、新たに伯爵位を賜った。


 妻の名前はリリー、バノン。


 ルナ攻防戦の最中に息子を出産。


 名をハロルドという。


 現在15歳。


 ハロルドは戦場で生まれ戦場で育った。


 現在Lv40、父を超えた剣士に育った。



 ハインツはベッドで横になっていた。


 意識もない。


 全身の火傷から瀕死の重態だった。


 リリーがベッドの横の椅子に座っていた。


 疲れと悲しみで放心したようになっていた。


 俺はハインツに近づき服を脱がしパーフェクトサーチで異物が無い事を確認。


 ハインツは体力がないので先にホーリーライトの呪文を唱えた。


 そしてパーフェクトヒールを唱えた。


 ハインツから光が消えた時、完治したハインツがベッドにいた。


 それを見てリリーは意識を取り戻し涙を流してハインツを抱きしめた。


「明日には意識をとりもどすだろう」と告げて屋敷を後にした。






 最後に訪れたのはロレン、コバルト辺境伯家。


 コバルト家は代々魔境に一番近いロンネル城砦都市の領主。


 子供は2男、2女。


 35歳の時ルナ攻防戦に参戦。


 1年後、自分の領都にて防戦。


 3年を闘ったがワイバーンの出現にて都市は壊滅した。



 ロレンは妻サリー、コバルトの手を借りて玄関で出迎えてくれた。


 その場で椅子に座ってもらい、部屋を暗くしてサーチで異物がないことを確認。


 そのままパーフェクトヒールを唱えた。


 光がおさまったのを確認して目をゆっくり開けてもらった。


「見えます」と一言。


 30分ぐらい目をならし、今度は部屋を明るくして、しっかり見えることを確認して治療は終わった。


 さすがのロレン将軍も涙を流し、サリーはそっとロレンを抱きしめていた。





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