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勇者と神剣、来国長  作者: 明広
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アドリアナ姫の5つの願い

 ユリア姫の機転とアドリアナ姫の5つの願い


 博士は熊の人形になる材料を見渡した。


 壁に国旗がかかっていた。


 ウインドカッターで切り落とし手元に引き寄せた。


 土魔法Lv7メイクシングを使い熊の人形を作った。



 現代のテディベアだ。



 アドリアナ姫に渡すと姫は喜んだ。


 博士は満足した笑顔をしていた。


 アデルは自分達の要望とは違ったが、その行い一つ一つが今までに見たこともない神の御業だったから無理やり納得しようとした。




 しかし、アデルの他にもう一人?「あっ失敗だったのか」と悔やんだものがいた。


 誰言おう神ムーン、シルバー本人だ。


 神人生50億万年。


 初めての失敗だと思った。


 博士?


 研究者?


 天才、ゴールド、湯川?という人物の本質を垣間見た瞬間だった。




 まあ、新たな発見が出来たのでよしとするか?なんて言い訳を自分にしていたらユリア姫がアドリアナ姫に小声で「ごにょごにょ」と話かけだした。


 それをきいてムーン、シルバーは「ナイス、グッジョブ」といった。




 ユリアはまだ一ヶ月と湯川博士との付き合いは短いけれど、本質をよく理解していた。


 博士の喜びとは自分の研究課題の達成、


 考えた事の問題解決、


 新たな知識の創造だけなのだ。




 博士はたまに一人でいるとき、つぶやく言葉があった。


 それを聞いてもユリアはわからなかったのだが。


 その言葉とはこうだ。




「自分の人生と研究は(まこと)に日に新たなり」


日日(ひび)に新たなり」


又日(またひ)に新たなり」




 ユリアが特に一ヶ月博士を見てきて思ったことは、博士は金も名誉も地位も望まないのだ。


 あれだけの力があるにもかかわらずだ。


 そして日々新たな知識を求めた。


 これまで博士が望んだことは図書館へ行く事と妖精王に会う事だけなのだ。


 このことを理解出来る人はいないだろうと思った。






 ユリアはアドリアナ姫が興味を示す言葉を投げかけた。


 初対面でも女の子同士、甘いお菓子の話は合い通じるものだ。


 そこで以前、博士から聞いたクレープの話題をすることにした。


 博士は研究しながらクレープとかハンバーガーとか簡単に食べられる物を食べていたそうだ。


 ユリアは聞いてみた。


「食べものを買うお金が無かったのですか?」


 その時の博士の答えは「解らない」だった。


 それでユリアは博士は前の世界では食べ物が買えない研究者だと思っている。




 しかし、ゴールド、湯川は世界でもトップクラスの資産家だった。


 特に大学時代に発明した工業用AIと医療用AIの性能は素晴らしく、急速に世界の発展を促した。


 大学を出てからはAI工場を起業し一年越しのリニューアルをなし続け全世界に受け入れられていった。


 それとともに莫大な資産が入って来たけれど、湯川財団に全てを任せて自分は好きな研究を続けていった。


 博士の健康を思って声をかけようとした人もいたけれど、博士の資産額を聞いて皆怖気図いてしまった。


 最後にAIのユリアが学習により博士の健康に気づいた時は手遅れで、その日に博士は死んでしまった。




 AIのユリアは信じられないが自分につけられていた自己破壊装置を自分で作動させた。


 AIのユリアを見たものは、博士が死の間際に破壊したものだと思った。




 クレープの話を聞いたアドリアナ姫は興味津々だ。



 次に「博士は病気を治したり、傷ついた兵士を治したりすることも得意だ」と語った。


 そして「アドリアナ姫の大切な人で病か怪我で苦しんでいる人はいませんか?」と尋ねた。


 アドリアナ姫は即座に自分の元騎士だったムーア、グリーン27歳の名前をあげた。


 ムーアは魔物の毒により倒れて明日をもしれない命だった。


 ユリア姫は「博士に治してもらいなさい」と勧めた。


 そして「その騎士を苦しめた魔物を倒してもらいましょうよ」といった。


 最後に「その魔物の仲間も倒してもらいましょう」といったのだった。




 アドリアナは言った。


「勇者さま、あのーーっ、わたくしクレープが食べたいです」


「それと騎士ムーアを助けてください」


「ムーアを傷つけた魔物をやっつけてほしいわ」


「その魔物の仲間もやっつけてほしい」




 それを聞いた博士はびっくりしたけど内容を確認していった。



 1、熊の人形がほしい


 2、クレープが食べたい


 3、ムーアなる人物を助けてほしい


 4、ムーアなる人物を傷つけた魔物を倒してほしい


 5、その魔物の仲間を倒してほしい




「この五つの願いがアドリアナ姫の願いでいいですか?」


 アドリアナ姫は「ハイ」と答えた。




 アデルは嬉しかった。


 人生で初めて涙して喜んだであろう。


 また自分の娘を褒めてあげたかった。




 しかし、次の勇者の言葉を聞いて、気持ちが急下降した。


 勇者は言った。


「では第2の願い、クレープを作りましょう」


 まわりの皆は思った。


 その願いは最後で次は魔物を倒してほしいだろう。




 勇者は何か考えるように周りを見回した。


 そこへ一人の少年が勇者のもとへ来て、「自分が厨房へ案内します」と申しでた。


 勇者は少年に名前を尋ねた。


 少年は「アンリ、ロームです」と答えた。


「ではお願いします」と言って少年についていった。




 アンリは謁見の間を出て地下への階段を降り厨房へやって来た。


 他の皆もついて来た。


 アンリは料理長のチェスター、クック45歳を呼んで事情を話し食材の提供を願い出た。


 チェスターは回りの面々を見て驚いたが、アンリのいう食材を用意した。


 食材は牛乳、小麦粉、砂糖、これは黒砂糖が出てきた。


 卵に植物から取れた油だ。


 くだものはリンゴのようなものといちごのようなものだった。


 博士は「食べたい人」と言った。


 最初にユリアの手が上がった。


 博士には分かっていた。


 前自分がユリアにクレープを食べていた事を話したこと。


 そして、これが誰の提案なのかをだ。



 博士はなにも言わず頷いた。



 アドリアナの手が上がった。


 次にアンリも手を挙げた。


 最後に上げたのはアデリナ姫だった。


 自分を入れて5枚だなと考えた。


 ひさしぶりに博士もクレープが食べたくなったのだ。




 まず魔法にて牛乳を遠心分離機みたいにして脂肪分と脱脂乳に分けた。


 脂肪分を5度ぐらいで保存し小麦粉を土魔法Lv8ホーム ザ ミネラルにて薄力粉へ変えた。


 黒砂糖も同じ方法で白砂糖へ変換。


 薄力粉に牛乳を入れ、砂糖、卵、サラダ油少々を入れて攪拌。


 クレープの生地を作った。




 鉄板に炎魔法ファイアを使い熱しクレープを薄く焼いていった。


 5枚を焼き上げ、保存していた脂肪分に白砂糖を加えて熱をくわえて生クリームを作った。


 りんごといちごは砂糖を加えて煮込み甘露煮にした。


 後は生クリームを焼いたクレープに塗り、りんごといちごの甘露煮を乗せてくるくる巻いてできあがった。




 まず、博士は一つをとり食べてみた。


 研究室で食べていたクレープより味は落ちたが美味しい味だった。


 夢中で半分ぐらい食べた時、回りの視線に気づいた。


 厨房はいままで嗅いだ事が無い甘く美味しそうな匂いに溢れていた。


 一つをアドリアナ姫に渡した。


「これが二つ目の願いですよ」


 アドリアナ姫は一口食べただけでほほがにっこり、えくぼになった。




 次をユリア姫に渡した。


 姫はこれがクレープかと思った。


 いままで食べたことも無い食べ物で想像していた以上に美味しかった。




 三つ目をアンリに渡した。


 アンリは美味しさのあまり涙を流していた。


 この光景を見て博士はアンリを好きになったのかもしれない。




 最後をアデリナ姫に渡した。


 アデリナ姫は「まあっ美味しい、まあっ美味しい」といった後うっとりとした顔になった。




 そこへ料理長のチェスターがやってきて、「自分にも一口ください」といった。


 博士は自分の残りをチェスターに渡した。


 チェスターは一口食べた後、博士の前に跪き「弟子にしてください」と頭を下げた。


 博士は丁寧に弟子の件はお断りし、後日クレープのレシピと小麦粉の種類、砂糖の精製方法などを紙に書いて渡す事を約束した。






 クレープを食べた後、三つ目の願いの場所への案内をアンリに頼んだ。


 アンリは頷き、一旦城を出て東にある兵士の建物に入っていった。


 そのまま進んである部屋の前で止まった。


 アドリアナ姫が最初に部屋に入って「ムーア」と叫んだ。


 奥の兵士が身体を起した。




 ここに倒れている兵士達は歴戦の高レベルの兵士達だ。


 半年前から、ローム王都を魔物が襲い出した。


 最初の魔物は2首ヒドラと3首ヒドラが20匹ばかり、


 ポイズンスネークが100匹ばかり、


 ポイズンフロッガーが200匹ばかりだった。




 ムーア達は盾を構えてヒドラのファイアボールを防ぎ、盾の後ろから弓でポイズンスネークとポイズンフロッガーを倒していった。


 しかし、倒しても倒しても、どこから湧いてくるのか、魔物の数は減らなかった。


 それでも南にある都市から食糧と矢玉を集め防衛をしていた。




 最初に動いたのは魔物の方だった。


 ロームから250km離れたロベリアが3首のヒドラ3匹に襲われたとの報告だった。


 ロベリアが襲われれば食糧が届かなくなる。


 アデルは援軍をロベリアに送る手配をしていた。




 しかし、10日前、突如としてグリーンフロッガー30匹が現れ、盾を構えた兵士たちを麻痺毒で麻痺させていった。


 そこをポイズンスネークとポイズンフロッガーが毒で兵士を襲った。


 体力を犯す毒にやられた兵士達は徐々に皮膚がただれ死に掛けていった。


 かろうじて毒を解除する薬草を与えて、毒の進行を遅らせていたのだ。




 博士は部屋に入ってムーアの元へ向かった。


 ムーアに向けて光の塊りを放った。


 回復魔法Lv5キアリーだ。


 光が消えてムーアは身体が軽くなっていた。


 つづけてパーフェクトヒールをムーアにかけた。


 30秒ぐらいムーアは光輝いていた。


 光がなくなった後にはもとの姿のムーアがベッドの上にいた。


 アドリアナはムーアに抱きついた。


 嬉しくて涙を流していた。



 博士はいった。



「三つ目の願いは叶いましたね」


 アドリアナ姫は涙の顔で頷いた。




 この光景を見ていた者たちがいた。


 周りにいた30名ばかりの兵士達だ。


 痛い身体を引きずりながら博士の方へにじり寄ってきた。


 なにかにとりつかれたように。


 近くに来ると手をあわせお祈りを捧げだした。


 なにも言わずに。




 動かない身体を懸命に動かして、


 博士のもとにこようとしている兵士はまだ沢山いたが、


 最初に博士のもとにきた兵士に対して博士はキアリーの呪文を唱えた。


 続けてパーフェクトヒールをかけた。


 光がおさまると40歳ぐらいの兵士がお祈りの姿でいた。




 博士は兵士を立たせて身体をあらためた。


 そして「痛みはありませんか?」と声をかけた。


 兵士は一瞬何が起きたのか分からなかった。


 始めに気づいたことは痛みがなくなっている事だった。


「ハイ」と答えていた。




 この光景を入り口のドアの所で見ていたナイダ、ロビナが「ナウマン」と声を上げた。


 ナウマンは「父上」と返事した。




 ナウマン、ロビナ40歳。


 アドリアナの新しい騎士ナイキ、ロビナの父でアデル王とは従兄弟にあたる。



 ナイダは涙した。


 息子の命を諦めていたからだ。


 息子の変わりに孫のナイキを見習いに出したばかりだった。


 ナイダ、ロビナ60歳。

 その場に泣き崩れた。




 博士はナウマンに言った。



「望みはあるか?」



 ナウマンは「自分と同じ境遇の者をお救いください」といった。


 博士は一つ頷くとまず空間魔法Lv1空間把握アンダースタンドスペースを唱えた。


 広く、広くこのローム領全体をカバーするようにだ。




 この時、すでに博士とナウマンの思いに大きな違いが合った。




 ナウマンは「この部屋の者だけでも治してください」とお願いしたつもりだった。


 まさかこのローム領全体を治すなんて神でも出来ないだろうと考えもしなかったのだ。




 普通の人間には想像も出来ない事だ。


 神ムーン、シルバーも「出来るのか?」と疑問に思ったくらいなのだ。


 神人生、本日2回目の驚きだ。



 しかし、この時代の者で地球暦2222年のゴールド、湯川博士の力を理解するのは難かしかったろう。





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