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勇者と神剣、来国長  作者: 明広
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マリアンヌ、シルバー15才

 第11話 勇者の道、ローム王国編 


 サイモン王がゲートを潜り砦に入ると100名ばかりの兵士が跪いていた。


 サイモンはシモンの後に続いて砦の中に入った。


 オスカル司令官は全兵士へこの場で待機するように指示をだした。


 また、シードラゴンクラブ、シーサーペント、クラーケンの回収を命じ、夕食の食材にすることを許可した。


 一部の上級兵士はシードラゴンクラブを食べたことがあり、その美味さを知っていて、おおいに喜んだ。


 一般兵士も今回食べられるとの事で大いに喜んだ。


 今回シードラゴンクラブを食べた兵士全員がその美味しさに驚いた。


 さらにシーサーペントは絶品だった。


 初めて食べた美味しさに全員が絶句した。


 一言も喋らず自分の分の焼いただけのシーサーペントを完食していた。


 しかしクラーケンの味はいまいちだった。


 量だけはたっぷりあったが。


 オスカル指令は勇者の空間魔法ゲートに大喜び、うきうきとゲートを潜った。


 フェアール砦では夕食の準備が出来ていた。


 積善省達は王様とオスカル司令官と一緒に食事をした。


 食事の後、今後の事を話し合った。


 防衛に関しては、シモンの近衛兵10名と静の弟子、ヤナ、ラウラの12名を主軸として後方にルアンヌを中心に人員を配置。


 全体の指揮をオスカル指令、サイモン王は勇者達が妖精国から帰るまでフェアール砦に滞在することになった。


 また、フェアール砦とカッソ間はゲートを使い、フェアール砦と王都オレルーン間は道路の整備をすることにした。


 どうしてもビクトリア王国だけで対応が難しい場合の為に積善省は光の指輪を作った。


 魔力をこめると一方の指輪が光るだけだがどんなに遠くても作動する。


 これをサイモン王とシモンに持たせた。




 次の日、カッソ側のゲートを使い、オスカル指令の元へ伝令がきた。


 積善省はその伝令兵を見て思うことがあったが、今はカッソへ近衛兵10名とヤナ、ラウラと共に向かった。


 カッソにはシードラゴンクラブ3匹がいた。


 近衛兵達は剣を抜き「魔剣ウインド一の太刀」と機動の言葉を発しシードラゴンクラブに切りかかった。


 サイモン王とオスカル指令はその切れ味を見て驚いた。


 普通の武器ではシードラゴンクラブの殻は傷がつかないことをこの一年で思い知らされてきたからだ。


 戦いは5分ぐらいで終わった。


 サイモン王は昨日のシモンの戦いを思い返していた。


 シモンもシードラゴンクラブの硬い殻を剣にて切り裂いていた。


 しかしシモンの剣は王太子になった時、自分が送ったもので装飾はりっぱなものだが普通の剣だ。


 昨日から奇跡の連続だ。


 取りあえず、フェアール砦に戻ることにした。


 砦では伝令兵が休息を取っていた。


 積善省は隣のオスカル司令官に話しかけた。


「娘さんの命を預かりたい」


 オスカルは話の内容が分からなかった。


 疑問の顔をしていると積善省は「娘さんには回復魔法の素質があります」


「覚醒させたい」と言った。


 オスカルはある報告を思い出した。


 兵士ルアンヌが死んで勇者さまが回復魔法で生き返らせたことだ。


 その後回復魔法Lv5キアリーの使い手になった事をだ。


 魔法覚醒の為に娘を殺す?


 いやいやそれは出来ることではない。


 思っていた事が顔に出ていたのか勇者様は仰った。


「殺しはしない」


 そして娘の下へ向かわれた。


 あわててついて行った。


 積善省は伝令兵の前にいきサーチの魔法を唱えた。


 そして目の前に「ステイタス」と言葉に出した。


 その瞬間に伝令兵士の前にステイタスが現れた。


 名前 マリアンヌ シルバー15歳

 HP 80

 MP 100

 力 30

 体力 40

 敏捷 50

 器用 50

 魔力 50


 炎魔法Lv2 風魔法--- 水魔法--- 回復魔法--- 


 マリアンヌ、シルバー15歳。


 シルバー公爵家次女、父はオスカル、シルバー司令官だ。




 積善省は言った。


「そなたは父上のように強くなりたいか?」


 マリアンヌは「ハイ」と即答した。


 積善省は「ついてきなさい」といって庭に出た。


 マリアンヌに「その剣を抜いてかかってきなさい」と言って自分も剣を抜いた。


 マリアンヌは剣を抜いて相対して後悔した。


 怖い、とっても怖い。


 体がかってに震えだした。




 マリアンヌの前に人が立った。


「師匠、私が先に」といってシモンは剣を抜き風魔法を剣に纏わせた。


 間合いを詰め師匠の小手を打った。


 打った瞬間に小手を返された。


 現代での小手抜き小手。


 後の先である。


 シモンは自分の手首がぽとりと地面に落ちるのを見た。


 その時、自分の手首が光だし元に戻っていた。




 サイモン王はシモンの手首が切り落とされた時、「あっ」と言って近衛兵を見た。


 しかし近衛兵は誰一人動かなかった。


 それを見て、サイモン王はシモンはこんな修行を半年もしてきたのかと驚いた。


 積善省は言った。


「止めるか?」


 マリアンヌはかぶりをふった。


 しかし、震えは止まらず、怖さは増すばかり。


 目の前に剣が迫ったとき目を閉じた。


 その瞬間に腕に痛みと熱い熱を感じた。


 人々が見たのは、確かに剣がマリアンヌの腕を通り過ぎた光景だ。


 しかし何事も無くマリアンヌの腕はそのままだった。


 積善省は太刀で切ると同時にパーフェクトヒールをかけたのだ。


 マリアンヌのステイタス画面に回復魔法Lv3が現れていた。




 積善省はマリアンヌにヒールを唱えるように言った。


 マリアンヌは頭に浮かんだ言葉を唱えた。


「癒しの女神よ。我が願いをうけ、我を癒したまえ。ヒール」


 マリアンヌを白い光が包んだ。


 積善省はその瞬間、マリアンヌの腕にウインド、アローを打ち込んだ。


 透明な風の矢がマリアンヌの腕を貫いて通り過ぎていった。


 マリアンヌを包んでいた白い光が無くなったとき、何事もなかったように佇むマリアンヌがいた。


 ステイタス画面に風魔法Lv1が現れた。


 積善省はもう一度、マリアンヌにヒールを唱えるように言った。


 白い光に包まれた瞬間、積善省はウォターカッターを飛ばした。


 高速で回転した水の刃がマリアンヌの腕を通り過ぎた。


 水の刃はそのまま進み、城壁にあたり10cmぐらいの溝を作った。


 しかしマリアンヌの腕は何事もなかった。


 そしてステイタスに水魔法Lv1が現れていた。




 積善省は静の弟子、ラウラを呼んだ。


 そして弓矢の指導を頼んだ。


 積善省はフェアール砦の守りとして、ヤナ、ラウラ、マリアンヌの三人を当て、


 前線で戦いながら回復できるマリアンヌを加入させることで、


 兵の消耗を少なく出来ると考えたのであった。






 次の日、積善省達6名はローム王国へ向け旅立った。


 ビクトリア王国とローム王国の間には3000m級の山々、アルペン山脈が立ち塞がっている。


 山々の山頂部分は真っ白く見え、氷に覆われているようだ。


 ドワイトとドナの案内でアルペン山脈の麓までやって来た。


 道はまっすぐ川沿いの崖に作られているようだ。


 アルペン山脈から流れた川はビクトリア王国側ではフェアール砦の北を流れ、


 王都オルレーンの東でビクトリア川と合流していた。




 道沿いに少し行ったあたりでドワイトが右の切り立った崖の前で止まった。


 ドワイトは土魔法を使った。


 しかし呪文は聞いたこともないものだった。


「オープンセサミ」


 崖の前にゲートが現れた。


 ドワイト曰く。「妖精女王から聞いた呪文で700年前の勇者が作った旅の扉」と言うそうだ。


 ドワイトはゲートを潜った。


 続いてドナ、その後に積善省、静、セラ、最後にシモンが続いた。




 旅の扉を出たら川が縦横に走る平原が遠くに見えた。


 ドワイト曰く、「川と湖の王国、ローム王国のロック砦の近くの崖の前」だそうだ。


 先ほどの場所から100kmぐらいの距離があるらしい。


 少し山を下ると砦が見えた。


 ロック砦を左手にそのまま進み、100kmぐらい離れたロベリア城砦(じょうさい)都市を目指す。


 途中夜営をした。


 夜営も快適だ。


 6人と馬6頭を守護の聖なるサークルでドーム場に展開する。


 後は風魔法Lv9気流操作にて温度と湿度を調節。




 後、積善省は土魔法で風呂を作った。


 水魔法でお湯をいれ服を脱いで飛び込んだ。


 久しぶりの風呂だった。


 静も入りたそうにしたので、回りを壁で覆ってあげた。


 静の後、セラが入り、ドナの後ドワイトが入り最後にシモンが入った。




 ロベリア城砦都市についたのは3日後の夕方だった。


 ドワイトが言った。


「前回自分達がここにたどり着いたのは6ヶ月前」


「そして5名の仲間が死にました」


 六ヶ月前、ドワイト達がここにたどり着いた時、ロベリアは5首のヒドラに襲われていた。


 五つの首の口からファイアボールを吐き出し城門を破壊し町を火の海にしていた。


 ドワイト達戦士20名でヒドラに相対した。


 先が金属で出来た木槌で頭を一つづつ潰していきヒドラを倒した。


 そのとき5名の戦士が倒れた。


 5名の墓はロベリア城砦都市の兵士の墓地に埋葬されている。




 ロベリア城主リートン、ロベリア50歳は全滅を覚悟していたところを助けてくれたドワイト達に最上の待遇でもてなした。


 部外者が兵士の墓地に埋葬されるのは始めての出来事だった。


 ドワイトはリートン、ロベリアに会うため城主館を訪ねた。


 そこには館というより城が建っていた。


 リートンは六人を暖かく迎えてくれた。


 遅い夕食が終わり、ローム王国の現状を教えてもらった。




 ローム王国への魔物の襲撃は5年前から始った。


 最北の城塞都市ロカ。


 五年前のある春の日の朝、住人約3000人が死んでいた。


 気づいたのは50km南の都市、ロゴスの商人で朝市の干し果物を売りに来たものだった。


 都市は白い霧に覆われ、普通しまっている兵士用の門が開いていて、門の内側に兵士が死んでいたのを発見した。


 中に入ると死体がずっと転々ところがっていた。


 近くにドアが開いている酒場があったので入ってみると、寝ているように客も店の主人も死んでいた。


 あわてて、ロカを離れてロゴスへ帰って、ロゴス城主、ヤスパー、ロゴス47歳に報告した。


 ヤスパーはすぐ偵察隊を派遣してロカが全滅していることを知った。


 ヤスパーはすぐローム王、ナイト、ローム32歳に報告した。


 そして、自ら兵1000名を率いてロカへ向かった。


 そこでヤスパーが見たものは、ヒドラ50匹あまりとグリーンフロッガー200匹あまりが死体を漁っている光景だった。


 ビドラは2首が体長3m、


 3首が体長4m、


 4首が体長5m、


 5首にいたっては体長8mにもなる。


 その首の口から全てファイアボールを打ち出して相手を攻撃する。


 近づいては噛み付き攻撃をしてくる。


 また、鱗に覆われた皮膚は硬く矢を通さない。


 退治するには接近して剣にて突き刺すか槍を投げて倒すしかない。


 城砦ではバリスタにて遠隔攻撃で倒す相手だ。


 通常は単独で行動し、時々川や湖に魔の森からやってくる。


 高ランクの冒険者に依頼が行き、冒険者は毒の餌で倒したり、弱らせて倒す。


 肉が最高に美味しいので、体を腐らせる毒はなるだけ使わず、神経毒で弱らせて倒す。


 この場合、肉の方が高い金になる。




 グリーンフロッガーは舌に神経毒を持つ体長3mの大ガエルだ。


 こいつの神経毒は強力で少しでも触れれば麻痺して動けなくなる。


 鎧ごと丸呑みして、胃液で体を溶かして後で鎧を吐き出す。


 しかし、悪食なので討伐は簡単だ。


 肉が美味しくないので体を腐らせる毒を使い簡単に倒せるのだ。


 しかし、数が異常だ。


 普段は一匹か二匹ぐらいで魔の森から出てくる。


 200匹など見たこともなかった。


 ヤスパーは直ちにロゴスに引き返し、守りを固めた。


 バリスタの矢を集め、毒を調達した。


 また、ナイト王に報告して魔法兵の派兵をお願いした。


 ちなみに、ローム王国には階級制がない。


 伯爵や公爵などがないのだ。


 貴族が優秀なのは変わらないが領主制を用いている。


 たとえばロゴス領は南北に50km、東西200kmの領地を治めている。


 代々ロゴス家のものが後を次ぐが何か問題が起きた場合、ローム王家の神託に従う。


 開国以来、ずっと続いている不思議の国なのだ。


 また、ロゴス領には町が5町、村が10村ある。


 ここにはロゴス家が指名した家が代々収めている。





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