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勇者と神剣、来国長  作者: 明広
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オルレーンの衛星都市

 ビクトリア王国再建



「船はカッソの港から出ました」


「ローム王国のベラドンナ港に着く少し前に海賊赤髭に襲われたのです」


「男の兵士は勇敢に戦いましたが全員殺されてしまいました」


「残った100名の内、若い女性はここに来るまでに少しずつ売られて行きました」


「そしてここに残った者は年寄りと子供だけになりました」


「今では5名の子供と3人の年寄りだけになっています」


「そうですか、何かしてもらいたい事はありますか?」


「いえ、おばあさまを治してくださりありがとうございました」


「私のただ1人の家族なのです」


「そうですか、分かりました」


「また明日お伺いいたします」


「明日まで、おばあさまは眠っているでしょう」


「明日には元気になられていると思います」


「ありがとうございます」


「では失礼します」




 ゴールドは治療院に戻ってきた。


 アテナとエスメラルダ、そしてリリーに魔力を与えて軽症者を治療して行った。


 2回の魔力補充でロッカーナ島全員の治療を終えた。


 今日はこの治療院で1泊する事にした。




 ハインズ夫妻とナルディ姉妹は自分達の家に帰って行った。


 ゴールドは本日の料理を作った。


 スノーホークの焼き鳥とパンとサロンジュースにカシスの実だ。


 シンフォニーはスノーホークの焼き鳥だけ食べた。


 アスティはカシスの実だけ食べた。


 ユリア姫とスライム3人娘は何でもパクパク食べた。




 ゴールドはブルースライムのアテナに尋ねた。


「ブルーフラワーを食べなくて大丈夫なの?」


「私達は何でも食べれますよ」


「物質を生命エネルギーに変えられるのよ」


「しかし、ヒールポーションを作る為にはブルーフラワーを食べる必要があるわ」




 ゴールドはなるほどと思ってしまった。


 ゴールドは彼女らをここで働かせる事を考えていた。


 そのためには、花を植えたり、木々を植えたりする必要がある。




 最後にはこのロッカーナ島の改造が必要だ。



 食事が終わってユリア姫に


 タナリア、ビクトリアとティアラ、ビクトリアの事を話してあげた。




 2年前、確かに避難船が出たらしい。


 ユリアも乗せられる所だったが兄マルスが反対した。



「王家の者まで非難したら


 この国を守る為に戦っている兵士や住民の思いが鈍ってしまう」



「王家の者は最後まで戦うのだ」と言ったのである。




 父を亡くして母ハーモニが避難船を出したのを


 王家の者は知っていたけど、


 兄の意見に全員賛成したのだった。



 まあ、この決断の為に死に掛けたのだが、


 この決断の為にユリアに会えたともいえるのだ。




 明日ユリアと2人でタナリア達に会いにいく事にした。


 この治療院のベッドで眠りについた。



 しかし、シンフォニーにアスティ、


 アテナにエスメラルダ、そしてリリーが


 狭い治療院のゴールドのヘッドに潜り込んで来た。



 ゴールドは治療院のベッドを繋いで眠る事にした。


 スライム3人娘は完全に人族の幼女姿だ。


 シンフォニーも幼女だしアスティも妖精なのに人族の姿なのだ。




 朝になって朝食を食べ、


 ハインズ夫妻が治療院にやって来たので、ナタリアの家へ向かった。



 10分ほどで岩山の途中の小さな小屋に到着した。


 ドアをノックするとティアラがドアを開けた。


 ユリアを見て声をあげた。


「ユリア様!?」


「ティアラ、久しぶりね」


「2年ぶりだけど大きくなったわね」


 ティアラは泣き出した。


 ユリアはやさしく抱きしめていた。


 10分ぐらいして家の中に入り、タナリアが寝ているベッドにやって来た。


 ゴールドは驚いた。


 若くなっている。


 死にかけていたので、とくに老けて見えたのだ。


 タナリアは66歳だ。


 しかし今は55歳ぐらいに見えた。


 しばらくするとタナリアの瞳が開いた。


 夢でも見ているのか?


 じっとユリアを見たままだ。




「タナリアおばあさま」


「本当にユリアなの?」


「ええっ、ユリアです、おばあさま」


「おおっ、ユリア、よく顔を見せておくれ」


「本当にユリアだわ」


「これは夢なのでしょうか?」


「いえ、おばあさま、会いに来たのですよ」


「貴女も海賊に捕まったのですか?」


「いえ、海賊は退治しましたよ」


「ええっ、海賊を退治した」


「はい、こちらにおられる勇者さまが退治されました」


「勇者さま?」


「はい、勇者ゴールド様です」


「おばあさま、今からオルレーンに戻りますわよ」


「えっ、ビクトリア王国までは遠く、この身体では無理です」


「私はここに残ります」


「ティアラを連れて行ってあげてね」


「大丈夫ですよ」


「みんなで帰るのです」


「ティアラ、ビクトリア王国の皆をここに連れてきてね」


「はい、ユリア様」




 ゴールドはハイアムに会いに来た。


「ハイアム、私は何日かここを離れる」


「ビクトリア王国の国民と共にビクトリア王国へ戻ってくる」


「それまで治療院にいる幼女達を頼むぞ」


「承知いたしました」




 それからゴールドは治療院に戻って


 幼女達にここで治療院を手伝ってくれるように言った。



 しかしシンフォニーとアスティはついていくと言った。


 スライム3人娘に魔力を補充してタナリアの家に向かった。


 タナリアの家には既に全員が集まっていた。


 ユリアが勇者の力を説明して帰る準備をしてゴールドを待っていたのだ。





 帰る者はタナリアとティアラ、レミントン伯爵家の老女と女の子が2人。


 3歳と5歳児だ。




 フレミング伯爵家の老女と女の子が2人。


 4歳と6歳児だ。


 全員で8名。


 それにユリアとシンフォニー、アスティだ。


 ゴールドはワープの詠唱に入った。


「天空と次元を翔け、我を届けよ。ワープ」




 目の前が岩の山から何処かの図書館に風景が一瞬で変わった。


「ここはビクトリア王立図書館だわ」


 ゴールドは一番、記憶に残っている図書館にワープしたのだ。


 1週間ここで過ごした。


 イメージが一番強い場所だったのだ。


 図書館を出て、城の城門についた。


 お城は隣にある。


 城門を守る兵士がユリア姫に気付いた。




「ユリア様、お帰りになられたのですか?」


「兄上はいる?」


「はい、執務室で執務を行われています」


「では私が会いにいきます」


「ご苦労様です」




 ユリアはそのまま、城に入って行った。


 全員その後をぞろぞろとついていった。


 城の廊下をどんどん進んで行き、王の執務室に到着した。


 ドアの前には2人の近衛兵が立っていた。


 ユリア姫を見るとさっとドアを開けて、「ユリア姫さまお帰りです」と声をあげた。



 マルス、ビクトリア王25歳はユリアを見つけて、


「おおっ帰ったのか?」と


 椅子から立ち上がってこちらにやってきた。



 後から入って来たゴールドを見つけると、その前に跪いた。


「勇者ゴールド様、お帰りでしょうか?」


「いや、ちょっと用が出来て戻ってきたのだ」


「マルス王、そなたのおばあさまだ」


「えっ」


 マルスはゴールドの後にいるタナリアを見つけた。




「タナリアおばあさま、ご無事でしたか?」


「亡くなったとばかり思っていました」


「出て行った船が戻らなかったので全員亡くなったと思われていたのです」


「母とおばうえは自分達の所為だと悲しみと後悔に嘆き苦しみました」


「ウエストモアランド、すぐ、母上とおばうえを呼んで参れ」


「後にもまだいるのか?」


「そなたは誰だ?」


「はい、私はレミントン伯爵家のコンスタンシア、レミントンでございます。マルス王」


「そうか」


「サーモンス、レミントン伯爵は亡くなられた」


「今はティアンナが家を守っている」


「ティアンナは生きているのですね」


 コンスタンシアは涙を流した。






「そなたは?」


「私はフレミング伯爵家のセセリア、フレミングでございます。マルス王」


「そうか、コープランド、フレミング殿も亡くなられた」


「今はナスリーンが家を守っている」


 セセリアは涙を流した。


 それからしばらくしてハーモニとカタリーナがやって来た。


 カタリーナはティアラを見つけるとそのまま抱きしめた。


 瞳から涙を流しながら。


 ティアラも自然に涙を流した。


「お母様」


 ハーモニはタナリアを見つけると抱きしめた。


「お母様、よくご無事で!!」


「それにお元気そうですね」


 涙顔だ。


「貴女もよく無事だったわね」


「はい、お母様」


「そこにおられる勇者様が助けてくだされたのです」


「まあ、そうなの」


「私も助けていただいたのよ」


「そうなのですか?」


「あら、ユリアも帰っていたのね」


「旅はどうなの」


「もう終わったの?」


「旅の途中でおばあさまと出会ってここまで送ってきたのです」


「まあ、そうなの。ありがとう」




 それからしばらくしてティアンナとナスリーンがやってきた。


 ティアンナはアイタナとアザリアを抱きしめた。


 アザリアは母の顔を覚えていなかった。


 1歳の赤子だったのだ。


 それでも、とっても暖かさを感じていた。


 子供達を抱いたまま、コンスタンシアに挨拶した。


「おかあさま、お帰りなさい」


「貴女も大変だったわね」


「はい、おかあさま」


 ティアンナは肩を震わせて泣き出した。


 アイタナが心配して母に尋ねた。


「お母様、どうかしたの?」


「どうもしないわ」


「あなた達に会えて嬉しいだけなのよ」






 ナスリーンはタニアとタバサを抱きしめた。


 死んだと思っていたのだ。


 タニアは母の温もりを知っていたがタバサは初めて母の温もりを感じたのだった。


 4人で泣きながら抱きしめあっていた。


 この日はこれで夜を迎えた。




 ユリアは久々に母と夜を過ごした。



 タナリアとハーモニ、そしてユリアで


 ベッドに横になって


 これまでの事をお互い話しながら夜を過ごした。



 ゴールドはシンフォニーとアスティと一緒にお城の広いベッドで眠りについた。





 翌日、ゴールドはマルス王にある提案をした。


 王国復興の為に、人々に仕事を与える施策についてだ。


 今後の事を考えて王都オルレーンの回りに衛星都市を作り、王都の守りとするのだ。


 王都を攻撃すれば、この衛星都市から敵の背後を突くのである。


 アルス王もこれを聞いて、防衛としてはいい考えだと理解を示した。


 それと同時に大きな問題点を挙げたのだ。




 今、ビクトリア王家にはお金がないのだと。



 現在、少数だがゴールドが取り戻した


 各領都の再建をしている最中なのだが、


 再建資金がなくあまり進んでいないとの事だった。



「マルス王よ、再建資金は私が出しましょう」


「使徒様、再建資金は初期投資での見込みは1,000万リアです」


「総額では1億リアになります」


「流石にそんなお金はありません」


「1億リアでいいのですか?」


「はい、1億リアです」


「では今、お渡ししましょう」


「えっ、1億リアですよ」


「はい、そこの壁際に置かせてもらいますよ」




 ゴールドは王の執務室の壁際に宝箱を2個出した。


 1個の宝箱には王国延べ金貨100万リアが50枚入っていた。


 1個の宝箱で5,000万リア、2個で1億リアだ。


 マルスは宝箱を開けて、金色に輝く延べ金貨に驚き、そして涙を流した。


 これで復興が出来る。




 すぐ宰相を呼んだ。


 宰相の名前はウエストモアランド、ロンドン公爵38歳だ。



 マルスは宝箱をウエストモアランドに見せ、


 各領主8家へ500万リアを渡すように指示を出した。



 それと今後、城塞都市をこのオルレーンの回りに建設する事を告げて、


 その手配をするように指示した。



 資金は残り6,000万リアだ。


 各領主家ではすぐ城塞都市の再建と農業の再建を始めた。


 仕事がない者を全て日雇いで雇った。



 また、賃金も高めに設定したため、


 労働意欲も湧き、経済が少しずつ回り始めたのだった。




 そんなある日の朝、ゴールドとユリアは城の庭を散歩していた。


 10分ぐらい歩いたら剣げきの音が聞こえて来た。


 ここは兵士の訓練場だとユリア姫が教えてくれた。


 100名ばかりの兵士が訓練をしていた。


 その中の1人がゴールドを見つけて、側に来て跪いた。


「使徒さま、その節は命を助けていただいてありがとうございます」


「貴女は誰ですか?」


「はい、私は近衛第1連隊のナタリナ、シルバー21歳です」



「王宮の謁見の間での戦いで


 ゴブリンにやられて死に掛けていた所を


 助けていただき、ありがとうございました」



「お礼を言いたかったのですが、


 中々お礼をいう機会がなく、今になってしまいました」



「あの場に貴女もおられたのですか?」


「はい、使徒さまが降臨されたすぐ後ろに倒れていました」



「私を斬ったゴブリンがユリア姫様に剣を向けた時、


 使徒様が天から光りと共に降臨なされました」



「あっ、あの時、そんな風に見えたのですね」


「はい、そして一振りにてゴブリンの首をはねられました」



「あのゴブリンはナイトで手ごわい相手だったのですが


 使徒様はあっさり倒されました」



「お願いいたします」


「私に剣をお教えくだい」




 ゴールドはサーチをナタリアにかけた。


 ナタリアの剣術はLv3だ。


 大体普通の兵士達はこのレベルなのだ。


 ゴブリンナイトはレベルLv4ぐらいなのか?


 自分のレベルが分からないので基準にならない。


「ナタリア、私の剣は自分の強さが分からないので教える事が難しい」


「しかし、剣術の最高レベルを見せる事は出来る」


「今はそれを見て、訓練してください」


「私が目的を果たして戻った時は、貴女を弟子としましょう」


「それでいいですか?」


「はい、よろしくお願いします」


「ユリア姫、剣を抜いてナタリアに相対してください」


「えっ、ユリア姫と剣を交えるのですか?」


「はい、そうです」


「失礼ですが、姫は剣をもった事もないですよ」



「ナタリア、今はまだ貴女は私の弟子ではありませんが、


 弟子にとって師匠の言葉は絶対の物です」



「もし、私の言葉の意味が貴女に分かるのであれば、


 あなたは私の弟子である必要はありません」



「貴女には既に私と同じ実力があるからです」


「分からないからこそ、弟子なのですよ」


「まあ、剣を構えれば、私の言っている意味が分かります」




 ユリア姫とナタリアは剣を構えた。


 普通の鉄剣である。


 ナタリアは剣を構えた瞬間に後に下がった。


 ユリアの剣がナタリアの首にぴたりと張り付いていた。


 回りの兵士は何が起きたか分からなかった。



 二人が剣を構えてナタリアが下がり、


 それをユリア姫がススッと前に出て、


 ナタリアの首に剣をつけたのだ。



 しかしナタリアには違って見えた。



 剣を構えた瞬間にユリア姫の剣から光りの輪が出て、


 身体が動けなくなったのだ。



 そしてユリア姫の剣に押されて後ろに下がり、


 気が付けば剣が喉につけられていたのだった。



 身体は汗でびっしょりだ。




「ナタリア、今の感じが剣の最高レベルですよ」


「感じましたか?」


「貴女の目指すレベルです」


「今の感じを忘れずに私が帰ってくるまで練習してください」


 ナタリアは跪いた。





「使徒さま、私にも一手、お教え願えませんでしょうか?」


「貴方は?」



「私はこの近衛第1連隊の隊長を仰せつかっているナイン、スター38歳です」






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