1.出会い
夢を見るというのは誰もが持つ権利の1つだ。
将来ああしてみたい、こうしてみたいと思う内に夢が出来て、生きがいが出来て、努力しながら成長していき、大人になっていく。
──だけども、その過程の中で段々と皆気づいていく。
夢というものは簡単に現実になるものでは無い。どれだけ努力しても報われないことの方が多いだろう。
現実が見えて来るにつれてこれでいいや、ここまででいいやと思い、自分の中でいい塩梅を見つけて踏ん切りをつけてしまう。
夢を見ていた自分は幻となり、いつかは忘れていってしまう。
それでも、夢を諦めたくない人達も沢山いる。
どれだけ辛くても前へ前へと1歩ずつ進み、努力を積み重ねていき、届かなかった夢を現実にし、報われる。
そんな素晴らしい事を望んでいる───。
『夢なんて叶うわけがない』
中学校卒業式の日に、そんなことを口に出していた。
ただ、その後のことを俺は覚えていない。覚えていないということはそこまで気にしなくていい事だったのだろうか。
そんなことを授業中に俺、黒澤 翔己は考えていた。なんで今になってそんな事を考えてしまったのだろうか。その時の事を思い出そうとしてもやはり思い出せない………。まあ………別にいいや。
「じゃあここの問題文を、黒澤読んでくれ────
高校に入って1ヶ月ほどが経っていた。1ヶ月もあれば友達のグループが段々と形になって現れていた。
そんな中、俺は一人でいた。寂しいとかそんな気持ちは無かった。ただ、今は誰かと話したい気分ではない。だから逆にありがたかった。
正直誰かとコミュニケーションを取るのはあまり得意では無い。たまに用事が会った時に声をかけるくらいでいい。
「おい、どうした。そんな不機嫌そうな顔して、何かあったか?」
その中で1人だけ話しかけてくる人がいた。
こいつは畑 晃、中学の頃からの仲だ。
明るい性格で色んな人に気さくに話しかける良い奴だ。
髪は整っていないことが多く、体つきが普通の人より良く運動が出来る。勉強においてはまあまあ良いくらいだ。
中学の時は毎日話すような事は無かったが、高校に入ってからはよく話しかけてくるようになった。まあ、一人くらいこういうやつがいないとやっていけないのかもな。
「……なんでもない。少し考え事をしていた。」
ため息混じりに俺はそう言った。ほんとに、なんで少し前の事を思い出していたんだろうな。
その様子を見て晃は不思議そうにしていた。
「いつも何も考えないでぼーっとしているお前が珍しいな。これは変化の兆しかなー?」
そんな間の抜けた返答に、俺は眉間に皺を寄せた。
「なんだよ、変化って。俺は別に変化なんて求めてないぞ」
「翔己が変化を求めてなくても、周りの影響を受けて何かしら変化していくものだろ?」
「確かにそうだろうけど、晃としか話すことないんだから変化なんて起きやしないだろ」
そう言うと、晃はにやっと笑った。
「ま、そうだな。けどな、俺は翔己が今の状態から抜け出して欲しいんだよ。いつも辛気臭い雰囲気出してるから誰からも話しかけてくれないんだよ」
そう言われて、少し周りを見てみた。確かにこんなんじゃ誰からも話しかけてくれないんだろうな。俺と誰かが目が合ってもすぐ逸らされる。誰も俺に近付こうとしない。やっぱり、少しでも変わらないといけないのだろうか。
そんなことを考えていると晃はため息をついた。
「まあ、翔己にいつかきっかけが出来ることを俺は願っているよ」
そう言われて、少し気が抜けた。こんな俺に対しても話しかけてくれて、願ってくれている。そう思うと、
「……ありがとう」
自然と声としてポロッと言葉が出た。それを聞いた晃はにやにやしていた。恥ずかしくなってきたな。
そんなこんなでいつも通り晃とだらだら話していった──。
放課後、1人になった教室で窓の外の景色を見ながら俺はまた考えていた。覚えていないことを思い出そうとしてもなかなか出てこない。本当になんでこんなこと今になって思い出したんだろう。
晃から言われたことを思い出す。
『変化の兆し』
もしかしたら、本当にそうなのかもなと思ってしまった。変化を求めてないと言ったにもかかわらず、そんなことを思ってしまっている。そんな自分に呆れてしまう。けど、今は本当に変化を求めていない。求めたくない──。
「ねえ君、何してるの?」
声のした方を見ると1人の少女が教室のドアから顔を出してこちらを見ていた───。
今思えば、これが変化の兆しだったのだろう。少年の人生は大きく変わっていくのだった。
初めての投稿です。正直私は文章力が無く、上手く表現出来ない物がとても多いと思います。なので、どこかしらふわっと描いてしまうことが多々あると思いますが。少しづつ書いていこうと思います。
まだ構成をしっかり考えられていないので投稿は不定期です。ゆっくりやっていきますので気長に待っていてください。