【★5】継ぐべきもの
「育てるゲーム」の拡散と終焉
ドラクエのメガヒットを受けて、各社で様々なファミコン向けの『RPG(本来は「CRPG」と表記すべき)』が作られて行きます。
また、『D&D』を始めとするテーブルトークが次々と和訳され、ドラクエでRPGを知った世代を飲み込みながら、第一次RPGブームが発生します。
この世代はクリエイティブ精神に富んでいたようで、自作のシステムを創造し、自分達のプレイを書籍に書き起こし…その生み出した文物は、第二次RPGブームへと繋がって行きます。(代表的なのが、「ソードワールド」などですね。)
さて。
ドラクエのメガヒットの影響は、ゲーム界隈には留まりませんでした。
ドラクエの世界観を元にした漫画も大ヒットし、アニメ化されて更なるヒットを生み出します。
ドラクエに対するアンチテーゼとして誕生したファイナルファンタジー(FF)も、平行して大ヒットを飛ばします。
ドラクエが『ゲームと物語のバランス』を目指し『ロールプレイ』の楽しさを提供したのに対して、FFではむしろプレーヤーと物語の乖離を目指したような『インタラクティブムービー』へと近付いて行きます。
本々、プレーヤーの行動がプログラムで縛られているCRPGでは、本当の意味での『ロールプレイ』は不可能であったので、家庭用ゲームに於ける『CRPG』は、堀井氏の目指した物とはかなり異なる方向を指向し、『ゲームをクリアしたらおしまい』というような『消費文化』のようなへと収束してゆきます。
そのような『閉じたゲーム』が主流となったゲーム業界は、後に「マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロール・プレイング・ゲーム(MMORPG)」の出現によって打破されるのですが、その立役者は日本のゲーム業界ではなく、また、この話の本筋からも外れるので割愛します。
ただし、MMORPGの興隆によって、『ゲームの周辺に寄生』していた、攻略本商法は壊滅することになります。
さて。
本来は「育てるゲーム」であったはずのRPGが、「見るゲーム」へと変貌をしてしまえば・・・そう、「ゲーム部分」が無くても成り立ってしまうわけで・・・
本編では割愛した「MMORPG興隆の立役者」はやはり『ウルティマ オンライン(UO)』ですね。あと『ラグナロク オンライン(RO)』とか。
いずれも、当時世界のゲーム市場を席捲していた、日本の会社の製品ではありません。
それらの成功を受けて日本のゲーム会社もMMORPGに手を出しますが・・・悉く失敗します。
原因は、そのビジネススタイルにありました。
それまでの「個人用ゲーム」では、ユーザーへの情報を極端に絞ることによって、攻略本で二次的に収入を稼ぐというビジネススタイルが定番だったのです。
(典型がコーエー社。自社の作ったストラテージの分厚いデータブックで、二次収入を稼いでいました)
当然ながらMMORPGへのその手法を持ち込もうとした訳ですが・・・MMOの世界では「プレーヤー間の交流」が重要になります。
そして「プレーヤー間の交流」で情報が流れてしまっては、攻略本が売れません。
「攻略本なしで遊べる」ゲームが勃興したことで、攻略本で喰っていた出版社は壊滅、そこからのバックリベートでウハウハだったゲーム会社も軒が傾いて再編の危機に・・・という流れになります。
やっぱりね、「一度成功したビジネススタイル」に胡坐を掻いていたのでは、時代の流れに吞み込まれて泡沫の夢に終わるってことですね。