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僕と俺とひとりの少女  作者: 葉室クレオメ
1/1

そう、待とうかしら


──────ゴンッ────


鈍い音と共に全身に痛みが走る。

視界が急に暗くなり、このまま死ぬのだと悟った。

血と誰かの匂いがする。

痛みはどんどんひどくなる。


誰かの声がする。優しい声。この声と共に死ねるなら本望なのかもしれない。


今まで数多の罵詈雑言を浴びさせられた私の耳には心地よすぎる声だ。


──────ズキッ────


心地よすぎる声の合間に聞こえる誰かの煩い声が頭を、脳を、刺激する。

その脳は私が意識を保とうとしていないことを察したみたいだ。


走馬灯のようなものが流れる。


これが自分の一生だったのか。


それを眺めながら思い返す。


疲れた。自分が生まれた意味も、生きてる意味もないのに。

どうして今まで生き続けていたのか。

もう何か月も歩き続けた終わりのない日々に終わりが来る。

やっとか──────。


・・・!?


走馬灯を見ていたはずの目には、真っ黒なフィルムが映っている。


「さっきまで、()()()が映っていたのに。」


私はフィルムの最初の方まで走る。


「死んでるから走れるのか・・・。走るってこんなに気持ちいいことだったのね・・・。」


ずっとずっと走っていると()()()が映ったフィルムがあった。

しかしそれを一目見た瞬間にフィルムは黒くなってしまった。


「何が映ってたのかしら・・・。」


黒くなったフィルムを見つめる。

懐かしい香りがした気がした。

そのフィルムの前で座り込んでしばらく眺めていると、自分の首に何かあることに気が付いた。


鏡など無く、直接見ることができないため、手で触って何かを確かめた。


「チョーカーみたい・・・。」


そのチョーカーの真ん中には縦に長い楕円形の装飾品が付いていた。

その装飾品は開閉できるようだったが中身が落ちてしまっては危ないということで開けないでおいた。


死ぬならこんな走馬灯見ていないで早く死にたい。

そう思った時だった。


地面に小さな穴が開き、そこに全てが吸い込まれていった。

まるでブラックホールのようで、底なし沼のようでもあった。

黒くなったフィルムも、ここに存在する空気すらも吸い込まれていき、当然私も吸い込まれた。


「これでやっと死か・・・。」


────────────


急に明るくなり、私は目を開けられないでいた。

誰かの声と雑音がひどい。


「あlkwrhg;あじぇんr;おjヴぉdふhヴぉあいえr。」


煩い。


「bふぃ起gjぼいrtじょjにそjき;・fstsrthじぇrb!」


耳障りだ。


「あjけrんgb起きkljんfぼfしgてjぼしfjgkjhskじgkrj!!!!」


頭痛がする。


「起kdjbthsけきて!起きえrkjghkjて!!!!!!!」


・・・!さっきの心地よすぎる声がする。


「あjk起きtrlgjはjかん起kjきてんvじゃdんfrj!!!!!!」


耳に全神経を集中させる。


「──────て!──────きて!!」


次第に鮮明に聞こえる声。


「─────きて!起きて!!!」


そう言われるとともに私の目は反射的に見開いた。

目の前には血だらけのイケメンお兄さんがいた。

私はそのお兄さんの腕の中にいた。


「よかった。意識あるみたいだ・・・。」


「そんなこと言ってる暇じゃないだろアンタ!血だらけなんだから自分の心配しろよ!!」


少し耳障りな声がお兄さんに向けられた。


「僕は大丈夫です。この子を病院まで運んであげてください。」


「大丈夫って・・・、待て、もしかしてお前、狼男か!?!?」


耳障りな声が聞こえたと思ったら、辺りは急にうるさくなり、雨が降り出した。


「ねぇ、狼男って言った?やだ。殺されちゃうわ~。」

「まだ狼男っていたの?怖すぎ・・・。」

「人様に迷惑かけんなよ狼野郎が!!!」

「狼男だからあの子助けたのね・・・。クスクス」


耳障りすぎて思わず耳をふさいだ。

私が濡れないようにかわからないが、お兄さんは私を強く抱きしめ、抱えたまま走り出した。


お兄さんの顔はどことなく寂しそうな顔をしていた。

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