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夢の少女 〜Be Brave〜  作者: みずたにみゆう
24/35

24.ファーストキス

 勇也は目を覚ました。


「う、うう…………んっ!?」


 するとその途端に絶句してしまった。

 美雪が勇也に抱き付いて眠っているのだ。


 勇也は慌てて起き上がろうとするが、身動きがとれない。


 ドキドキドキドキドキドキ……………!


 心臓の鼓動に押し潰されそうになる。

 恥ずかしさ大爆発である。


 どうする、どうする、どうする!?


 勇也は、ゆっくりと横にずれてソファから落ちようと考えた。

 そうすれば何とか美雪を起こさずに済むかもしれない。


 しかし、一体どうしてこんな状況になってしまったのだろうか。

 勇也は悩んだ。


 確か美雪に膝枕して貰って……、そのまま寝てしまったのか?


 勇也は目の前にある美雪の寝顔を見た。

 彼女はとても幸せそうな顔をしている。

 それを見ていると、このままで居たい気もする。


 このまま自分も美雪を抱き締めたい。

 ――そしてキスをしたい。


 だが、寝ている美雪にそんなことは出来なかった。


 それは恥ずかしいからだけではない。

 自分が卑怯だと感じるからだ。

 そんな人間にだけはなりたくなかった。



 暫くして、意を決した勇也は体を横にずらし始めた。


 が、美雪は手足を絡めてきた。

 その柔らかい感触に、更に身体が熱くなる。


「う、ううーん、ゆーちゃん……」


「み、美雪……? お前、本当に寝てるのかよ?」


 勇也はタジタジである。もう動きが取れない。

「……もういいや、好きにしてくれ」


 勇也が匙を投げると、美雪がパチっと目を開けた。

「ゆーちゃん、お・は・よ!」


「やっぱり起きてたのかよ……、いつから起きてたんだ?」


「ふふ、ゆーちゃんが起きるちょっと前だよ」


「お、お前なあ……、俺をからかって面白いのか?」

 と、勇也は頭を抱えた。


「だって、ゆーちゃんが可愛いんだもん」


「――――!!」


「……なんてね、ほんとは違うよ」


「えっ!」


 美雪が急に真顔になる。

 勇也はドキッとした。


「本当にゆーちゃんを抱き締めたかったの。そして、ゆーちゃんにもそれに応えてほしかった……」


「……そんなこと出来ないよ」


「どうして?」


「眠っているお前に、手なんか出せないよ」

 と、勇也は伏し目がちに答える。


 すると、美雪がソファから転がって下に落ちた。

「美雪!」

 勇也は慌てて下を見た。


 美雪は、両手を広げて、勇也を招き入れるようなポーズを取っていた。


「えっ!」


「ゆーちゃん、キスして。今、私は起きてるわ。手を出して」


 なんという過激な言葉。

 勇也は体が熱くなっていくのを感じた。

 心臓の鼓動が早すぎて、止まってしまいそうだ。


「どうしてそこまで……?」


「私、ゆーちゃんが好き。ほんと狂おしい位に。だからお願い、私の気持ちに応えて」


「……みゆき……」


 勇也は床に転がっている美雪の前に膝をついた。

 美雪をやさしく抱き起こすと、肩を掴む。

 美雪は全く拒まない。


 そして、唇を近づけた。

 が、美雪の唇を前にして勇也は止まってしまった。


「……ごめん、出来ない」


「どうして?」


「いざとなると体が竦んでしまうんだ……。俺ってやっぱ駄目な奴なんだよ……」


「そんなことない! もっと勇気を持って!!」


「勇気……」


 以前、唯にも同じ言葉を言われた気がする。

 確かに勇也に足りないのは『勇気』だ。


 人見知りが激しいからと、自分で言い訳を作って、他人との接触を、コミニュケーションを避けていたのだ。


 俺は一体何やってるんだ?

 彼女がキスを望んでいるんだ。何も怖がることはない。


 でも、何か怖い気がする。

 キスしたら美雪に嫌われてしまうような、取り返しがつかないような、そんな気がするのだ。


 出来ない……、出来ない…………!



 ――その時だった。


 一瞬、いつも夢に出て来る少女が勇也の頭の中をよぎった。


「自分で選んだ子なんでしょ……? 好きになって貰ったんじゃなく好きになった。そして、彼女に好きにさせた。……自分に正直になって」


 夢の少女は、真っ直ぐに勇也を見据える。

 彼女は、勇也に前へ進めと、力を与えてくれる。


 そうだ、そうじゃないか。

 俺は美雪が好きだ! 誰よりも美雪が好きだ!


 そして、彼女も同じ気持ちなんだ。

 彼女が想ってくれている位に、俺も君を想っているんだ。

 壊れてしまいそうな位に美雪が好きなんだ。


 胸にぶら下げている指輪を服越しにぎゅっと握った。



 そう思った瞬間、勇也は美雪に口付けをしていた。

 美雪の気持ちに応える為に。


 ふたりは互いの感触を確かめた後、ゆっくりと唇を離した。

 美雪は夢見心地でとろんとしていた。


「うれしい……。私のファーストキスの相手が、ゆーちゃんで……」


「俺もだよ。ごめんな、躊躇ったりして……」


「ううん、いいの。精一杯の勇気を振り絞ってくれて、本当にありがとう。大好きだよ」


 勇也は立ち上がった。そして美雪をゆっくりと起こしてあげる。

 このままくっついていたら、美雪の身体まで求めてしまいそうだった。


 だが、そんなに焦っても仕方がないと思った。

 もっと時間をかけて、ゆっくりと愛し合っていきたいと思った。



 勇也はふと外を見た。

 激しい雨が地面に打ち付けている。


「あれ、こんなに雨が降ってる。全然気が付かなかったな。……ん!?」

 勇也は目を見開く。


「ど、どうしたの? ゆーちゃん!」


「美雪、今何時だ!? 俺達、一体どれ位寝てたんだ!?」


 美雪もはっとして腕時計を見た。

「あ、六時みたい」


「なんだ、二時間位か……」


「違うよ、ゆーちゃん。朝の六時……みたい」


「えっ! ええっ!?」

 勇也は驚きの余り大声をあげてしまった。


 慌ててゲーセンから出ようとする。

 が、激しい雨の為、外には出れそうにない。


 美雪も勇也の後を追って入り口まで来た。

「どうしたの、そんなに慌てて?」


「美雪。俺達、朝帰りになってしまうかも!」


「なんだ、ゆーちゃんのことだから、皆勤賞がなくなるとかで……、えっ! ええっ!?」

 美雪もやっと状況を飲み込めたようだ。


「でも、私達、何もしてないよ?」

 美雪は妙にあっさりしている。


「お前なあ。何もしてないとは言え、絶対に美雪のお母さんに疑われるに決まってるだろ」


「あ、でもキスしちゃった。もう逃れられないね」

 と、小悪魔的な感じに微笑む。


「あ……」

 勇也は途端に顔が赤くなる。


「何でそんなに嬉しそうなんだよ」


「だって、ゆーちゃんと一晩一緒に過ごせたんだもん」


 勇也はその言葉にドキッとしてしまった。

 そうだ、ずっと美雪と一緒だったんだ。


「私ね、ゆーちゃんが側に居てくれさえすればそれでいい。後は何も望まない」

 美雪は勇也にすり寄ってくる。


「ど、どうしたんだよ、急に……?」


「ほんとにしちゃおっか? お母さんに怒られるくらいに」

 と、上目遣いをして微笑む。


 勇也は意識を失いかけた。

 暫く魂がどっかへ飛んでしまった。


「お、お、お前……、な、なんてこと言うんだよ!!」

 勇也は混乱して普通にしゃべれない。


「なんてね。う・そ・だ・よ!」


「美雪ぃぃぃぃー!!」


「あはは、ゆーちゃんて可愛いー! 本気にしちゃったんだあ!」


「だ、だって、お前の目、真剣だったぞ!」


「そうだった?」


「あのなあ……」


「でも、ゆーちゃんになら抱かれてもいいというのはホントだよ。他の人なら絶対に嫌だけど……」

 その顔に、勇也は改めてドキッとしてしまう。


 急に真剣な顔をするのはやめてほしい。子供と大人が同居しているような不思議な子だ。

 そのギャップによって、より強く、彼女を意識してしまう。


「美雪……」


 ふたりは暫く見つめ合ってしまった。

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