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久しぶりの対話

しばらくの間身を隠してエルザが呼吸を整えるのを待った。

エルザは何度も深呼吸をした後、ようやく落ち着いてきた。


「うぅ、こ、こんなに疲れたのは、は、初めて。

 さ、流石はお姉様……私を振り回せるなんて…」

「どう? 落ち着いたかな?」

「うん、何とか。と言うかお姉様!」

「わぁ!? 何!?」

「ど、どうして今まで会いに来てくれなかったの!?

 寂しかったんだから!」

「そ、そんな事言われても、距離が凄いし…」

「な、何でいつもお父様とお母様の誘いを断わってたの!?

 わ、私の事が嫌いになったとかなら謝るから!」

「そんなんじゃ無いって!」


エルザがさっきまでとは雰囲気が変わってる感じがする。

うーん、た、確かに結構こんな風になるんだよね、エルザは。

私と2人きりになったりしたら、よくこんな感じになるし。


「私が誘いを断わってたのはあの場所が好きだからだよ。

 ランちゃんが居て、私のお店もあって、

 皆もたまにだけど来てくれる。

 静かだし……静か過ぎるし…ま、まぁランちゃんも居るし」

「ランスフォートさんが理由なの!?」

「うん!」

「……ら、ランスフォートさんが理由なんだ…

 私達ってランスフォートさん以下なの?」

「いや? 比べられる物じゃ無いよ。そんなのはね。

 ランちゃんは貴族さんだし、村を守る必要があるからね。

 それに私はファンゲージ店を大きくすると言う目標がある!」

「そ、そうなんだ……でも、私はお姉様と一緒に過ごしたい。

 私の大好きなお姉様と…そして家族皆で私は過ごしたいの…」


やっぱりエルザに寂しい思いをさせちゃってたのかな。

小さいときはよく一緒に遊んでたけど、

師匠に弟子入りしてからは

エルザと一緒に遊ぶことは少なくなってたしね。


「でも、説得が出来ない事は知ってる。お姉様は強情だから。

 だけどせめて、お父様とお母様には会って欲しいの」

「うん、そのつもりだよ。でも、場所が分からなくて……

 そ、そもそも会うって予定だったことを忘れてたけど」

「酷いよお姉様!」

「い、色々あって……ぼ、冒険者登録の事しか…」

「冒険者登録? 何でわざわざそんなことするの?」

「いやぁ、名前を覚えて貰ってファンゲージ店の知名度をね」

「……私達の名前使えば速いと思うけど…」

「それは負けた気がするから私は自力で頑張るよ!」

「負けたって言うか……そもそも冒険者に登録しても

 最初は大した仕事は受けれないし、雑用ばかりって聞くよ?

 お姉様の実力を考えれば一発で最高ランクレベルだと思うけど…

 少なくとも私たちの名前を使えばすぐに相応な地位になれると」

「でもさー、それって何か他力というか七光りじゃん」

「あのねお姉様、七光りだろうと実力を示せば良いんだって。

 少なくとも私はお父様とお母様のコネで

 成り上がったとか言う連中に実力を見せ付けて来たし」


そうなんだ、エルザがどういう風に過ごしてきたか

一緒に居なかったから分からなかったけど

結構大変だったんだね。


「お姉様は私以上に凄いんだからお姉様だって絶対に出来るよ。

 だって、お姉様くらいだもん。私に勝てるの」

「勝ったっけ?」

「私は1度もお姉様に勝てた記憶無いんだから。

 それにお姉様は凄く稀少な錬金術師だもん。

 大丈夫だって、誰もお姉様に文句は言わないから」

「うーん、そんな物なのかなぁ? でも、私は」

「大丈夫だって!」


うぅ、かなりグイグイくるなぁ、エルザ…何かあるのかな?

でも、目がキラキラと輝いてる……う、うーん。

信じるべきだとは思うけど、私はやっぱり自力で…


「それに、最初は雑用ばかりって言ったじゃん。

 お姉様の実力を長い間、そんな事に使うのは

 何と言うか国の損失って感じがするし」

「あはは! そんな訳無いじゃん! 私なんかが」

「お姉様、本当に自覚して、いや本気で……

 そんな無自覚を通さないで、本当に……

 あのね、お姉様……お姉様の錬金術って

 下手したら国を傾けるような技術だから…」

「そうなのかな? 私なんか師匠と比べたらまだまだ」

「比べる対象が異常だと言うことに気が付いてよお姉様!

 お姉様の師匠は人間国宝! 国家の宝と言われる技術者だよ!?

 国を平気で傾けられる程の人と比べないでって!」

「そ、そんな必死に……」

「本当お姉様は……無自覚すぎるよ、自覚してよ。

 お姉様はとんでもないんだからね? 

 どうして名前を知られてないか不思議なくらいだから…

 普通なら王様の側近になれるレベルだから…

 側近というか国宝レベルだから……いや本当に…」


エルザが頭を抱えながら、ちょっとだけ呆れてる様に喋ってる。

そ、そんなに呆れちゃうようなことを言ってるのか……な?

ど、どうなんだろう。私、錬金術師は師匠しか知らないし…

錬金術がどれだけ重宝されてるか知らないしなぁ。


「と、とりあえずお姉様…私達の名前は出さなくて良いとしても

 れ、錬金術を扱えるって事は……しゃ、喋った方が良いよ、うん」

「喋るほどの」

「事だよ! 喋るほどの事! 当然でしょ!?

 錬金術は超稀少なの! 特に王都では最重要とされるくらい!

 考えてもみてよ、色々な素材を組み合わせて新しい物を作る技術。

 とんでもない位に有用性もあるし重宝されるべき技術。


 新たな物を作ることも出来て、不要な物を有用な物に変える。

 そんな技術だよ? 破棄される筈の道具さえ新たな道具に変えて

 資源を一切無駄にする事も無い。そんな技術だよ?

 もう革命だよ、そんな技術が重宝されないわけ無いよ……」

「じゃあ、他にも」

「居ないの! 数が凄く少ないの! 錬金術を極めるのには

 凄く長い時間が掛るらしいし、錬金術師の殆どが年老いてる。

 若いのはお姉様の師匠とお姉様くらいだよ…?」

「そうなの? 私は5年で」

「それが異常なの、気が付いてお姉様、お願いだから……」


じ、自覚は無いけど……す、凄い事なのかな?

でも、私が速く覚えた理由は師匠の教え方が上手いからだし

師匠が弟子を取れば沢山錬金術師が出て来そうだけど。

どうして師匠は弟子を取らないんだろう…不思議だなぁ。


「とにかく錬金術の事は言ってね? 本当に…」

「わ、分かったよ…一応言うね」

「そうそう。それとお父様とお母様にも会ってよ」

「うーん、会いに行きたいんだけど、何処に居るのか」

「……案内するよ、私は自由に行動することを許されてるし」

「そうなの?」

「うん、本来なら学生は勉強してる最中だけど

 私はほら、何か凄い強いから免除されてるの。

 私が行ってる学校は兵士を育成する学校だからね。

 規律や規則や心得や強さ、心技体を学ぶ学校なんだけど

 私はその全部で首席だから自由行動を許可されてるの。


 何か先生が言うには私を学校なんかで拘束するのは

 国の損失だとか言う話でさ」

「どれ位強いの?」

「全ての武器で首席、格闘術でも首席だよ。

 勉強でも何もかも全てが1番。

 大人の兵士にも負けたことはない。

 お父様とお母様、そしてお姉様には勝ったこと無いけど」

「私とエルザが戦った事なんて無いじゃんか~」

「……忘れないでよ、最初に私が負けたのはお姉様なんだから…」


いつのことだっけ? 私はサッパリ覚えてないよ。

私はずっと師匠に錬金術を教えて貰ってたからね。


「天狗になりかけてた私を止めてくれたのはお姉様なんだよ?

 何でも出来てチヤホヤされて、調子に乗りそうになってたけど

 お姉様に戦いを挑んで負けたんだよ……」

「あはは、何で私に戦いを挑んだの? 覚えてないけど」

「……敬愛するお姉様に勝ちたかったから…負けちゃったけどね。

 手も足も出なかった……お姉様の魔法は全く突破出来なかったし…」

「いつだっけ…私、あまり覚えて無くて」

「そうだろうね、お姉様その頃から

 ずっと錬金術の事ばかりだったから。

 もしかしたら、構って欲しくて戦いを挑んだのかも」

「そうなんだ…ごめんね、エルザ。相手してあげられなくて」

「……大丈夫だよ、もう慣れた。でも、お姉様の事は尊敬してる。

 構って貰えなくても、私はお姉様のことを心の底から尊敬してる。

 私の自慢のお姉様……久しぶりに会えて、何だか私も嬉しい」

「うん、私も嬉しいよ、エルザ」

「ありがとう。じゃあ、お父様達にも会いに行こう。

 案内するからね、私に付いてきて」

「うん」


エルザが案内してくれるなら迷わないね。

でも、本当に申し訳無いことをしちゃったなぁ。

エルザに寂しい思いをさせちゃってたみたいだし。

もっと家族の事を見てたほうがよかったかも。

錬金術も大事だけど、家族もとても大事なんだから。

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