拾.遠音の笛
≪遠音の笛≫
*
化け物と呼ばれた蛇。
神と崇められた蛇。
どちらも本当で、どちらも嘘。
彼は、黒でも白でもない、灰色。
灰色の、蛇。
***
水色の衣に袖を通し、ゆっくりと夕闇が迫るのをながめていた。
彼は笛を指先に転がし、もてあそんでいた。腹に蛇の不思議な紋様の入った、小さな笛だ。音は高く、ときに低い。
これは、今は“蛇守り”となった少女が返してくれたものだ。憑いていた少年から解き放たれ、自由になった彼が、いちばんはじめに手に入れたものだった。
彼は自由になり、どこへでも好きなところへいける。もう、こんな社にいなくてもいいのだ。けれど彼は、社を出ていくことはせず、少女と少年とともに残ることを選んだ。
ふと、わきで眠りこけるふたりの人間に目をやる。ふたりは仲良く手を繋ぎながら夢をみているようだ。
彼は柔く笑い、再び空に目を移す。
『もうすこし、このまま……』
唇にあてがい、そっと笛の音を響かせる。遠く天空まで響きを風にのせ、想い人に届くよう。
――もう、胸に痛みは感じられなかった。
*
光と闇の狭間で。
影はうごめき、色を散らす。
そして見えるは――灰色の蛇。
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其ノ社 大蛇アリ 光闇アリ
影 三ツアリテ
夜来ルモ 朝日昇リテ
願ハクハ 皆 幸アランコトヲ
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+ + +
光と闇と影の奇譚
やさしく、愛しい、灰色の古譚
+ + +
〈終〉
あとがき
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
詰め込んだ感があるので、意味不明じゃなかったかものすごく不安ですφ(゜゜)ノ゜
☆登場人物について☆
蛇サンには名前がないので蛇クンと呼ばせていただきましょう(笑
さて、那蛇叉という名前は、音がはじめに決まり、あとから漢字をくっつけさせてもらいました。
初游は漢字当てに苦労した子です。
★あのシーンについて★
そんで、蛇クンには無理矢理彼女の唇を奪っていただきました!(笑)
なにしろ、恋愛面に発展させたかったのですが、まだまだ那蛇叉には強引さが欠けるので、盛り上がらないでしょうし。
いや、もう考えたワケではなく、勝手に振る舞う蛇クンで、楽しかったです♪
実は、過去の初代“蛇遣い”の子との恋愛もいつか書いてあげたいなぁ。ってことで、全十章+1にするため、急遽加筆したりしました笑
♪♪♪
最近はもっぱらトキメキたいわたしです(笑)
もっとトキメキ要素入れたかった涙
熱く語りすぎるとキリがないので、ここいらへんで……
ん?
ああ、まだオマケがありましたよ!
では、オマケ後のあとがきで★