サクナ・ニナレ
苦しんでる時の、貴方が好き。
泣いてる時の、貴方が好き。
笑ってる時の、貴方が嫌い。
周りはいつもエゴばかり。桜が咲く気配すらしない。それでも貴方は私を見つめて、それでも私は貴方が好き。
尖ったナイフは喉を刺す。尖ったフォークは心を刺す。何をやっても癒えない傷で、私は心を着飾っている。可愛い可愛い夢の色が、私の涙を騒がせる。私の頬は蜜の味。
つつらつらつら標を調べて、つつらつらつら印を記す。一挙一動見逃すアテもない。
寝ても醒めても貴方。酸いも甘いも貴方。五臓も六腑も貴方。貴方貴方貴方。大好きな貴方は私の事が大嫌い。
私は私の事が大嫌い。貴方に嫌われるような私は大嫌い。だから私はナイフを手に取る。醜い頬は何の為?醜い顔は誰の為?甘い血の色をコントラストに、私は私でなくなってゆく。私は貴方になってゆく。
貴方は私が大好きで、私は貴方が大好きで。それでいいはずなのに、それだけでいいはずなのに。
塗れたナイフは貴方の色。紛れ紛れに愛の印。
涙も声も心臓にすら届かない。そんな貴方が私は大好き。
死んでも死んでも貴方が大好き。私が死んだら貴方は大好き?私の手にはフォークが一筋、一夜一夜に胸踊らせて、コロナもマントルもスペクトルも、今は私の色になる。
笑顔はマントル、血の色に染まる。目玉はスペクトル、貴方が大好き。
フォークが私の首を突刺す。
気持ちがいい。キモチガイイ。
貴方に見られてキモチガイイ。貴方に喜ばれてキモチガイイ。
貴方の目を、見てごらん。
私はもう、いないでしょ?