「ケモノ王国のシロとクロ」
●これまでのあらすじ
ここではないどこか。今ではないいつか。
獣の特徴を持つ人――獣人が住む王国"ケモノ王国"がありました。
獣耳、尻尾、牙に爪。それらを持った人が、ごく普通に暮らす国。
これはそんな国での物語。
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「食欲と性欲の違いって何だろうな……」
「いきなり何言ってんだよクロ……」
ケモノ王国王都、センター街を少し外れたハザマ通り。そこにちょこんとある寂れたマンション"コーポキバ"。
夕日に照らされた一室で、二人の少年がスマホを弄りながら会話していた。
片方は黒髪に黒のイヌ耳を生やした犬の獣人・クロ。
片方は銀髪に黒のイヌ耳を生やした犬の獣人・シロ。
部屋着のジャージを着た彼らは、あぐらを組んでテレビを見るリラックスモード。ズボンから見える尻尾も大人しいものだった。
そんな所に突然の"性欲"発言である。言葉を受けたシロが面喰うのも無理はない。
呆気にとられた表情のシロをよそに、クロはシミジミと続ける。
「最近さー、ウサギのバニィちゃんが気になるんだよ。彼女の赤い目だとか、長くて白い耳だとか、小柄な体とか。その辺がかわいいなー、って思うんだけど。俺は彼女を食欲的な意味で食べたいんだろうか。それとも性欲的な意味で食べたいんだろうか。その辺どう思うシロ?」
「バニィちゃんはかわいいよねーってまた随分とヘビィな質問だな!」
憮然とした表情で問いかけるクロに対し、辛辣にツッコミを入れるシロ。
彼はうーむ、と少し悩み、
「俺ら肉食の獣人が草食の獣人に対して抱く感情は、食欲か、性欲か。どちらなのか」
「どっちなんだろうな。俺は彼女を食べたいのか、抱きたいのか……」
「――その二択しか無いのか? クロ」
疑問符を浮かべるクロに、シロが静かに問いかける。
「食欲か、性欲か。それだけじゃないと思うんだよ、獣人同士の間にあるのって。こう、恋とか愛とかそう言った甘くて苦くて切ない感じの思いとか。そういうのって無い?」
「うわーシロってば童貞っぽーい。恋とか愛とか言っちゃうんだー」
「うるさいよ! どうせ俺は童貞だよ!!」
悪かったな! とムクれるシロに、クロはまぁまぁ、と笑いながら声をかける。
「悪い悪い。そうだよな、恋とか愛ってのもあるよ、うん」
「何だよそのあやす様な口調は!」
「いやいや、シロにはずっとそうであって欲しいなぁと思ってね」
「うがー! 何か上から目線でむかつくなぁ!」
ぎゃいぎゃい。二人の獣人はそんな風に、ごくごくありきたりな――獣人としての悩みについて、語明かすのだった。
「ケモノ王国のシロとクロ」END




