「真面目くんと不良ちゃん」
「お前さ。何で俺と付き合ってんだ?」
放課後。夕暮れの中を下校中、不意に彼女が聞いてきた。
「お前、真面目で委員長じゃん。俺、不良じゃん。まるっきり違うじゃん。なのに何で、付き合ってんの?」
「そりゃあ、好きですから」
僕のその言葉に、彼女は校則違反の金髪の下のかわいらしい顔をん~としかめる。
「それが何かぴんとこねーんだよな。お前、俺の事を好きって言うけどよ。どこら辺が好きなんだよ」
「自分の筋は通す、所ですかね」
「筋だぁ~?」
なんだそりゃ、と彼女は疑いの眼差しを僕に向けてくる。
「俺に筋なんてねーよ。不良だし。気に喰わない奴とは喧嘩するし。舐めたセンコーの授業には出ねぇし」
「でも気に喰わなくない奴とは喧嘩しないし、君を認める先生の授業には出ますよね」
僕の反論に、彼女はう、と言葉に詰まる。
「君は自分の納得する自分の道を決めて、その道を堂々と歩いている。僕はそんなこと出来ないから。そんな姿がいいなぁ、好きだなぁ、と思ったわけですよ。だから付き合いたいなぁと思って告白したわけです」
「――そーだったな」
彼女の頬が赤く見えるのは、夕日に照らされているからだろうか?
「じゃあ今度はこちらから。どうして君は僕と付き合ってくれてるんです?」
「えぇ!? べ、別に理由なんてどうでもいいだろ!」
「僕は言ったんだから、君も言ってくださいよ」
そう急かすと、彼女はあー、とかうー、とかしばらく唸った後、観念したように口を開いた。
「……お前、なんかすげーじゃん」
「すげー?」
「ムカつく奴とかセンコーとかいるのに委員長とかしてさ。俺ならキレそうな時も笑って我慢してたりさ。そうやって何かこう、うまいこと学校生活してるじゃん。そこがすげーな、とか思ってたんだよ!」
文句あるか! と彼女が顔を真っ赤にする。
その様子がなんだかおかしくて。可愛らしくて。愛しくて。
思わず彼女の手を握ってしまった。
「おいいきなりなんだよ!?」
「いやあかわいいなぁと思って」
「そういうこと普通言うかぁ!? ホントお前ってすげーけど変な奴だよな!」
「多少は自覚してます」
ふふふ、と笑いながら。彼女の手を引いて歩き出す。
「おい何だよ!」
「何だか嬉しくて。歩き出したい気分なんです」
僕達はお互いにお互いの無いものを相手に見つけて。それで付き合った。まるでパズルのピースとピースがぴったりはまったみたいに。
それが何だか、とても嬉しかった。
夕日の中を歩く僕達の二人の顔が赤かったのは――きっと、夕日のせいなだけではないのだろう。
「真面目くんと不良ちゃん」END




