エッセイ・書きたい展開
エッセイ・書きたい展開
ハッピーエンドが好きだ。
小説を書く際、主人公達が選ぶ選択肢は最善のモノであって欲しい、という意識がある。
例えば、ヒーローが主人公だとして。
主人公の前には沈みゆく二隻の船がある。片方にはヒロインが、もう片方には名前も知らない旅行者百人が乗っている。
片方を助けている間に、もう片方は沈んでしまうだろう。
さあ、主人公はどちらを助ける?
――というような展開があった時。
自分は何かしらの伏線、あるいはイヤボーンやデウスエクスマキナ的展開を使って「両方を助ける」という展開を書くだろう。
何故なら、それが"正しい"から。どこにも瑕疵の無い、綺麗な展開だから。
出来るだけ主人公には苦しんで欲しくない、という感情があるのかもしれない。物語の中でいくらピンチになっても、最終的には幸せに、心理的には何一つ重しを背負うことなく終わって欲しい、という願望というべきか。
(この辺り、昨今の? なろう系というか、ストレスフリーな展開の小説に通じる気がする)
と、ここまで"ハッピーエンド"が好きだ、ストレスフリーな展開にしたい……と書いてきたわけだけど。
最近、あえて「傷の残る」展開というのも良いので無いだろうか、と思ったりする。
先ほどの「二隻の船。助けられるのはどちらかのみ」という展開の時、片方だけが助けられて、もう片方を見捨ててしまう展開。
きっと主人公は後悔するだろう。どちらを選んでも悔やみ続けるだろう。その選択は、彼の一生を苛み続けるだろう。
そういう「傷」、あるいは「後悔」が残る展開を書いてみたい。
自分はそういう傷、後悔が嫌いというか、怖いと思う感情があるのだと思う。だからそれを避けてきた、のかもしれない。
だけどそれに向き合い、それを書くことが出来れば。
今までとはまた違った、新たな世界が見える――かもしれない。




