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短編(超短編)

ライブフォーエバー

作者: 芝田 弦也

自分以外に誰もいない、ひっそりと静まり返った教室。

徐々に沈み行く夕日が、私の横顔と室内にほんのりとした温かさを運ぶ。

黒板に書かれた先生の大きなしめの言葉と、周りを囲むように書かれた同級生の寄せ書きに夕日の光がスポットライトを浴びせるように際立たせている。

ふと目を瞑ると、昨日の出来事のように思い返せる日常は、もう過去のお話。

記憶の中にしまわれて、それはいつかは引き出せなくなるのかな?

つい、感傷に入り浸る。


色んな声が飛び交う騒々しい休憩時間。

友達との会話に花が咲き、時間をも忘れて話し込んでいた。

授業を知らせる鐘の音と共にやってくる先生の登場で、さっきまで色付き始めてた空気が一瞬で色味のない物に変わって沈静していくあの瞬間。

たまに切り替えができないクラスメイトが先生にたしなめられて、勢いを失って静かになっていく。

あまりの沈黙に息苦しさを覚えて、机に突っ伏して寝入りこんだりもした。


机から顔を上げれば、またやってきた忙しない憩いのひと時。

また、熱をおびだして色濃くうるさくなっていく室内。

次の授業は生徒から厚く慕われている先生だから、このノリのまま突入しても大丈夫だろう。

みんなもそう思っているのか、先生がやってきても室内は賑やかさを失わないままだ。


授業は直ぐに始まらず、小話と称してどうでもいい話で盛り上がる。

先生は人の心を掴むのが旨いのか、みんなは先生の話に耳を傾けているようだ。

そんな小話もきりよく終わり、さっきまでバカンスの様に浮き足立っていた心は凪のように落ち着いている。そして、授業が始まっていく。

教科書に書かれている内容に補足を交えて熱心に語り、黒板に板書してく先生は、先ほどとは目の輝きが異なって見える。真剣そのものだ。

それに釣られてか、私も負けじと話を聴いて一心不乱にペンを走らせる。


次のページに移り変わる直前で、静まり返った室内に鐘の音が響き渡る。

この後はショートホームルームだから、さくっと掃除を済ませば帰宅の時間に突入だ。

何をしようかな? 友達と遊んで帰ろうかな? それともすぐ家に帰ってゲームでもしようかな?

みんなも切り替えが早く、あっという間に教室は様々な声で溢れかえっていた。

狭い監獄の中から解放されて、色んな事が出来る自由な世界があと少しの辛抱で訪れるのだから。



そんなざわめきが、学校に残る理由が無くなった時に愛おしく感じるとは思わなかった。

あんなに騒々しかった日々が嘘のように静まり、一人、また一人と、みんな出て行く。

残るは、ここにいたという記憶だけ。

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