第ニ話 イセカイセカイイイセカイ②
秘密、そして何らの嘘もついているのだろう。だが悪い人ではなさそうだ。だからこそ、だからこそ言わねばならない。
「あの……ひとついいですか?」
「ん?何かしら?」
「何が魔法だ!ふざけんじゃねぇ意味わかんねぇ帰るぞ俺は!!!」
左右多はとうとう不信感に耐えられなかった。声に言葉がのって流れるように口から出た。
(言ってしまった。いや……言ってやったのだ!)
「てか何がカッペリだ!言いづれーんだよ!今日からお前はペリ子だペリ子……ペリ子ッ!!!」
「ふざけてないわ。つーかなにが『何がカッペリだ!』っていや本名なんですけど?」
「はぁ!?意味分かんねーツッコミしてんじゃねえよ!俺はさっきの場所に戻るからな!じゃあなペリ子ッ!」
「あっ待ちなさい!じゃ……じゃあせめて"ペリ美"で!」
左右多の耳には届かない。
◇
左右多はカッペリと歩いた道を擦りながら、何が起きたのかを顧みようとした。
「問題はどうやって俺がここに来たのか、だな」
現世つまり俺がいた世界からこの世界に行く、或いは呼ばれる為にはいくつかの条件が必要だろう。仮に無いのならば何人も数え切れない人間がこの世界に飛ばされるだろうし、逆に言えばこの世界の人間が現世に行くことだって可能である。つまり俺がもともとこの世界を知っていなければならない。
……やはり何らかの条件、重き数多の関門を抜けなければ到達出来ないものと考えられる。カッペリの話に出てきた"魔法"、そしてあのプラセンタ。
"魔法"とはそもそもいったい何なんだ?カッペリは日本語を話していた。だが声にノイズが混じりやがて通じなくなった。だがカッペリは俺を外へ引っ張り出すと日本語を使い始めた。
つまり一時的に魔法が使えなくなったと考えられ、それはプラセンタが引き起こしたとみて間違いない。また通訳の性質から俺もその魔法の影響下にあり、プラセンタに出た後に特別の振る舞いをしていなかったことから、カッペリの意思は介在していないと思われる。
そもそもなぜカッペリがプラセンタにいたのか。俺がプラセンタにいることを予め知っていたのか。或いは魔法などの何らかの方法でプラセンタにいると突き止めたのか。たぶん前者だろう。探索の為の魔法があったとして、プラセンタ内部で魔法が使えないのなら外部からの魔法も通じない可能性が高い。つまりあの場所に何らかの答えがある裏付けである。
そしてなぜプラセンタなのか。魔法が使えないとはどういう状況か。魔法を使う為の条件があり、その条件が崩れたと考えられる。条件は魔法それぞれに必要なものと共通するものとがあるだろう。共通する条件として運動にエネルギーが必要なように魔法にもエネルギーが必要だとするのはどうか。仮にそれを魔法エネルギーとして、元いた世界からプラセンタに飛ばす為に必要な魔法エネルギーは規模から見ても通訳のそれより大きいだろう。彼女がそれをプラセンタで興すことは可能だろうか?おそらく否……。つまり媒介物あるいは協力者がいると考えられる……!
彼女が引っ張ってまであの場所から連れ出そうとした理由……。
やはり戻って確かめねば……!