第四話 四人目の共犯者⑬
「で、どうすんのコイツら?」
左右多はちらりと倒れているカルーゲに視線を送り、カッペリの顔を見る。
「……え?」
「いやだから、その……」
言葉に詰まらせる。別に可哀想に思ったからじゃない。でも「城」とやらが下した命令に背いて無人の街に入って更に誘拐しようとまでしたのだ。腹を立てないわけじゃない。でも、ちょっと会話もしたわけだし。やっぱり心配にはなる、だろう。
「うーん、どうかしらねぇ……。うん、やっぱり死刑になるんじゃない?」
「えっ?」
頬が冷え、つむじからさーっと血の気が引いていくのが自分でも分かる。頭が真っ白になって何も考えることができなくなるのも分かる。でもどうしてそうなったかは、分からない。
「まぁ仕方ないわよ。流石に」
「いや仕方ないって……いや、え?」
また言葉に詰まる。そのかわり頭からはいくつもの声が次々と浮かんでくる。
――なんでお前が怖がってるんだ?
別に怖いわけじゃないって、いやでも……。
でも?
でも流石に死ぬのは……。
別に誰が死んだってかまわないだろ?自分に関係ないやつが死んだって、構わなかっただろ?構わなかったじゃん。
いやだから……喋っちまったし。いや違くて、そういうことじゃなくて。他人なんだけど、他人だけども……。
「なあカッペリ……」
「えっ何?」
「いや……あの……」
「もう、何よ……?」
「だから……その、このままほっとくの、コイツら?」
「ええ、まぁ、そうね。ここの住民が戻って来る前に兵士が先に確認するわ。その時に、ね」
どうなるか、とは言わなかった。左右多も何も聞かない。
「なあカッペリ?」
「なによ、もう……」
カッペリの声は若干うんざりしたものだった。もう答えるのが面倒なのか。いや――案外カッペリも自分と同じ事を考えていたりして。
「どっか隠そうぜ、コイツら」
「はぁ?なに言ってんのアンタねぇ!?」
前言撤回、まあそうだよな。でも不思議と……諦めようとは思わなかった。
「なぁ、やっぱり殺すのは良くないって思うのよ。いや別にコイツらのためじゃない、うん。ほらまあ、初めて会ったわけだし。いやカッペリも初めて会ったんだけどさ。だからその……」
「はあ……?なに言ってるのか分からないわ……」
「いやだから、初めてって言うのは……この世界に来てから、だからその……いや分かんねーかなぁ?あー、分かんねーよなぁ……」
でも途中から自分でも何を言っているのか分からなくなった。しかしそういうことなのだと思う。別に誰かのためじゃない。つまり、異世界なのだ。
「……覚悟は出来てるの?」
カッペリは手を腰に当てて、左右多の方へ体を向ける。
「ん?」
「覚悟、よ。この先長くなるわよ……?」
カッペリはずいっと左右多の顔に自分の顔を近づけて、じいっ……と目を覗き込む。二人の鼻がぶつかりそうなほどの距離になって――でも左右多は直ぐに仰け反った。
「ああ、うん。いいよ、いいぜ?」と応えながら服の袖で鼻を擦った。赤くなった頬を隠すためだ。
「よし、ならあなたも共犯者ねっ」
「え?ちょっ……うん、まあ、いいか……?」
カッペリは前を向いて歩き出す。左右多も慌てて後に続く。旅はまだ始まったばかりだ。共犯者になるのもいい。途中で壁にぶつかるのもいい。
「おいカッペリ!」
声をかけられたカッペリは「ん?何かしら?」と振り向いた。
「俺は左右多!名前は左右多だ!」
そう言ったらカッペリは、黙って笑うと前を向いた。左右多はハハッ、と言ってみる。でも直ぐに、下手な笑い声出してんなよ、と自分をなじった。
前を見ると、カッペリの髪の毛が揺れるたびにキラキラと、陽の白い光を眩く写している。いつの間にかカッペリは路地裏を抜けたあとだった。
まあでも、いいか――これから、これからもっと笑うのだから。どんどんと小さくなるカッペリの背中に向かって、追いかける様に、左右多は走り出した。




