第四話 四人目の共犯者⑩
カッペリ、カルーゲ、レモン、ポテトフライ。四人の手に貼り付いたそれは、左右多が視覚により知覚した初めての魔法である。
左右多はたじたじと一歩下がった。「ジャリ」っと「チリッ」っと、なんとも言えない鎖の擦れる感触が喉元から伝わった。
(こっ、これが魔法……!)
自分の右手をチラリと見やる。が、どうしようもないのでそのままカッペリの方を見た。
(3対1だぞ……ホントにやんのか?い、いや!やるんだよなそんなに手を光らせちゃ……。だが俺は助けられない!言い訳もしない!逆に助けてって言うぜ、心の中でな……!)
カッペリの左目が閉じられ、当時に四人の光弾が大きく、激しく燃える。しかしふわふわとした実態のないものというよりも体積を持つ粘液状のものと言った方がいい。大空を泳ぐ雲よりも、プラセンタの中で泳ぐべきものだろう。左右多にとっては動けぬ雲の怨念と呼ぶ方が馴染み深い。
まずカッペリの光がブルルと震えた。それを合図に3人の光玉もブルルと震える。
「ウォアッ!?」
顔を覆い声を漏らして仰け反った。俺だけである。
と同時に魔弾が三人の手を離れた。
しかしカッペリ、動じず。光を掴んだままである。
3つの魔弾が二人を襲う。だが左右多もまた動じなかった。出来なかったとする方が正しい。
もう、どうしようもないので頭を両腕で覆ってしゃがみこんだのだ。つまり"カルーゲの失態"も目に映らなかった。
カッペリの作戦はこうである。
『魔弾を3つに分割し、同時に迎撃させる』
他に3連射による迎撃もあるが、彼らの距離とタイミングがほぼ同じことからによるものである。
カッペリの魔弾は一際大きくなり、3つに分かれた。そのままカッペリの手を離れ、2つは後方に1つは前方に飛んだ。
まず後方の4つの魔弾同士が接触する。作戦とは違い、つまり同時で無かったのは後方が見えないことによるカッペリの僅かな焦りが影響していた。接触した魔弾はやがて2つの大きなものとなり「ドンッ!」と音が弾け、膨らんで合わさり一つの光として瞬いた。カッペリは「ンヒィィィィッ!」と叫ぶ左右多の声を聞く。
やがて光はカッペリ、左右多、レモン、ポテトフライの全身を包む。遅れてカルーゲにも到達し、その場の全員が光の中にいた。
眩しすぎる光は深淵の闇と同様、何も見えなくさせてしまうのだ。これはカッペリの"カルーゲの失態"を見逃した要因となる。
「ふーっ……。」とカッペリは安堵の息を吹く。魔法学校初等部の児童でも簡単にこなせる芸当とも呼べぬ技術ではあったが、事態が事態なだけに極度のプレッシャーを感じていた。
「はあ……緊張したわ……」
手を降ろし肩の力を抜いた。そのまま視線を左へ向けた瞬間、左右多へ向かう魔弾が視界に入った。
「えっ……」とカッペリは声を漏らしたものの、長年の経験により無意識で全身を尖らせて臨戦態勢をとったが、防御よりの予備態勢だっただけに、次の動作を静止させることとなり、つまり完全に動けなかった。
「ドンッ!」と強い音とともに土煙が舞う。左右多の姿が見えなくなった。




