第一話 赤は止まれ
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今日もまた授業が終わり、放課後何をすることもなく家に帰ることを、わざわざ説明する必要もないだろう。
退屈。で、何もない。通学路の途中で食パンを咥えた美少女にぶつかるわけもなく。市民を襲う怪人に、ヒーローたらしめる必殺技で退治する展開などあるはずがない。だから明日も明後日もその先も、この平坦な道を行き来するのだろう。
しかしふと、いつだっただろうか、この退屈な線上に新たなルールが生まれた。しかし歩道の白いとこだけ歩くとか、石ころを蹴り転がしながら帰るとかそんなもんじゃない。
「赤は止まれ」
当然、いや案外、しかしリチギにそれを守る奴などいないのだ。後に続くカップルよ、横に並んで歩道を塞ぐ大名行列女どもよ!お前らはいったい何度の信号無視をした!これから何度――
おっと……あれは?
そう、信号機である。
カップル!女ァ!どうだ俺を見ろ!赤信号で止まるこの俺を!
……ん、青か。
やれやれ、全く。だから俺はいの一番に踏み出した。せめて先頭を歩く姿だけでも見せたかった。だが横断歩道の中央に差し掛かったとき異変に気づく。気づいてしまう。気づいてしまった。振り向けば、そろって驚く女どもの顔、そして手をつないだまま微動だにしないカップル。それは横断歩道を渡っているのは――俺しかいないのだ。
おい!お前らの望んでいた青信号だぞ!?いつだって……赤信号でも渡ってたじゃないか!?
……おかしい、何かがおかしい。いやおかしいのは、俺?
背中がゾクゾクと、額には汗滲む。首をゆっくりと振り返り……そうすると信号機は赤だった。
「赤は止まれ」
なっ、なぜ……!俺は人生で一度たりとも信号無視はしなかった……!何故なら信号無視とはまさに死の受容!車に轢かれて死んでもよいという宣言に他ならない!!!
「赤は止まれ」
やがてアスファルトの黒い斑は。アスファルト上の白いストライプは。そして青い空は、黄色い太陽さえも、唐突に赤で塗り代えられたのだった。




