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上機嫌

エルクはアンリをそっと抱き寄せ、


「アンリには感謝しているよ。当初の目的だった魔力も、一気に目標以上に上げる事が出来た。既に旅の目的は達成したと言っても過言ではない」


アンリがふふっと笑い、


「エルク様、気が早いですよ。まだ魔力は足りません。これでは統一なんて出来ませんよ」


本当に可愛く笑う、エルクはそう思う。

それにしても・・・統一?


「魔界の統一・・・そんな大それた望みは持っていないよ。・・・申し訳ないけどね」


魔界の首都ミーミル。

都市の規模は巨大、多種族により構成され、軍備も強い。

そして何より・・・過去より受け継がれる眷属達が封じられた、霊廟。

まさに難攻不落の名に相応しい都市だ。


聖戦が始まった際、魔界から魔王が選出されるが・・・慣例として、ミーミルの王が魔王の座に着いている。

それは当然の事だ。


アンリは、きょとん、として言う。


「エルク様何を言っておられるのですか?魔界ではなく、大陸の統一ですよ?」


「ぶっ」


エルクは思わず目を見開く。

アンリは何を言っているのだ・・・?


「大陸って・・・今の魔界と聖界の戦力バランスは知っているだろう?」


魔界と聖界の争いは、柱の奪い合い、である。

14本ある柱を、それぞれが制すれば・・・それぞれが奉ずる神の支配柱となり、その民は恩恵を得る。

そしてその支配する柱の数は・・・魔界が2に対し、聖界が12。

もうこうなっては、逆転とかそういうレベルではない。

後何回の聖戦を、魔界が持ちこたえるか、そういう話である。

幸い、魔都ミーミルは強固だ。

また、今期の魔王候補、ミーミルの王フェオドールは強い。

今回の聖戦で落とされる事はないだろう。

そして、ミーミルが落とされない限り、ファーイーストは安泰なのだ。


「やー、意外といけますよ?」


自信たっぷりに言うアンリ。

それだけ自分が信頼されているという事だろうか。


アンリを強く抱き寄せる。


「有り難う、信頼を寄せてくれるのは嬉しいよ」


現実はどうであれ、悪い気はしない。

エルクはアンリにそっと唇を重ねた。


****


朝。

目を開けると、アンリがじっとエルクの顔を見ていた。

アンリがすっと笑顔になる。


「おはよう、アンリ」


エルクはアンリに軽くキスをすると、朝の支度を始める。


「今日は一気に山を降りてしまうよ」


「はい、エルク様」


アンリが笑みを浮かべて答える。

今朝は昨日と違って機嫌がいいなあ、とエルクは思う。


軽く朝食を済ませると、やや早足で行軍を開始した。

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