普通でいいんだ、普通で
「それが、聖女を愛奴状態で眷属にしているとばれたら、確実に魔王の座が回ってくる。そもそも、聖女が自分の意思で魔族に身を委ねるのはあり得ないからな・・・過去魔族が聖女を眷属にした例はあるが、例外なく、聖女自身の心が完全に壊れ、それでも魂は支配を拒否して・・・恐らく、本来の10%~5%程の力しか使えてなかった筈だ。愛奴状態の眷属は、100%を超える・・・闇の力との相性や、主人への忠誠によっては、数百%になると計算している・・・」
エルクはパラスの肩を掴むと、
「いいか、絶対に聖女ってばれるんじゃないぞ・・・格好悪い事を言うようだが、俺は静かに暮らしたいんだ」
「はい、私も戦いは苦手です!ばれないようにします!」
ぴしっ、と手を挙げて言うパラスの頭を、エルクは優しく撫でてやる。
そっとアンリを抱き寄せ、
「アンリもだ。聖獣・・・特にスフィンクスだという事は、絶対にばれないようにして欲しい」
「はい、エルク様」
アンリがにっこり微笑む。
エルクが言う。
「大丈夫・・・まだ聖獣が1人に、聖女が1人・・・まだ大丈夫・・・」
無茶を自覚しながらも、自分に言い聞かせるエルク。
ふと気付くと、セリアが汗を流し、目が泳いでいる。
成る程、眷属の内2人が特別な存在なので焦りを覚えたという事か。
エルクはセリアを抱き寄せると、
「大丈夫、セリア。お前は俺の癒しだ。普通でいいんだ、普通で。それにセリアも十分凄いんだぞ?魔力は上質で、量が多い・・・そう、聖女であるパラス程ではないが、アンリよりも遥かに多いんだ。これは凄い事だよ」
「は・・・はい・・・」
流石に血の美味しさの優劣云々は、言うのを控えておく。
繊細な問題だしな。
それに、美味しさのベクトルが違うから、3人とも美味しいのだ。
「闇の剣?を無数に産み出して飛ばす・・・もしくは直接切る・・・威力も、その体裁きもかなりのものだ。セリアも頼りにしているからな」
「はい!」
やや目を反らしながら、でも嬉しそうに言うセリア。
「ところで、パラス」
「はい?」
「盾の聖女の力ってどれだけのものなんだ?」
「えっと・・・それなりに強い力でも、弾ける盾を作り出せます。かなり微妙な能力です」
そっかあ、微妙かあ。
まあ魔力量は凄いし、役には立つ。
「あと・・・体の治癒能力が高いのと・・・後、闇の力のお陰で浮遊能力を得ました。魔力も増えたので、盾もいっぱい使えるようになりました」
「浮遊能力・・・魔法が使えない身なら有用かもしれないな」
パラスの頭を撫でてやる。
「血が多いのも、魔力が多いのも、吸血鬼である俺にとっては素晴らしい特徴だ。パラス、お前がいてくれて凄く助かるよ」
「はい・・・有り難う、ございます!」
パラスは嬉しそうに微笑んだ。




