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目覚め

「エルク、エルク、起きて」


透き通る様な声が、エルクを眠りから覚醒させる。

横にいるのは蜂蜜のような美しい色の髪をした女性。

長い髪が、肌にかかって芸術作品が動き出したかのようだ。


「おはようジャンヌ」


エルクは軽く口づけをすると、ジャンヌも目を閉じ、受け入れる。

エルクは吸血鬼だ。

その姿は一般的な吸血鬼のそれで、銀髪の長髪、人族の平均よりは優れた美貌。


「起こしてくれて有り難う」


エルクは、今日から重要な旅に出る。

自らの眷属捜しという旅。

吸血鬼にとって、眷属とは、妻にあたる存在。

吸血鬼の王たるエルクの妻と言えば、この国の王妃にあたるのだ。


「エルク、今日から旅立つんだよね?」


ジャンヌが不満そうに言う。


「そう不満そうにするな、ジャンヌ。お前の事は重要な友人だ。それはこれからも変わらない」


エルクは、ジャンヌの首筋に顔を近づけ、囁く。

ジャンヌは、頬を膨らませ、


「眷属なら私がなってあげるよ」


エルクはジャンヌの口をぐいーっと伸ばし。


「それは魅力的な提案だが、いくら吸血しても眷属化しない、その特異体質をどうにかしてからだな」


「うー!私は悪くないもん!」


エルクは、ジャンヌに不満がある訳ではない。

血の美味しさ、一時的に得られる力、容姿、性格、知性、戦闘能力・・・そして夜の事。

更には幼馴染みでもある。

是非とも眷属に加えたい存在ではあるのだが・・・残念ながら、幾ら吸血しても吸血鬼化しないという致命的な特異体質を持っていた。

眷属にしたくてもできないのだ。

眷属化していないので、吸血により得られた力も、急速に抜けてしまう。


「すまないなジャンヌ、俺は行くよ」


エルクは再度軽くキスをすると、衣服を整え、ジャンヌを伴って食堂へと向かった。


--


食堂では、妹のリアが朝食の準備をしていた。

リアは、金髪に、吸血鬼らしい真紅で、しかし吸血鬼らしからぬ優しい目つきだ。

本来は侍従にやらせれば良いのだが、リアはエルクの世話をするのが好きなのだ。

侍従から仕事を奪ってしまう。


「お兄様、おはよう御座います。今朝のお目覚めは如何でしょうか?」


「おはよう、リア。いい気分だ。気力も充実している」


「お兄様がおられないのは寂しいですが・・・ジャンヌと共に、お兄様の留守は守って見せます」


リアが微笑む。

リアは強い。

歴代の吸血鬼の中でも最強だとエルクは思っている。

絶大な魔力、絶大な魔法構成力、体術もエルクでは全く敵わない。

リアが王の座に着いていないのは、自分は兄を補佐する存在、と決めているからだ。

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