ユーナの吸血衝動
「じゃあ、明日からまた塔の攻略を進めよう。今日結構お金使っちゃったから、明日は頑張らないとね。みんな、それぞれ自分の個室を選んでね。たぶん数は足りると思うけど。」
美湖はみんなに告げ、自分も個室を選びに行く。美湖が選んだのは、家の裏手の真ん中くらいの個室だった。荷物を置いて少しリラックスをしていると、ドアがノックされて、
「ご主人様、少し買い物に行きませんか?今日のご飯の材料がないので。」
ユーナが買い物を提案してきた。特に用事もないため、
「いいよー。少し待っててね。」
装備を身に着けて、部屋を出る。そこには、同じように装備を身につけたユーナがいた。
「お待たせ、ユーナちゃん。それじゃ、行こっか。」
ユーナを連れて、美湖は街に繰り出した。
町の市場に来た美湖たちは、最初に野菜売り場を見て回っていた。
「ねぇ、ユーナちゃん、どんなのが食べたいの?」
「そうですね。私としては、今まではずっと食堂だったので、やはりバランスのとれた食事をしたいと思ってます。ありささんや、スーリンさんもスキル持ちですし、おいしいだろうなと。」
「そうだねぇ。あ、レスタ売ってる。すいませんレスタ一玉ください。」
「ご主人様、レスタ好きですね。長ラディッシュもありますね。すいません、長ラディッシュも3本ください。」
美湖は、購入した野菜を魔札に封じていく。
「ほんと、ご主人様のスキル便利ですよね。本来なら、奴隷である私が荷物を持つべきなのに。」
「気にしない、気にしない。それに、これに入れておいたほうが鮮度もそのままだしね。」
二人は、そのまま、さらにいくつかの野菜を購入して、肉売り場に移動した。肉売り場では、少し血の匂いがきつかった。
「ここの匂いきついねぇ。ユーナちゃん大丈夫?」
美湖は、花を抑えながらユーナの状態を確認する。すると、ユーナは目を見開き、肩で息をしていた。
「ちょっと!ユーナちゃん大丈夫!?」
美湖は、ユーナの肩をゆする。
「すみません、ご主人様。ハァハァ、血の匂いが濃くて、私、もう、我慢が...」
ユーナは、今にでもそこら辺にいる人間に襲い掛かりそうだった。
(っ、こんなになるまで我慢してたなんて。どこか、人目につかない場所は?)
美湖は、周囲を見渡す。すると、一つの宿屋が目に入った。美湖は構わず、そこにユーナを連れて行き、チェックインする。鍵を借りて、指定された部屋に入ると、その部屋は、ライトがついているが暗めで、どこか妖艶な雰囲気を醸し出していた。
(あれ、ここってそういう宿屋?でも、入っちゃったし、ここでいいか...)
美湖は、本来のこの部屋の使用方法に気づき、しかし、もう戻れないと腹をくくり、装備を解除していく。そして、チュニックとショートパンツになってから、ユーナの装備を外していく。ユーナは、心ここにあらずみたいな状態で、美湖のされるがままになっていた。そして、二人ともラフな格好になったところで、美湖はユーナを抱きかかえ、ベッドに寝かす。そして自分も添い寝するように横に転がる。
「ごめんね、ユーナちゃん、あなたの苦しさに気づいてあげられなくて。今日は好きなだけ吸っていいから...)
美湖はそう言って、自分の首筋をさらけ出す。すると、茫然としていたユーナの目に光がともり、一直線に美湖の首筋に歯を突き立て、薄皮を貫く。
「あっ、ユーナちゃん、いきなり...」
美湖は、勢い良くのしかかってきたユーナに組み伏せられ、マウントを取られる。ユーナは構わず、歯を突き立て、あふれてきた血を吸い始める。
「はぁ、ご主人様の血、おいしい...、もっと吸わせて...」
「いいよ、っ、気が済む、まで、吸って、いいからぁ。」
それから、約半時間、美湖は、ユーナに血を吸われ続けた。
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「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい............」
「もういいって、僕のほうこそ、気づいてあげられなくて、ごめんね。」
あれから、正気を取り戻したユーナは、ひっきりなしに美湖に謝罪の言葉をかけている。
「しかし、あんなふうに、ご主人様に襲い掛かったような形になってしまって。」
「大丈夫、奴隷契約の力が働いてないでしょ?それは、ユーナちゃんが、心の底では、僕のことを考えてくれてたんだと思うよ。それだけでうれしいから。」
美湖は、ユーナを抱きしめ、頭をなでながら、やさしく語り掛ける。3コンボがクリティカルヒットしたのか、ユーナはついに、大粒の涙を流して泣き始めてしまった。ユーナが泣き止むまで、美湖はその小さな体を抱きしめていた。
ユーナが落ち着いたので、宿代を支払い町に戻る。再び市場の肉売り場に戻るが、今度はユーナが暴走しそうになるようなことはなかった。
「どう、ユーナちゃん、体に異常はない?」
「はい、問題ありません。やはり、しばらく血をいただいてなかったのがいけなかったのだと思います。」
「そうだね。今度から、休みの日は吸血をするようにしよう。そうすれば、こんなことは起こらないだろうしね。」
美湖とユーナは、軽く話しながら、食材を買っていく。
結果、二人が買った食材はこのようになった。
・レスタ×4玉(レタスのような葉菜類)
・長ラディッシュ×5本(大根のような根菜類)
・テポトン×20個(ジャガイモのような根菜類)
・イコア×40個(トマトのような果菜類)
・コケのもも肉×5キロ
・フレンジカウの腸×3キロ
・フレンジカウの舌×100グラム
・麦パン×50個
となった。代金は、合計金貨5枚となった。
「いや~たくさん買うから安くしてって、案外通用するもんだね。」
「いや、あれは、ご主人様の胸に目が串刺しでしたよ?ほんとに男は汚らわしいです。」
どうやら、美湖は無意識にセクハラされていたようだった。
屋敷に帰ると、スーリンが畑に水を撒いていた。どうやら、ルプアの実の植え付けが終わったようだった。
「ただいま~、スーリンちゃん、畑のほうはどう?」
「おかえりなさいぃ、はいぃ、何とか植え付けはできました。あとは、精霊さんたちとぉ、少しずつ土壌をよくしていきますぅ。」
「よろしくね。みんなは中にいるのかな?」
「はいぃ、おそらく、それぞれ使わない個室や寝室の掃除をしていると思いますぅ。」
「そっか、なら、いったん手を止めて食事にしよう。食材も買ってきたから、みんなで料理をしよっか。スーリンちゃんも中においで。」
美湖は、スーリンもつれて家に入る。すると、リビングに、エイルとエリザがいた。
「ただいま。二人は何してるの?」
「おかえりなさい。今、この屋敷に張る結界の構想を練ってましたの。やはり、魔力の維持させるのが一番の問題でして。」
「うむ、大きめの魔石がいくつかあれば、そこから魔力を供給する術式があるので、何とかなるのだがな。」
二人は、結界のことを考えてくれていたらしい。美湖は一枚の魔札を解放し、
「それなら、これ使えるんじゃない?14階層の階層主の魔石。あそこは、大型が出なかったけど、その分、中型の魔物が複数出てきたじゃない。その時のなんだけど。」
美湖が見せた魔石は、美湖が両手で持たないといけないくらいの大きさだった。それを見たエイルは、
「それがあれば、十分だ。あとは、寝る前なんかに、このパーティー総出で、魔力を補充してやればよい。それに、明日からまた塔に登るのであれば、そこで魔石が手に入る。結界のことはこれで解決したな、エリザ殿。」
「そうですわね、エイルさん。美湖さん、その魔石いただいてもよろしいですか?」
「うん、いいよ。あとで渡すね。それより、みんな呼んできてもらえる?今から夕ご飯作るから、みんなで作ろう。」
「それはいいですわね。お任せなさい。呼んでまいりますわ。」
エリザは、みんなを呼ぶためにリビングを出て行った。
「さて、僕たちも料理の準備をしましょうか。」
美湖は買ってきた食材を、キッチンに運び込んだ。




