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少女たちの異世界漂流記~美湖の冒険~  作者: コウタ
聖なる闇
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闇の従者

 美湖が抱え上げたダークエルフは、気を失っているようだった。しかし、街の人たちは、そのダークエルフに対して、少し驚いているようだったが、誰一人助けに入ろうとはしなかった。


「どうして、こんなところにダークエルフがいるんだ?」


「教会が、ついに動き出したのか?」

 

「しかし、美人だな。どこの奴隷なんだろうな?」


 どうやら、ダークエルフは教会にかかわっているようだった。しかし、このままではこのダークエルフの女性がどうなるかわからないため、美湖は彼女を背負いをいつも宿泊している宿『安らぎの風亭』に運んでいく。安らぎの風に着くと、一人の少女が出迎えてくれた。煌くプラチナブロンドのセミロングの髪、小柄な体つきに似合う、幼げな顔立ち、大きくつぶらな瞳は優しい薄緑をしている。この宿の一人娘、ソクラ・クエイテールが。


「おかえりなさい。皆さん。あれ、美湖さん、そちらの方は?」


 ソクラが、美湖が背負っている人物に興味を示す。


「ああ、さっき、道のど真ん中で倒れてたんだよ。どうやら、ダークエルフらしいんだけど、気を失ってるみたいだったから介抱しようと思って。」


「ああ、そうなんですね...って、ダークエルフ!!?だめですよ!教会が来ちゃう!!宿に入れることはできません!!!」


 ソクラが、すごく慌てだす。


「...ソクラさん、少し部屋で話を聞かせてください。みんな、部屋に戻るよ。」


 美湖が、珍しく真剣な声を出すので、ソクラは目を見開いているが、ユーナやユリカたちは少し怯えていた。美湖は、ぐずるソクラを含む全員を連れて部屋い戻った。ダークエルフの女性をベッドに寝かせ、ほかのみんなを適当にくつろがせる。


「さて、みんな。僕は教会についてよく知らない。だから、教えてほしい。どうして町の人たちは、この人を助けなかったの?どうしてソクラさんは、さっきあれだけ慌ててたの?」


 美湖が、誰ともなく質問する。しかし、誰も話し出そうとしない。煮え切らない状態に、イライラが募った美湖は、ユーナに命令を使う。


「ユーナちゃん、許してね。『ユーナちゃん、さっきの質問に答えて』。」


 美湖の命令により、ユーナは少し苦しそうにしながら答えだした。


「ぐっ、どうして町の人たちが彼女を避けていたのは、ダークエルフが教会の敵の一つだからです。ダークエルフは、エルフが闇に堕ちた種族とされており、教会では、優先抹殺対象となってるんです。また、ダークエルフをかくまったり、助けたものも、最悪、闇の手先として殺される場合があります。ですので、街の人たちは彼女を助けなかったし、先ほどの、ソクラさんの慌てようも、そのためです。」


 質問に答えたユーナは、美湖の命令が終わったので、苦しさから解放された。肩で息をしている。美湖はそのユーナをやさしく抱きしめ労う。ユーナも、辛そうだった顔がリラックスしている。


「なるほどね。ありがとう、ユーナちゃん。苦しい思いさせて、ごめんね。でも、本当のことを教えてくれないかな?ダークエルフは本当に邪悪な存在なの?」


「いえ、そんなことはありません。あくまで種族の一つです。同じような容姿をしているもう一つの種族、エルフ族がいることと、闇魔法に適性があること、エルフが森林にすんでいるのに対して、洞窟や、廃城を主に住処にすることから、エルフが闇に堕ちた存在だと、教会は決めつけているようです。また、前の戦争でダンピール族や、魔族側に着いたことも、その要因となっているようです。」


 ユーナは、もうためらいがないのか、美湖の質問に答えていく。しかし、ユーナの答えを聞くにつれ、美湖の表情は厳しくなっていく。まるで、触れたら即殺されそうな、そんな雰囲気を醸し出している。その様に、ソクラを含む全員が戦慄する。その状態に気付いたのか、美湖は殺気を消して、柔らかい表情に戻る。


「なるほど、ありがとう、みんな。怖がらせてごめんね?」


「いえ、ご主人様の性格を考えれば、その反応は想定内です。それで、どうするのですか?」


 ユーナは、美湖に問う。


「もちろん、この子をかくまうよ。前に、ユーナちゃんのことが周囲にばれれば教会に狙われることになるかもって、言われてたし、同じことでしょ。」


 そういって、自分の装備を外していく。それに倣い、ほかのメンバーも装備を外していく。ユーナ、アリサ、スーリン、ユリカ、レイク、エリザは、美湖の性格を知っているので、その反応は想定内だったらしく、特に突っ込むこともなく装備を外していく。しかし、


「だめですよ。ミコさん。私は反対です。ダークエルフをかくまうこと自体は、本当は美湖さんたちに賛成です。悪い人とは思いませんし、教会が無理を言ってるとは理解しています。しかし、教会は強大です。すみませんが、その人をかくまうなら、近いうつに出て行ってもらわないといけなくなります。」


 ソクラは、悲しそうな、それでもしっかりと美湖の目を見て話した。その言葉を聞いて、美湖は、


「ソクラさん。あなたの言うこともわかる。それに、僕のわがままだしね。探索者なら、クランさえあれば何とか生活できるけど、あなたたちはそうはいかないしね。大きな組織を敵に回したくないのはわかるよ。ごめんね、言いたくないことだと思うし、つらいことだよね。大丈夫、ソクラさんたちには、迷惑をかけないようにするから。」


 美湖は、ソクラの頭に手をのせる。すると、ソクラは、涙を浮かべ、


「うッ、うっ、ごめんなざい、ミゴさん、ほんとにごめんなざい。こんなこといいだくないのに...」


 ソクラは泣き出してしまった。美湖たちは何も言わずにソクラを見守っていた。


 ソクラが落ち着き、宿の仕事に戻っていく。それを見送り、再度、全員で話あう。


「さて、ソクラさんも言っていたけど、このままでは、この宿に迷惑がかかるかもしれない。できるだけ早く、この宿を出ていこう。幸い、今回の探索でパーティーの資金が1、000,000ルクスたまったし、この町に、自分たちの家を持とうと思う。そうすれば、この宿や、施設に迷惑がかかることはないと思うし、ここより秘密なんかを隠しやすいだろうしね。」


「いいですね。私は賛成です。ご主人様。」


「私も賛成だ。ご主人様。私は、あんたについていくよ。」


「私も賛成ですぅ。私たち奴隷組は教会に見つかったら危険ですしぃ。」


「私もいいよ。正直、教会は敵にしたくないけど、美湖が決めた道をついてくよ。」


「私も。美湖のような考えが、大事な気がするわ。最近、教会の方向性はやり過ぎだと思うし。」


「わたくしも賛成ですわ。美湖が信じた道は正しいですわ。」


 全員が、美湖に賛成した。その瞳には躊躇の色がなかったので、美湖は安堵のため息をつき、


「皆ありがとう。じゃあ、明日、不動産屋に行こう。そこで、家を探そう。さて、じゃあ、ご飯食べに行こうか?」


 そう言って、話をまとめ、美湖はみんなが外した装備を札に封じていき、ダークエルフの女性も札に封じて部屋を出る。そして、宿の隣に併設されている食堂に移動した。


 食堂の扉を開けると、いつものように、きついアルコールの匂いが彼女たちの鼻を襲うが、もう、何回も嗅いでいるので、美湖も慣れてしまいそのまま、ひとつの大きな机を独占する。


「さて、もう何度も食べてるけど、やっぱりフレンジカウのステーキとサラダにしよう。みんなも頼んでね。」


 美湖が、すぐにメニューを決める。そして、ほかのメンバーもメニューを決めていく。従業員が、メニューを聞き取り、しばらくすると、みんなの前に、出来立ての料理が並んだ。


「よ~し、みんな食べるよ。手を合わせて、頂きます!」


「「「「「「いただきます!」」」」」」


 美湖のあいさつを復唱し、今日も、彼女たちの食事が始まった。





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