気になる情勢
今回から、第2章のスタートです。
第2章から、一羽の文字数が倍近くになっていますのでよろしくお願いします。
美湖たちが、第1階層の階層主、ビーエンプレスを倒してから1カ月が経過していた。その間に、美湖たちは、ウーサーメイジョアーの塔を15階層まで突破していた。また、ウーサーメイジョアーの塔は25階層まで確認されていた。第1階層のビーエンプレス以降各階層主の出現に異常はなく、その階層で、今まで出てきていた情報どうりの階層主が出現していた。また、美湖たち7人はDランクにランクアップしていた。
今日も、美湖たち7人はウーサーメイジョアーの塔に入っていた。第10階層の探索を終了させ、1日の結果の報告を、アリアにしていた。
「はい、今日の素材買取の報酬として、25000ルクスです。ご確認ください。」
ピンク色の肩甲骨まである髪の毛を二括りにしている、少し幼げな整った顔をした美湖の専属受付嬢、『アリア・スカーレット』はカウンターに、素材の買取金額25000ルクス、金貨2枚銀貨50枚を積み上げる。
「ありがとうございます。」
赤い髪をハーフアップにしている少女、赤色と青色のオッドアイ、整った目鼻だち、引き締まった体だが、出るところは出ている体つきをした少女、『従 美湖』は、彼女のスキル『封札』により、アリアに差し出された硬貨を封じていく。そして札に表示された数値により数を確認する。
「確かに、受け取りました。ところで、アリアさん。今日の帰りに、塔の中でルプアの実を収穫してきたんですけど、食べますか?」
美湖は、1枚の魔札を取り出しアリアに見せる。
「いいんですか?なら、アヤメ支部長の部屋に行きましょう。そこで、みんなで食べましょう。」
アリアに連れられ、美湖たちは探索者クランの支部長の部屋にむかう。ノックをして部屋にはいる。そこには、腰まで伸ばした、艶のある黒髪、背はすらっとして高く、それでいて女性らしい体つき、顔はきつそうで、厳しそうなクールな雰囲気を醸し出している、クランをまとめる支部長、アヤメ・ころミアが待っていた。
「おう、美湖たちか。探索お疲れさん。今日はどうしたんだ?」
「こんにちは、アヤメ支部長。今日の探索の帰りに、ルプアの実を収穫してきたのでおすそ分けしようと思いまして。」
「おお、ルプアの実か。久しく食べてないな。ごちそうになろう。」
アヤメは、部屋にある机の上の書類を片付け、皿を出して並べていく。美湖はユーナにルプアの実を渡す。
赤いショートカットに、赤い瞳。低い身長にボンっ、キュッ、ボンッの体つきの少女『ユーナ』は、腰にさしてある、『黒銀の短剣』を抜き、一口サイズにルプアの実を切り分けていく。それを、皿に盛りつけていく。
「さ、どうぞお召し上がりください。」
ユーナが、盛り付け終わり、美湖が食べるように勧める。しかし、一番最初に食べ始めたのは、アヤメやアリアではなかった。
「ふぁ~、おいしいですぅ。」
濃いダークグリーンの腰まであるロングヘア―、少し薄めの緑色の瞳、緩やかなローブの上からでもわかるほどに膨らんだ胸を揺らしながら、スーリンはルプアの実を口に運ぶ。
「って、スーリンちゃん。なに、あなたが一番乗りで食べてるの!?アヤメさんとアリアさんにって持ってきたのに。」
「気にするな、美湖。いつものことだろ。もう、慣れたよ。」
アヤメは笑いながら美湖に言う。そして、ほかの面々も、ユーナが切り分けたルプアの実を食べていく。ルプアの実を食べながら、アヤメは口を開く。
「そういえば、美湖。お前これからどうするんだ?お前の目標は、世界中の神の塔を攻略することだろ?まだまだ、ウーサーメイジョアーの塔も攻略は終わってないが、いい感じに攻略できているし。あまり、言いたくはないが、ほかの町の塔を攻略する気はないのか?」
アヤメの言葉に、美湖は考え、答える。
「ん~、まだそんな気にはならないですね。僕のレベルもまだ30超えてないですし、まだまだ、駆け出しレベルです。その状態で、ほかの町の塔に上っても、中途半端な結果になりそうなので。なら、ひとつずつ、確実に攻略していこうと思います。ですので、まだ、ほかの町に移る気はないですよ。」
その美湖の言葉に、アヤメとアリアは安堵した表情になった。だが、アヤメはすぐに真剣な顔になり、
「しかし、気をつけろ。最近、教会が活発になっているらしい。どうやら、頭が変わったらしく、今までの保守的な考えではなく、積極的に人間以外を排斥していこうという感じらしい。ユーナ、アリサ、スーリンは、ドイツも、教会にばれたら、おそらくとらえられ、拷問の末殺されるだろう。気をつけろよ。この町にはまだ来ていないようだが、私も、カルアに伝え、どうにか乗り切ろうと考えている。」
アヤメの言葉を聞き、美湖の表情がきつくなっていく。アヤメ以外の全員がその殺気に気おされ顔を青くしている。
「へぇ、そんなことをする奴らがいるんだぁ。もし、僕の前に現れたら、僕の仲間たちを傷つけるのなら、容赦しないから大丈夫じゃないかな。」
「ったく、美湖。殺気を消せ、ほかの奴らが気絶しそうだぞ。」
アヤメに言われ、美湖は殺気を納める。ユーナたち、アリア、ユリカたちは肩で息をしている。
「ごめんね、みんな。大丈夫だった?」
「まったく、あなたという人は、加減をしてください。あと少しで、気を失うところでしたよ。」
アリアは、美湖に悪態をつく。美湖は舌を出し、おどけて見せた。
「まぁ、もし何かあれば伝えるようにする。とにかく気を付けるんだな。美湖の奴隷だから、ある程度は探索者クランも助けられるが、気を付けてくれよ。」
アヤメに言われ、美湖はゆっくりとしかし確実にうなずく。そして、ユーナ、アリサ、スーリン、ユリカ、レイク、エリザを連れて、支部長の部屋を出ていく。
「ご主人様、これからどうするのですか?」
「一度、カルアさんのところに行こうと思う。今後の話をしておきたい。」
クラン支部を出て、その裏手にある奴隷商『スレイブ』に向かう。スレイブにつき、店の外にいた従業員に、カルアと話があるというと、カルアがすぐに出てきた。そして、応対室に案内された。
「いらっしゃいませ、美湖さんとそのお連れの方々。今日はどのような用件で?」
「はい、今日は、少し話がありまして来ました。カルアさん。アヤメさんから聞きました。教会の動きが活発になっているとのことですが、もし、教会が来たら、人間以外の奴隷たちはどうするのか聞きたくて来ました。」
「ああ、その話ですか。もちろん、どうもしませんよ。こういうと美湖さんは怒るかもしれませんが、私も商人です。教会だろうが何だろうが、しっかり金銭さえ支払えば、販売は行います。しかし、理不尽に差し出せというのであれば、もちろん断固反対します。教会は確かに強大な組織ですが、私どもは、商人クランに属しておりますし、クランは王国、ひいては王族に認められている組織です。教会もそこまで大きくは出れないはずです。なので、あまり心配などはしておりません。」
カルアは、しっかりと言い切る。その様子を見て、美湖はため息をつく。
「わかりました。それなら、問題なさそうですね。僕もできるだけお金をためて、保護できるようにしようと思います。協力してくださいね。」
美湖は、カルアに言い、スレイブを出る。美湖は、6人を連れて、いつも宿泊している宿屋『安らぎの風亭』にむかう。
帰り道に、なにか人だかりができていた。興味がわき、人込みをかき分けその中心に行くと、一人の女性が倒れていた。美湖は、すぐにその女性を抱き上げる。息はしていたが、その容姿に美湖は驚いていた。褐色の肌に、煌く銀髪、整った顔立ち。大きく実った胸、ほっそりとした腰、すらっとした綺麗な足。そして、一番目を引いたのが、長くとがった耳だった。そう、倒れていた女性は、ダークエルフと呼ばれる種族だった。