街の散策
街へと繰り出した美湖は、街のあらゆる建物を見て回っていた。通行人が美湖を気にするそぶりはないため、はたから見ても、この世界の住人と思われているようだ。美湖はまず、服屋をのぞいてみた。やはり、文化的には種類が少なく色の地味なものが多かった。
「やっぱり、地味だけど、これはこれで味があるよね。まぁ、今日は買わないけど。」
と、冷やかして店を出た。店から出ていく美湖を見て、店主の顔がムスッとしていた。
「店員さんには悪いけど、男性の店で服買うとか、僕にはハードル高いしなぁ」
そんな美湖のつぶやきは、誰にも聞こえなかった。
服屋を出た美湖が、次に向かったのは雑貨屋だった。この世界の雑貨屋では、日用品のほかに、ポーションと呼ばれる、いわゆる傷薬を扱う店らしい。雑貨屋の店員が女性だったため、美湖はしばらく店内を見て回っていた。
「お客様、何かお探しですか?」
店員が話かけてきた。おそらく長い時間店内にいた美湖を訝しんだんだろう。
「いえ、こういうお店に入るのは初めてでして、私、この町で、探索者になろうと思うのですが、何か買っておいたほうがいいものとかありますか?」
「そうですね、見たところ、手持ちの荷物もほとんどなさそうなので、探索者になるのでしたら、小ぶりのナイフ数本に、安いものでも、ポーションを数本は持っていたほうがいいかもしれませんね。この店にはおいてませんが、寝袋や、魔物除けの香炉もあったほうがいいと思いますよ。」
値札を見てみると、ナイフが一本50ルクス、ランク1のポーションが一本30ルクスとなっている。
「すみません、1ルクスはどうか1枚であってますよね?」
「?はい、そうですよ。」
店員は、不思議そうな顔をしながら答えてくれた。まぁ、通貨の単位を知らないもののほうがおかしいからだろうが。
「なら、ナイフを5本と、ランク1ポーションを10本ください。」
そういって、同のカードの中から銀貨の入っているカードを取り出し、スキルを使い銀貨を6枚出した。それを見ていた店員は驚き、
「すごいスキルですね。カードに物をしまうスキルですか?」
「ええまぁ、できれば他言無用でお願いしますよ。これ代金です。」
美湖は、銀貨を差し出す。店員がおつりとして銅貨を出そうとしたところで、
「おつり入りません。僕に、アドバイスをくれたお礼として。」
「...いいんですか?」
「はい。店員さんも優しくて、この店が気に入りました。また来ますので、その時にまた、少しひいきにしてください。」
そういって、店を出た。
雑貨屋を出た美湖は、クラン支部に行くことにした。道を歩いていくと、30分くらいで、大きな白い石造りの建物が見えてきた。
「あれが、クランの建物かぁ。おっきいな~。」
美湖は、クラン支部に近づく。周囲には、武具で装備した人たちが多くいた。また、商人のような人々、騎士のような人々がそれぞれ違う入り口にむかって列を作っていた。
「職業によって、入り口が違うのかな?」
美湖は、近くにいた、商人風の女性に声をかけてみた。