初めての町
美湖は、壁の切れ目、人の集まっているところにたどり着いた。そこでは人か3列になって、町への入町審査を待っていた。美湖もそれにならって再後尾に並んだ。周りを見てみると、耳が長く尖った人や、動物の耳や尾が生えている人たちもいた。そのまま並んでいると、いよいよ美湖の順番がやって来た。美湖の受付は、若い男性だった。
「はい次の方。ようこそ、ラティアの町へ。この町への目的はなんですか?」
「この町で、探索者に登録しようと思い来ました。」
「わかりました。クラン証等もありませんね。」
クラン証とは、ストライド全域に支店を持つクランと呼ばれる、現代で言うところの職業斡旋所のような組織であるが、この世界に来たばかりの美湖にはわからないことである。
「それはどうしても必要ですか?」
美湖は、相手が男性と言うこともあり、警戒しながら問うてみる。男性は、
「いえ、大丈夫なんですが、あちらの部屋の方で、犯罪履歴の確認をさせていただきます。履歴の確認がとれ、町に入っても問題なければ滞在証を発行します。それがあれば1ヶ月は滞在が可能となります。銅貨5枚が手数料としてかかりますが。」
「わかりました。審査を受けます。しかし、1つお願いかあります。僕は昔のトラウマで男性が逃手です。なので、審査の方は女性をお願いします。」
「かしこまりました。代わりを呼びますのでお待ち下さい。」
そう言って、男性職員は走っていった。1分もしない内に代わりの女性従業員を連れて戻ってきた。
「お待たせしました。こちらの者がご案内いたします。ではこちらの方の対応して下さい。」
男性職員は、女性職員に美湖の対応を引き継いだ。女性職員は
「わかりました。では旅の方、こちらへお願いします。」
と、美湖を連れて別の部屋へ入っていく。その部屋には、ひとつの机と二つの椅子。そして机の上に、蒼い水晶玉がある4畳程の部屋だった。
「ではそちらにおかけ下さい。それではその水晶玉に手をかざして下さい。」
美湖は言われた通りに手をかざした。水晶が光った。
「...はい、大丈夫ですね。それではこのカードをお持ち下さい。このカードをお持ちください。このカードがあれば、向こう1ヶ月、この町での活動が可能となります。しかし、今後、ほかの町や村でも活動されるおつもりであれば、クランに所属して、クラン証を持つことをお勧めします。」
女性職員の、説明を受け美湖は町に入ることができた。町並みは、中世ヨーロッパのような石造りに、道端では、ほろを張り露天商をしている人もいた。美湖は、お上りさんよろしく街を見て回った。道端で露店をしていた、女性が営んでいる串焼き屋さんで、鳥のような肉を焼いて刺してあるようなものを二本買い食べてみた。
「おお、おいしいですね、これ!僕こんなの初めて食べました。」
「お、嬢ちゃん、ありがとうよ。コケの肉なんでそんなに上等な肉じゃないが、安さと脂のノリがいいのが売りなんだ。」
「とても、おいしいです。また食べに来ますね。」
「嬢ちゃんは、この町に何をしに来たんだ?」
「特に目的はありませんが、クランに入って探索者になろうと思います。」
「そうか、ならこの通りをとにかくまっすぐ行けば大きな白い石で作られた建物が見えてくる。大きな対になっている戦士の石像と、剣を交差させている横断幕が目印だ。」
露店の主人が、道を教えてくれた。どうやら、世話焼きが好きらしい。
「わかりました。行ってみます。登録できたらまた買いに来ますね。」
美湖は、店主に礼を言うと、言われた方向に向かって歩き出した。