森の中
2017/05/27 ハードレザーシリーズの見た目を追加しました。
「ここが、ストライド?」
美湖が転移した場所は、木々がうっそうと茂る森の中だった。枝葉の隙間からさす木漏れ日が地面を照らしている。生えている植物は、少なくとも日本では見たことないものばかりだった。
「...これは、さすがいないわ。歯の形が真四角なんて。本当に異世界に来たんだ。」
少し歩いていると、藪の方から何かが出てきた。
それは、美湖の腰くらいの背丈で、体色は薄い赤色で、腰には薄汚れた布を巻き付け、顔は鬼のような生き物だった。
美湖はその生き物に対して鑑定スキルを使用する。そこにゴブリンと、そのステータスが表示された。
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NAME ゴブリン
Lv 1
AT 8
DF 9
MA 5
MD 4
SP 10
IN 5
HP 100/100
MP 50/50
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「...あれが、ゴブリン?レベルも1だし戦ってみよう。」
美湖は、鉄の剣を持つと、ゴブリンめがけて走り出した。ゴブリンも美湖に気がついたようで、
「キシャアアアア。」
と威嚇しながら、拳を振り上げ美湖に殴りかかる。しかし、美湖の剣のリーチの方が明らかに長いため、ゴブリンの拳が美湖に届くことはなかった。剣がゴブリンを切り裂き、美湖の初戦闘は一撃のもとに終了したのだった。
「ふぅ、これが戦闘かぁ。案外呆気なかったな。まぁ、相手がレベル1だったし。」
ゴブリンを倒したのに、精神的には何も違和感がないことに疑問を感じつつ、
「これ、封札だっけ。カードに封印するんだよね。...やってみるか、封札!」
一番数の多い銅のカードを使い、美湖はスキルを発動した。すると銅のカードが光り、ゴブリンの死骸を一瞬で吸い込んだように見えた。カードを見ると名前の欄、図柄、説明文が浮き上がり、そこには、
《ゴブリンの死骸・収納数1/20》と書かれていた。
「へ~、これが封札か。案外使えそうな能力じゃん。少なくとも荷物はほとんど要らないね。」
それから、自分の持っていた物の内、カードと剣以外をそれぞれカードに入れてみた。そして、解ったことは、1つのカードに封じることが出来る物は1種類まで収納数は、銅が20、銀が50、金が100だった。
「まぁ、物によって変動するだろうし、とりあえずはこれでいいか。僕の格好もこの世界じゃおかしいかな?着替えておこうかな。」
美湖は女神様から受けとった、レザーシリーズの装備と布の肌着に着替え、着ていた学生服をカードに封じた。女神さまからもらったハードレザーシリーズは、黒い革製で、布製の肌着の上からジャケットを羽織る。胸の部分が広く開いていて恥ずかしかったが、下はホットパンツのような感じで、ほとんど肌着と同じくらいの長さしかなかった。腕は、指の先がない手袋上の物からひじくらいまでの長さがあるもので、足は、ひざ下すぐ位のブーツだった。また、カードに力一ドを封じることはできなかった。
「まぁそうだよね。それが出来たらホントにバグリすぎてるものね。とりあえず人の居るところに行かないと。」
美湖は河を探し始めた。昔読んだ本で遭難したら水場を探すというのが鉄板とのことだったからだ。少し歩くと幅2mくらいの河を見つけた。上流か下流に行くか悩んだが、下流に向かうことにした。途中、数回ゴブリンが襲ってきたが、全て返り討ちにした。
「しかし、ゴブリンだけしか戦ってないからわからないけど、モンスター弱くない?全部一撃だし手応えがないよ。」
下流に進み始めてから30分位したら、大きな壁が見えてきた。大きな石を一定の形に加工したものを積み上げており、その高さは5m程だった。しかもそれは、長く続いているらしく、美湖はそれに沿って歩くが一向に切れ目が見えてこない。
「...どんだけ長いのこの壁は。僕もう疲れたよ。」
と文句をいいながらも歩き続け、1時間歩いた頃切れ目が見え、人がいるのが見えたとき、美湖はほっと胸を撫で下ろした。