第1階層2
「みんな、この階層なら大丈夫そうだよ。これからはみんなも戦闘に参加してね。」
明るく言う美湖だが、ほかの3人表情は硬い。それを不思議に思っていると、
「あのな、ご主人様。本来、コケって魔物は5対1で戦う魔物じゃねぇんだ。私らのような駆け出しはな。だいたいどうして1劇で首が落ちるんだよ。」
「だめよアリサちゃん。多分、ご主人様は同ランクでは歯が立たないくらいのステータスなの。私も一度見せてもらったけど、普通のステータスじゃなかったわ。だから、突っ込んじゃだめよ。」
ユーナとアリサの言葉がやけに胸に刺さる。確かに、美湖のステータスは女神に規格外といわれたくらいのものだ。だが、
「ねぇ、二人して、僕のことを化け物のように言っているように聞こえるのは気のせいかなぁ?」
美湖も、一人の女の子であるので、そのように言われたは腹が立つのも当然であり、その矛先が、言っていた本人たちに向いた。
「いひゃいれる、ろるりんしゃま。おえんなさい。」
「いひゃいいひゃい、らるらった、ごるりんさま。」
二人の頬を思いっきり引っ張った。二人は両眼に涙を浮かべ、許しを乞うていた。少しして、美湖が手を放すと、二人の頬は赤くなっていた。
「まったく、僕だって怒るんだからね。女の子なんだから、化け物扱いしないでよ。」
美湖は少し拗ねていたが、スーリンが持ってきたものを見て驚いていた。
「ご主人様ぁ、コケの素材持ってきましたぁ。」
そこにあったのは、ボブゴブリンと同じくらいの大きさの魔石と、鳥の翼みたいなものだった。
「あれ、スーリンちゃん、ほかの素材は?」
「え、ご主人様ぁ?塔の中では、本来素材は落ちませんよ。ごくたまにこのように魔物の一部がドロップアイテムとして落ちますが、基本は魔石のみですよぉ。」
「そうなの?初めて知った。でも、魔石の購入価格高かったよね。なら問題ないかな。よしっ、みんなで魔物を倒していこう。」
美湖はスーリンが差し出してきた素材と魔石を魔札に封じる。魔札には、『塔コケの魔石(3/20)』、『塔コケの翼(2/20)』と表示される。
美湖は次の魔物を探しに歩きだし、3人もその後に続く。アリサの嗅覚に頼りつつ、1階層を回り続ける。しばらく歩くと、今度はフレンジカウが3頭いた。フレンジカウは、いわば、水牛で、その気性は普段はおとなしいが、敵対するものに対しては容赦なく攻撃する。その武器は、頭に生えている、50センチある一対の角で、それを前に突き出し突進してくる。その攻撃は並みの防具なら貫く威力を持っている。
「ご主人様、次は私が行きます。」
ユーナが腰の剣を抜きフレンジカウにむかっていった。ユーナの接近に気づいたフレンジカウたちは、ユーナに対して威嚇を開始する。ユーナはその威嚇を無視し、一番遠くにいるフレンジカウに飛びかかる。背中に飛び乗り、首筋の動脈と静脈を切断する。斬られたフレンジカウは力なく倒れる。倒れたフレンジカウを足場にして次のフレンジカウにとびかかる。二頭のフレンジカウはユーナにやっと向き直ったばかりで、体勢が立て直せていなかった。二頭目の顔面まで迫り、両方の目に短剣を突き立てた。二頭目は、断末魔の叫びをあげ倒れた。そこに、3頭目が突進してくる。ユーナは、その角を短剣でいなし、その衝撃で距離を取る。そして、
「ダークミスト!!」
闇魔法の目くらまし、ダークミストを使い、3頭目の視界を奪う。3頭目はいきなり視界がなくなり、混乱状態になる。そのすきに、再び背中に飛び乗り、動脈と静脈を切り裂く。そして3頭目のフレンジカウが倒れ、ユーナの圧勝で幕を閉じた。




