アリサの装備
即決した美湖を見て、武器屋の主人はあっけにとられていた。
「いいのかい、あんた。最初のは、どっかの金持ちの道楽かと思ったが、奴隷に、こんな上等な武器を持たせるなんて、普通じゃ考えられないよ。」
「よく言われます。まぁ、一応、彼女たちの主人ですし、死なれたら困りますからね。これくらいの投資は安いものですよ。」
美湖の言葉に、なぜか武器屋の主人は涙を流した。
「まだ、あんたみたいな探索者が残っていたとはな。この町にいる間は武器のメンテナンスはこの店に来い。全部無料でやってやるよ。」
主人のありがたい言葉を聞き、美湖たちは武器屋を後にした。続いたむかったのは、防具屋だった。
「じゃあ、アリサちゃんとスーリンちゃんは、防具を選んでね。僕たちは待ってるから。」
美湖とユーナは、店に備えられていた小型のソファーに座り、彼女たちが選び終わるのを待つ。先に選び終わったのはどうやらアリサのようだった。
「ご主人様、これでどうでしょうか?」
「うん、確かに選んできてとは言ったけど、僕たちの目的忘れてない?」
そう、アリサが持ってきたのは、見た目重視の紙装備だった。美湖は、戻してきなさいと命じ、しっかりした探索用の装備を一緒に選んだ。ユーナは、スーリン側に着いた。
「これで良し。じゃあ試着しておいで。」
美湖は選んだ装備を持たせると、試着をするように言い聞かせた。アリサが試着し終わり、ドアを開ける。
「ご主人様、どうでしょうか?」
そこには、チュニックとショートパンツの上から、蛇のうろこでできたスネークスケイルベスト、赤く半透明になっているうろこが、下の衣服を透かして見せている。そして、左手が大きくつくられている、弓士専用の装備、ブロンズガード、ひざ上丈に、片側に足の付け根までスリットの入った、これまた赤く半透明のうろこでできた、スネークスケイルスカート、 ひざ下までの、鱗をあしらった、スネークスケイルブーツ、全体的に、軽装で、かつ、透けて見えるウェアがアリサの見た目を引き立てている。
「いい、アリサちゃん?見た目も気になるのはわかるけど、だからって、自分の身を守る装備なんだからね。今後、同じようなことしたら、僕も怒るからね。自分の身を守ることを最優先に、かつ、このパーティーでの君の役割をしっかり考えて、武器も、防具も選んでね。」
「わかりました、ご主人様。すみませんでした。」
アリサは、自分が怒られたことに肩を落としていた。
「こ~ら、怒られたからって、そんな落ち込まないの。さっきの装備も可愛かったからさ。今度、お金に余裕が出来たら買ってあげるから、また着て見せてよ。」
「っ、わかりました。ありがとうございますご主人様。」
アリサは、暗くなっていた顔に笑顔を戻した。それを見て、軽くうなずく美湖。アリサを伴い、ユーナとスーリンのもとにむかう。二人がいたのは、魔術師用の装備が並ぶ区画で、大きなローブなどが並んでいた。
「おーい、ユーナちゃん、スーリンちゃん、防具は選べたかなぁ?」
美湖が探していると、試着室の前で立っているユーナがいた。
「お、いたいた、ユーナちゃん、スーリンちゃんの防具選べた?」
「あ、ご主人様、はい、今試着をしてもらっています。少し機動力は落ちますが、スーリンちゃんの長所を生かした装備を選べたと思います。」
ユーナは、自信満々とでもいうように胸を張っていた。もちろん、ユーナが胸を張ればそれは揺れるわけで、美湖は鼻血が出るのを抑えるのが精いっぱいだった。そんなやり取りをしていると、スーリンが試着して出てきた。
「ユーナさん、あ、ご主人様もご一緒でしたかぁ。どうでしょうか?この装備。」
出てきたスーリンの姿を見て、美湖は鼻血を抑えられず、その場にうずくまってしまったのだった